現場手当・資格手当・皆勤手当も残業代に入る?割増賃金の基礎と計算例
現場手当・資格手当・職長手当や毎月払う皆勤手当は、原則として割増賃金の基礎に含めます。除外できる賃金は家族・通勤・別居・子女教育・住宅の各手当、臨時の賃金、1か月を超える期間ごとの賃金の7種類に限られ、名称ではなく支給実態で判断します。日給と月額手当は、それぞれ時間単価に換算して合算します。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員9人の設備会社。給料日前の夜、社長が職人の給与明細と電卓を机に並べています。日当に、現場手当・資格手当・皆勤手当・家族手当・通勤手当を足し、最後に残業代を入力する。計算式は長年「日当÷8時間×1.25」です。資格手当を増やした職人の明細を見て、ふと手が止まりました。「手当は残業代に入れなくていいと思っていたけど、これで合っているのか」。これは手当の扱いを考えるための架空の場面です。
基本給と別に払っているからといって、手当を残業代の計算から外せるわけではありません。 この記事では、どの手当を含めるのか、自社の支払い方ならどう計算するのかを整理します。日給の換算の基本は日給月給の建設業が就業規則に入れるべき賃金規定へ譲り、ここでは給与明細の「手当欄」に集中します。
現場手当・資格手当・皆勤手当は、残業代の計算に入れますか?
「資格を取ったので今月から手当を付ける」。そのときは手当の額だけでなく、残業代を計算する時間単価も確認します。現場手当・資格手当・職長手当、毎月払う皆勤手当は、原則として計算に含めます。
割増賃金とは、時間外・休日・深夜の労働に対して割増を付ける賃金のことです。その「基礎」は、割増計算の土台となる通常の賃金を指します。労働基準法では、基礎から除外できる賃金を限定しており、次のような通常の手当は、その除外項目に当たりません。
| 手当 | 想定する支給内容 | 割増賃金の基礎での扱い |
|---|---|---|
| 現場手当 | 現場で作業することに対し、日ごとなどに支給 | 原則として含める |
| 資格手当 | 会社が対象とする資格の保有などに対し、毎月支給 | 原則として含める |
| 職長手当 | 班をまとめる役割や責任に対し、日ごと・月ごとに支給 | 原則として含める |
| 皆勤手当 | その月の勤務状況が支給条件を満たした場合に支給 | 原則として含める |
「欠勤したら出ない手当だから、臨時のお金では」と考えがちですが、毎月の条件を満たせば払う皆勤手当を、支給されない月もあるという理由だけで除外はできません。 毎月払いであれば「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」にも当たりません。
一方、賞与のように1か月を超える期間を対象として支払う精勤手当は、毎月の皆勤手当と分けて確認します。名前だけで一括処理せず、何に対して、どの期間ごとに払うのかを見ます。
なお、表は通常の仕事に対して払う手当を想定しています。現場手当などの名前で「残業代込み」として払っている場合、それが時間外労働の対価と認められるかは、契約・説明・勤務実態から別に判断します。この論点は「日当に残業代込み」は通る?建設業の固定残業代の決め方で整理しています。現場監督や職長に役職手当を払い、残業代を出していない場合は、現場監督・職長に残業代は出ない?で管理監督者の判断基準も確認してください。
手当を増やす段階で残業単価への影響まで分かれば、社長は職人への説明と人件費の見込みを一緒に整えられます。給料日になってから、電卓を持ち直す手間が減ります。
割増賃金の基礎から除外できる手当は、どの7種類ですか?
給与ソフトの設定画面には、手当ごとに「残業単価に含める・含めない」の欄があります。しかし、会社の都合で自由に選べる欄ではありません。
労働基準法第37条第5項と労働基準法施行規則第21条により、除外できる賃金は次の7種類に限られます(※2026年9月時点)。似たような手当なら追加で外してよい、という例示ではありません。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ここでいう「除外」は、手当そのものを払わなくてよいという意味ではなく、残業代などの計算の土台から外せるという意味です。また、家族手当から住宅手当までの5種類は、その名称であればすべて除外できるわけではありません。支給基準や算定方法が要件に合っている必要があります。
点検するときは、給与明細の各手当の横に「どの除外項目に、なぜ該当するのか」を書いてみてください。該当項目を説明できない通常の賃金は、含める側で確認します。「前任者が外していたから」という記憶頼みをやめると、担当者が替わっても設定を引き継ぎやすくなります。
住宅手当・通勤手当・家族手当なら、一律支給でも外せますか?
