顧問の社労士を変えたい建設会社へ|乗り換えの手順5ステップと引き継ぐ書類チェックリスト
顧問の社労士は契約の途中でも変えられます(民法651条)。先に手元の契約書の解約の条項を確かめます。建設会社が先に見るのは、①36協定・変形労働時間制の協定の期限、②年度更新(一括有期事業)の申告の中身、③入退社や算定基礎届など途中の手続きの3つです。手順は5ステップで、賃金台帳などを保存する義務は会社にあります(労働基準法109条)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員8人の内装会社。夜9時、事務所の机に顧問契約書のファイルを広げた社長が、検索窓に「社労士 変えたい」と打ちかけて手を止めます。現場への移動時間のこと、元請で受けた工事の年度更新のこと。聞きたいことと返ってくる答えが、どこかかみ合わない。それでも変えるとなると、今年の年度更新の控えはどこにあるのか、36協定の期限はいつだったか、来月入る職人の届出は誰が出すのか——手続きが途中で止まるのが怖くて、同じところで迷い続けてしまう。よくある場面です。顧問の社労士は、契約の途中でも変えられます。つまずきやすいのは変えること自体ではなく、担当が入れ替わる間に、届出や協定の期限が宙に浮くことです。この記事では、乗り換えの手順を5つのステップに分け、建設会社が引き継ぐ書類のチェックリストと、手続きを止めない切り替えの時期をまとめました。変えるかどうかを決める前に、今の社労士に確かめておきたい質問も載せています。

顧問の社労士は、契約の途中でも変えられますか?
変えられます。社労士の顧問契約は、一般に、手続きや相談といった事務を任せる委任(準委任)の契約にあたり、民法は、委任はどちらからでもいつでも解除できると定めています(民法651条1項・656条)。変えたいと思うこと自体を、後ろめたく感じる必要はありません。
ただし、相手に不利な時期に解除した場合などは、やむを得ない事由がない限り、相手の損害を賠償しなければならないとも定められています(同条2項)。まず手元の契約書を開き、解約の条項(予告の期間、契約期間と自動更新の決まり、解約の伝え方)を確かめてください。法律で言えるのはここまでで、契約書の条件は会社ごとに違います。
変えること自体より気をつけたいのは、担当が入れ替わる間に止めてはいけないものです。建設会社が先に見るのは、次の3つです。
- 36協定・1年単位の変形労働時間制の協定の期限:36協定は、結んだうえで労働基準監督署に届け出て初めて、その範囲で残業や休日の仕事をさせられる協定です(労働基準法36条1項)。有効期間の切れ目を、いま誰が見ているかを確かめます。
- 年度更新の申告の中身:元請で工事を受けている会社には、小さな工事を1年分まとめて申告する「一括有期事業」の控えがあります。引き継ぎは、過去の申告に漏れがないかを見直すよい機会です。
- 切り替える月の途中の手続き:入社・退社の届出、算定基礎届や月額変更届、給与の締め。解約の日をまたぐものを、どちらが担当するか決めておきます。
この3つの担当と期限を先に決めておけば、解約を伝える日に慌てずに済み、切り替えの月も社長は現場に集中できます。
変える前に、今の社労士に聞いてみたほうがいいですか?
