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夜間工事の割増賃金|深夜手当・夜勤明け・日をまたぐ勤務の数え方(建設業)

テーマ: 建設業の就業規則作成
30秒で結論

夜間工事で午後10時から午前5時に働いた時間は、所定の勤務内でも25%以上の深夜割増が必要です。時間外と重なれば50%以上、月60時間を超える時間外と重なれば75%以上、法定休日と重なれば60%以上です。日をまたぐ勤務は始業した日の勤務として数え、夜間手当を割増に充てるなら、割増分だと判別できる定めと差額の支払いが要ります。

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従業員9人の道路工事の会社。国道の補修は交通量の少ない夜8時から朝5時まで。職人には夜間手当として1回5千円を付けている。今週は昼の舗装現場を夕方5時に終えた2人が、そのまま資材置き場でトラックに合材を積み、夜8時から国道に入る。朝5時、誘導灯を片付けて帰っていく後ろ姿を見送りながら、社長はふと思います。「5千円付けているけど、昼から通しで働いた日も同じでいいのか」。

夜間工事の賃金は、「夜だから手当を付ける」だけでは足りないことがあります。この記事では、深夜割増の率と重なり方、日をまたぐ勤務の数え方、休憩・仮眠・待機の扱い、夜間手当の書き方、夜勤明けの休みまで、計算例と規定例を使って順番に整理します。

夜間工事の割増賃金は、何時から何%増しになりますか?

夜8時に国道へ入っても、深夜割増が付くのは午後10時からです。労働基準法第37条第4項は、午後10時から午前5時までに働かせた時間に、通常の賃金の25%以上を上乗せして払うよう定めています。これは残業かどうかに関係なく付く割増で、夜の勤務を所定の勤務時間として決めている場合も同じです。

建設現場で迷いやすいのは、深夜が時間外労働(1日8時間・週40時間を超える労働)や休日労働と重なる時です。時間外25%・休日35%という基本の率は政令で定められ、重なった分は率を足して計算します(労働基準法第37条・割増賃金令・労働基準法施行規則第20条)。

その時間の働き方割増率(以上)
所定の勤務時間内の深夜25%
時間外労働(月60時間以下の部分)25%
時間外労働+深夜50%
時間外労働(月60時間を超える部分)50%
月60時間を超える時間外労働+深夜75%
法定休日の労働35%
法定休日の労働+深夜60%

(※2026年9月時点)

夜8時から朝5時の現場なら、同じ一晩の中に「割増なしの2時間」と「深夜割増の付く時間」が混ざっています。時間帯で区切って記録しないと、正しい額は出せません。時給に換算する時の土台(現場手当や資格手当を含めるか)は現場手当・資格手当・皆勤手当も残業代に入る?で整理しています。

表を1枚、給与計算の横に置いておけば、夜間工事の多い月でも「この時間は何%か」をその場で確かめられます。社長が職人から聞かれた時も、率の根拠を指で示して説明できます。

昼の現場から夜間工事へ続けて入った日は、どう数えますか?

夜の勤務は、日付が変わる午前0時で2日に分かれるように見えます。しかし、日をまたいで続く勤務は、始業した日の1回の勤務としてまとめて労働時間を数えるのが行政解釈の考え方です。夜8時から朝5時の現場は「月曜の勤務」、昼から続けて入った日は「昼と夜を合わせて月曜の勤務」として、1日8時間を超えたかを見ます。

ここからは架空の計算例です。日給16,000円・所定労働時間8時間(時間単価2,000円)、ほかの手当はなく、月の時間外労働は60時間以下とします。

例1:夜間工事だけの日(夜8時〜朝5時、0時〜1時は休憩)

この日の勤務が、あらかじめ夜8時〜朝5時の8時間と決まっている場合です。

時間帯時間区分割増分
20:00〜22:002時間所定内なし
22:00〜0:002時間所定内+深夜2,000円×25%×2時間=1,000円
1:00〜5:004時間所定内+深夜2,000円×25%×4時間=2,000円