職人から住所変更の連絡が来たのに、通勤手当は入社以来ずっと同じ額。こうした明細は、実際の支給基準を確認するきっかけになります。除外できるかは、名称ではなく中身で判断します。
| 手当 | 除外できる支給方法の例 | 除外できない支給方法の例 |
|---|---|---|
| 住宅手当 | 家賃や住宅ローン月額の一定割合など、住宅に要する費用に応じて算定 | 全員同額。賃貸・持家という形態だけで区分し、それぞれ一律定額 |
| 通勤手当 | 通勤距離や、定期券代など実際の通勤費用に応じて算定 | 距離・費用に関係なく、全員に同額を支給 |
| 家族手当 | 扶養家族の人数などを基準に算定 | 扶養家族の有無・人数に関係なく、一律に支給 |
特に住宅手当は、「賃貸の人と持家の人で金額を変えたから大丈夫」とは言えません。住宅の形態ごとに一律定額を払うだけでは、住宅に要する費用に応じた算定にはならないためです。
また、「たまたま全員が同じ額になった」ことと「費用や距離を確認せず一律額を払う」ことは区別します。見るのは結果の金額だけでなく、その額を出した基準です。申告書や通勤経路、費用の確認資料と、規程・給与明細を並べれば判断の根拠が見えます。
社長が確認したいのは、手当の名前を付け直す方法ではありません。「誰から何の申告を受け、何を基準にいくら払うか」です。そこを決めると、引っ越しや家族構成の変更のたびに、その場で金額を決め直さずに済みます。
遠方現場の出張手当や日当は、どう扱いますか?
泊まりの現場から帰った職人が、宿泊費の領収書を机に置く。その横で、給与明細にも「日当」と書かれている。同じ言葉でも、まずお金の性質を分けます。
働いたことへの対価である日給と、出張費用を補う日当は別です。 旅費規程に基づき、実態も出張に伴う費用の実費弁償として整理されている出張手当は、割増賃金の基礎に含めないのが一般的です。これは先ほどの7種類に「出張手当」という8番目を加える話ではなく、そもそも賃金に当たる支払いなのかという確認です。
一方、出張の有無にかかわらず給与の上乗せとして払っているなど、実態が労働の対価なら、出張手当という名称だけでは外せません。旅費規程を作るだけで結論が決まるわけでもありません。
出張の範囲や精算方法は、建設業の出張手当・日当の決め方で詳しく整理しています。税務上の扱いは税理士へ確認してください。給与と旅費の支払いを整理すれば、次の遠方現場の見積もりでも、職人の賃金と出張費用を分けて見込めます。
日給に手当が乗る職人の残業代は、いくらになりますか?
冒頭の社長の計算を、手当込みで見直してみます。以下の金額・勤務条件はすべて架空の計算例で、相場や当事務所の相談事例ではありません。
1日の所定労働時間(会社が定めた通常の勤務時間)は8時間、年間の所定労働時間から求めた1か月平均は160時間とします。日給と現場手当は日額、資格手当と皆勤手当は月額で定め、この月は皆勤手当の支給条件を満たしたものとします。
| 項目 | 架空の支給額・条件 | 計算への入れ方 |
|---|---|---|
| 日給 | 12,000円/日 | 日額分に含める |
| 現場手当 | 800円/日。この例では全勤務日に支給 | 日額分に含める |
| 資格手当 | 8,000円/月 | 月額分に含める |
| 皆勤手当 | 8,000円/月 | 月額分に含める |
| 家族手当 | 扶養する子1人につき5,000円/月。この職人は1人 | 人数に応じた支給として除外 |
| 通勤手当 | 実際の通勤定期券代6,000円/月 | 実際費用に応じた支給として除外 |
労働基準法施行規則第19条では、日給部分と月給部分が組み合わさる場合、それぞれ時間単価へ換算し、最後に足します。 給与明細で月にまとめて支払っていても、日額で定めた賃金と月額で定めた賃金を混同しないことがポイントです。
- 日額分の時間単価:
(12,000円+800円)÷8時間=1,600円 - 月額分の時間単価:
(8,000円+8,000円)÷160時間=100円 - 合計の時間単価:
1,600円+100円=1,700円 - 時間外労働1時間の支払額:
1,700円×1.25=2,125円
この例では、深夜・法定休日に当たらず、月60時間以下の法定時間外労働について、通常の1時間分の賃金も含めて別途支払うものとしています。時間外の割増率は25%以上で、この条件での計算です(※2026年9月時点)。すべての残業に一律で1.25を使う例ではありません。夜間工事で深夜割増が重なる場合の率と計算例は、夜間工事の割増賃金で解説しています。
手当を全部外した従来の計算なら、12,000円÷8時間×1.25=1,875円。正しい支払額との差は1時間につき250円です。この条件で法定時間外労働が月20時間なら、差額は5,000円になります。
なお、月額手当を割る160時間は、この会社の架空の年間所定労働時間に基づく数字です。どの会社にも使える固定値ではなく、その月の実労働時間や残業込みの時間でもありません。日によって所定時間が異なる場合は、日額の賃金を1週間の1日平均所定労働時間数で割るなど、施行規則第19条の定めと自社の勤務カレンダーに沿って換算します。
手当を含めた単価が分かれば、社長は「今月の残業でいくら人件費が増えるか」を計算できます。職人に手当の増額を伝える際も、給与明細のどこが変わるかまで説明できます。
賃金規程には、手当の支給基準をどう書けばいいですか?