はい。変えるかどうかを決める前に、自社で実際に起きている場面を、今の社労士に質問してみることをおすすめします。話してみて解決するなら、変える必要はありません。長く付き合ってきた社労士は、会社の経緯や過去の届出を一番よく知っています。答え方を見れば、変えるにしても残るにしても、判断の材料がそろいます。建設会社なら、たとえば次の5つです。
| 今の社労士に聞いてみる質問 | 答えのどこを見るか | くわしい記事 |
|---|---|---|
| 朝、会社に集まってから現場へ向かう移動は、労働時間になりますか? | 集合の目的(資材の積み込み・作業の指示など)と移動の仕方で、場面を分けて答えるか | 現場への移動時間は労働時間? |
| 遠方の現場の出張手当や日当は、残業代の計算の基礎に入りますか? | 手当の名前だけで決めず、決め方・払い方を聞いてから答えるか | 出張手当・日当の決め方/割増賃金の基礎 |
| 元請で受けた工事と、下請で入った工事は、年度更新でどう扱いますか? | 元請と下請の違いと、一括有期事業にまとめる工事の条件を説明するか | 下請の労災手続き |
| 一人親方として来てもらっている職人は、雇用との線引きをどう見ますか? | 契約書の名前だけで決めず、働き方の中身(誰の指示で、どう働いているか)を聞いてから答えるか | 一人親方契約チェックリスト |
| 日給月給の職人の残業代や、有給休暇の日の賃金はどう計算しますか? | 日給を1日の所定労働時間で割って時間単価を出す(労働基準法施行規則19条)など、計算の筋道を示すか | 日給の職人の有給と賃金計算 |
一般的な依頼先の選び方(建設業の実務を知っているか・改定まで見てくれるか・見積の内訳・ヒアリングをするか)は、就業規則の作成費用の記事の最後の見出しにまとめています。上の5つは、それを自社の現場に置き換えた質問です。同じ質問を今の社労士と候補の社労士の両方にしてみると、答えの違いがそのまま比べる材料になります。「なんとなく合わない」が「どこが合わないか」に変わり、変えるか残るかを自分の言葉で決められます。
顧問の社労士を変える手順は?(5ステップ)
手順は、①契約書の解約の条項を読む、②止まるものを洗い出す、③次の社労士と切り替え日を決める、④書面で解約を伝えて書類を受け取る、⑤最初の1か月を新しい社労士と確かめる、の5つです。
- 契約書の解約の条項を読む:予告の期間、契約期間と自動更新、解約の伝え方(書面かどうか)を確かめます。ここで、解約の日の目安が決まります。
- 契約が終わると止まるものを洗い出す:今の社労士に、途中の手続き、期限が近い届出、社労士を通して入っている保険や共済の手続き、電子申請で使っているアカウントの一覧をたずねます。
- 次の社労士と、切り替え日を先に決める:次の依頼先が決まる前に解約を伝えると、担当のいない期間ができます。切り替えは給与の締め日の翌日からにすると、1か月の計算を1人が通して見られます(給与計算を外注する前に)。前の社労士にも次の社労士にも、業務で知った会社の秘密を漏らしてはならない義務があり、社労士の仕事をやめた後も続きます(社会保険労務士法21条)。候補の社労士に書類を見せて相談して構いません。
- 書面で解約を伝え、書類を受け取る:解約の日、受け取りたい書類(下のチェックリスト)、途中の手続きをどちらがどこまで行うかを書いて渡します。これまでのお礼を添え、理由は短くて構いません。電子申請のアカウントのログイン情報を今の社労士と共有している場合は、切り替えた後にパスワードを変えます。
- 最初の1か月を、新しい社労士と確かめる:最初の給与計算、最初の届出、協定の期限の一覧を、新しい社労士と突き合わせます。新しい社労士は、提出代行に関する証明書を付けて、36協定や就業規則などの労働基準監督署への届出(厚生労働省)も、社会保険の届出(日本年金機構)も、電子申請で出せます。
この順番で進めれば、解約を伝えた翌月も、給料日と届出の期限を途切れさせずに迎えられます。
引き継ぐ書類は何ですか?(建設業のチェックリスト)
建設会社が引き継ぐ書類は、次の14項目です。解約を伝える前に、手元にあるものと、社労士の事務所にしか無いものに分けておきます。
| 書類 | 確かめること | くわしい記事 |
|---|---|---|
| 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(出面帳・タイムカード) | 会社の手元にあるか。保存の義務は会社にある | 給与計算を外注する前に |
| 就業規則(賃金規程などの別規程を含む)の最新版と、届出の控え・意見書 | 最新版が、届け出たものと同じか | 就業規則の届出方法 |
| 36協定届の控え | 有効期間・1年の起算日・特別条項(臨時に限度時間を超えて働かせる場合の定め)の有無 | 36協定の書き方 |
| 1年単位の変形労働時間制の協定届と年間カレンダー | 対象期間(1年以内)がいつからいつまでか | 1年単位の変形労働時間制 |
| 労働保険の年度更新の申告書の控え(労災分・雇用分)と一括有期事業報告書 | 過去の年度の分がそろっているか | 下の見出しで説明 |
| 元請で受けた工事の一覧(工事名・請負金額・始まった日・終わった日) | 年度更新の控えと、工事の数が合うか | 下の見出しで説明 |
| 算定基礎届・月額変更届・賞与支払届の控え | 直近の届出と、その後の給与の変わり方 | 日給を上げた時の月額変更届 |
| 社会保険・雇用保険の資格取得・喪失の届の控えと、届いた通知書 | 在籍している人と、加入している人が合っているか | 社会保険に入りたくないと言われたら |
| 労働保険番号・雇用保険の事業所番号・社会保険の事業所整理記号 | 控えに書かれた番号を1枚にまとめる | — |
| 電子申請のアカウントと、電子申請で出した届の控え・通知書 | ログインを今の社労士と共有していないか | 就業規則の届出方法 |
| 一人親方との請負契約書・注文書 | 契約書があるか。働き方と合っているか | 一人親方契約チェックリスト |
| 建退共の共済契約者証、共済手帳の受け払いの記録、掛金の納め方 | 掛金を、証紙を手帳に貼って納めているか、退職金ポイントで電子的に納めているか | 建退共と退職金規程 |
| 給与計算のデータ(手当の決め方のメモを含む) | 規程に書いていない決め事が無いか | 給与計算を外注する前に |
| 社長・役員の労災の特別加入の書類(加入している場合) | 社労士を変えた後も加入が続くかを、解約を伝える前に今の社労士に確かめる | 社長のケガへの備え |
労働者名簿・賃金台帳などは5年間(当分の間は3年間)保存する決まりで、保存の義務は会社にあります(労働基準法109条・附則143条、厚生労働省のQ&A)。出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録も、厚生労働省は同じ条文の保存の対象と示しています。社労士の事務所にしか無いデータは、解約の前に写しかデータで受け取っておきます。建退共の共済契約者証や共済手帳、掛金の納め方(証紙貼付方式・電子ポイント方式)の言葉は、建退共の用語集で確かめられます。
この表を印刷し、受け取ったものから印を付けていけば、「あの控えはどこにあったか」と夜の事務所で探し回ることがなくなります。
切り替えは、いつが動きやすいですか?
6月1日〜7月10日の年度更新と算定基礎届の時期を外し、協定の期限まで余裕のある月の、給与の締め日の翌日に切り替えるのが動きやすい時期です(※2026年9月時点)。
| 時期 | 動いている手続き(期限) | 切り替えで気をつけること |
|---|---|---|
| 毎月の給与の締め日・支給日 | 給与計算・賃金台帳の記入 | 締め日の翌日から切り替える。締めの途中で担当を変えない |
| 入社・退社がある月 | 社会保険の資格取得届=入社などの日から5日以内/雇用保険の資格取得届=被保険者となった月の翌月10日まで/雇用保険の資格喪失届=被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 | 期限が解約日をまたぐ届出を、どちらが出すか決めておく |
| 6月1日〜7月10日 | 労働保険の年度更新(毎年6月1日から40日以内) | この期間の最中に担当を変えない |
| 7月10日まで | 健康保険・厚生年金保険の算定基礎届(7月1日時点の被保険者について、4〜6月の報酬を届け出る。10日が土日なら翌営業日) | 同上 |
| 36協定・変形労働時間制の協定の期限の前 | 新しい協定を結び、労働基準監督署へ届け出る | 準備を前の担当と次の担当のどちらがするか決めておく |
| 賞与を払う月 | 賞与支払届=支払日から5日以内 | 支払日が、切り替えの前か後かを確かめる(冬の寸志と賞与支払届) |
| その年最後の給与 | 所得税の年末調整(その年最後に給与を払う時に行う=所得税法190条) | 税金の手続き。今どこ(社内・社労士・税理士)が担っているかを確かめ、切り替え後の担当を決める。税の扱いは顧問税理士に確かめる |
期限の出典:厚生労働省(年度更新)/日本年金機構(算定基礎届)/日本年金機構(資格取得届)/日本年金機構(賞与支払届)/厚生労働省(雇用保険の手続き)
年度の途中でも切り替えられます。年度更新は、前の保険年度(4月〜翌年3月)の賃金などをもとに計算して申告するので(労働保険の保険料の徴収等に関する法律=労働保険徴収法19条1項・2条4項)、切り替えが年度の途中なら、前の担当の時期の賃金台帳と工事の一覧も新しい担当へ渡します。36協定には有効期間と1年の起算日を定めることになっていて(労働基準法施行規則17条1項)、期限の前に担当が変わると、新しい協定の準備が抜けやすくなります。書き方は36協定の書き方にまとめています。
切り替えの月を選んでおけば、年度更新や協定の更新と引き継ぎが重ならず、事務の担当者が一度に抱える仕事が減ります。
一括有期事業の年度更新は、引き継ぎで何を確かめればいいですか?