新しく給与計算を担当する人に「現場手当は、いつ付けるんですか」と聞かれる。その答えを社長しか知らないなら、書き出すところから始めます。賃金規程は、給与の支払い方を定める社内ルールです。
手当ごとに、次の事項をそろえます。
- 目的と対象者:どの仕事・資格・役割に対して、誰に払うか
- 支給条件:対象現場への従事、資格の確認、職長への任命など
- 算定方法:日額か月額か、金額や支給日数をどう求めるか
- 開始・終了・変更:資格取得や役割変更などを、いつから反映するか
- 確認資料と担当:申告・証明書・日報などを、誰が確認するか
- 割増賃金の計算:含める手当と、法令上の要件を満たして除外する手当
規定例(資格手当・条文イメージ):会社が別表に定める資格を保有し、資格証の確認を受けた従業員に、別表の月額資格手当を支給する。支給は確認を受けた月の翌月から開始し、割増賃金の算定基礎に含める。
規定例(通勤手当・条文イメージ):通勤手当は、届け出た通勤経路について会社が確認した通勤定期券の実際費用に応じて支給する。通勤経路等に変更があった場合は届け出るものとし、その内容を確認して支給額を変更する。
どちらも自社に合わせた調整が必要な例です。資格手当なら別表に対象資格・金額を置き、車通勤なら距離などに応じた算定方法を別途決めます。現場手当・職長手当も、どの現場に何日従事したか、いつ役割を担ったかが分かる記録と結び付けます。
最後に、規程だけでなく給与ソフトの設定を照合します。「規程では含める、ソフトでは除外」のままでは支払額は変わりません。同じ資料を見て計算できるようにすると、給料日前の確認が社長一人に集中しにくくなります。
手当を外して計算していたら、何から直せばいいですか?
過去の明細を開いて、「全員、日当だけで計算していた」と気付く。まずは対象の手当と支給基準を確認し、誰に、どの月に、いくら差額が出るかを整理します。
算定基礎に含めるべき手当を外して支払額が不足していた場合、その差額は未払いになります。翌月の設定を直しても、過去の不足分がなくなるわけではありません。 賃金請求権の消滅時効は本則5年、当分の間は3年です(※2026年9月時点)。期間や記録の詳しい考え方は、建設業の未払い賃金リスクと今すぐの備えをご覧ください。
作業は、次の順番で進めると状況をつかみやすくなります。
- 賃金規程、給与明細、手当の申告資料、勤怠記録を集める。
- 各手当について、支給目的・日額か月額か・除外の根拠を一覧にする。
- 対象の従業員・月ごとに再計算し、支払済みの額との差を確認する。
- 不足分への対応と、今後の規程・給与設定の修正を整理する。
従業員との紛争になっている場合の交渉・訴訟対応は弁護士へ相談してください。過去の明細や支給条件を残したまま整理すれば、何が原因で、どこを直すのかを根拠に沿って説明できます。見込み額が出ることで、社長も資金の準備や次の給与計算を具体的に進められます。
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参考(一次情報)
- 割増賃金の基礎となる賃金とは?(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署/鳥取労働局掲載): https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/pdf/26kajyu_4.pdf
- 労働基準法施行規則・第19条、第21条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 労働基準法・第37条、第115条、附則第143条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
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