過去の年度更新の申告書の控えと、元請で受けた工事の一覧を突き合わせ、申告から漏れた工事や、元請・下請の取り違えが無いかを確かめます。
厚生労働省は、労働局の実地調査で一括有期事業の労働保険料の申告誤りが近年確認されていること、保険料の不足が見つかれば、不足分の追加納付と追徴金(保険料の10%)の納付が必要になることを案内しています(厚生労働省。追徴金は労働保険徴収法21条)。
一括有期事業は、規模の小さい元請工事を1年分まとめて、年度更新で申告する仕組みです。令和8年度の申告で対象になったのは、次のすべてに当てはまる工事でした(厚生労働省の資料)。当てはまらない工事は、工事ごとの「単独有期事業」として扱います。
- 元請として受けた工事
- 1つの工事の請負金額が1億8千万円未満(消費税額を除く)
- 概算保険料の額が160万円未満
- 令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の間に終わった工事
年度をまたいだ工事は、終わった年度の申告に入ります。前の年度に始まった工事ほど一覧から漏れやすく、厚生労働省の資料も、前の年度に始まった工事の算入漏れに注意を促しています。工事の一覧には、始まった日と終わった日の両方を書いておきます。
下請で入った工事は元請の労災保険で扱われ(労働保険徴収法8条1項)、自社の一括有期事業には入りません。現場でケガがあった時の流れは下請の労災手続きにまとめています。また建設業は、労災保険と雇用保険の申告・納付を別々に行う「二元適用事業」が一般的です(鳥取労働局)。控えは、労災分と雇用分の両方を受け取ります。
控えと工事の一覧が合わない時は、新しい社労士と一緒に、所轄の労働局や労働基準監督署へ直し方を確かめます。引き継ぎの時に一度そろえておけば、来年の年度更新は、控えと1年分の工事の一覧を並べるところから始められます。
何から手を付ければいいですか?
まず、手元の顧問契約書の解約の条項と、36協定の有効期間の2つを確かめてください。そのうえで上のチェックリストを印刷し、今の社労士から受け取るものに印を付けていきます。迷っている間も、協定の期限と年度更新の季節は順番に巡ってきます。
当事務所は建設業に特化し、時間外労働の上限への対応、現場への移動時間の扱い、出張手当の設計、一人親方から従業員への移行を毎月のように扱っています。顧問の基本料金はフリー(縛りなし)28,000円/3年継続25,000円/5年継続22,000円(月額)で、就業規則の作成・改定と採用関連書類の整備は基本料金内です。手続き業務(社会保険・労働保険)と給与計算は人数に応じた別の料金で、採用・労務・お金の相談をまとめて任せられる社外人事部プランは月100,000円です(いずれも税別・2026年7月時点)。くわしくは料金ページをご覧ください。
年度の途中の切り替えもお受けします。まずお預かりするのは、①保険の番号と直近の届出の控え、②就業規則・協定書、③賃金台帳などの帳簿、④進行中の手続きの状況の4点です。お手元にない書類は、こちらで役所に確認しながら進めます。労働保険事務組合は大阪SRを使い、社長の労災の特別加入も途切れずに引き継げます。
規則を現場に合わせて整え直すところは建設業の就業規則作成のページで、遠方の会社とのやり取りは遠方の社労士に頼む流れでご案内しています。
Zoom30分の無料相談では、今の契約書とこのチェックリストをもとに、何を・いつまでに・どちらから受け取るか、引き継ぎの段取りを一緒に並べられます。今の社労士に先に相談してみるかどうか迷っている段階でも構いません。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 民法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働保険年度更新に係るお知らせ(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html
- 一括有期事業の適用要件等(大阪労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/hourei_seido/kosin/yuki/yoken.html
- 定時決定(算定基礎届)(日本年金機構): https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
- 社会保険労務士法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC1000000089
よくあるご質問
「人は増やしたいが、人件費が読めない」
採用・労務・お金をまとめて引き受ける「社外人事部プラン」があります。プランの中身と料金は料金ページに公開しています。まずはZoom30分・無料で、御社の採用と人件費の現状を整理します。
ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
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