日給16,000円に加えて、深夜割増は3,000円です。夜間手当5,000円を深夜割増として払うと定めていれば、この日は足りています。ただし、その週の労働時間が40時間を超えれば、別に時間外の割増が必要です。

例2:昼の現場(8時〜17時)から、夜間工事(夜8時〜朝5時)へ続けて入った日

昼の8時間で所定労働時間を使い切っているため、夜の8時間はすべて時間外労働です。17時〜20時は、完全に自由に過ごせる休憩だったと仮定します。

時間帯時間区分その時間の賃金
20:00〜22:002時間時間外2,000円×125%×2時間=5,000円
22:00〜0:002時間時間外+深夜2,000円×150%×2時間=6,000円
1:00〜5:004時間時間外+深夜2,000円×150%×4時間=12,000円

夜の分として払うべき額は23,000円です。このうち割増分は7,000円。夜も「日当16,000円+夜間手当5,000円=21,000円」で払っていると、夜間手当を割増分として認めてもらえたとしても、1回あたり2,000円足りません。夜間手当が割増分だと判別できない書き方なら、不足はさらに大きくなり得ます。

昼から夜まで通しで働く日をつくるには、時間外労働をさせるための36協定が前提です。1日の延長時間の枠が足りているかは建設業の36協定の書き方で確認してください。

「昼から続けて入った日」を勤務表の上で別の色にしておくだけで、給料日に計算を分けるべき日が一目で分かります。職人に「昼から通しの日は単価が違う」と先に説明できれば、夜間工事を頼む時の気まずさも減ります。

月60時間を超えた残業が夜にかかったら、割増率はどうなりますか?

年度末、舗装の昼現場と国道の夜間補修が重なる月は、時間外労働が60時間を超えることがあります。月60時間を超えた部分の時間外労働は、割増率が50%以上です(労働基準法第37条第1項ただし書き)。中小企業も2023年4月1日からこの率が適用されています(※2026年9月時点)。

さらに、60時間を超えた時間外労働が深夜に及べば、50%+25%=75%以上です(労働基準法施行規則第20条第1項)。

先ほどの例2が、月の時間外労働60時間を超えた後の日だったとします(架空の計算例)。

時間帯時間区分割増分
20:00〜22:002時間60時間超の時間外2,000円×50%×2時間=2,000円
22:00〜5:00(休憩を除く)6時間60時間超の時間外+深夜2,000円×75%×6時間=9,000円

割増分だけで11,000円。月の前半と同じ夜間工事でも、後半は割増分が4,000円増えます。

60時間を数える時に押さえる点は次のとおりです。

  • 法定休日の労働時間は含めない。それ以外の休日(週休2日の土曜など)の労働時間は含める(※2026年9月時点)
  • 60時間を超えた分の引き上げ分の割増は、書面による労使協定を結べば、有給の休暇(代替休暇)に代えることもできる(労働基準法第37条第3項)
  • 率を分けて計算するなら、就業規則(賃金規程)の割増率の定めも「60時間以下」「60時間超」に分けておく

月ごとの上限の確認は時間外労働の上限規制チェックリストで詳しく扱っています。

月の半ばに「今月はあと何時間で60時間か」が分かっていれば、夜間工事に入れる職人を入れ替えるか、割増が上がる前提で工程を組むかを、社長が先に選べます。給料日になって人件費に驚くことがなくなります。

夜間工事の休憩・仮眠・待機の時間は、労働時間に入りますか?

夜間工事の現場では、規制の開始を待つ時間、切削機の到着を待つ時間、朝の交通開放の直前まで車の中で仮眠を取る時間があります。これらが休憩なのか労働時間なのかで、例2の計算は大きく変わります。

まず休憩のルールです。労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与え、自由に利用させなければならないと定めています。

次に、労働時間の考え方です。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、次のような時間を労働時間として扱うよう示しています。

  • 指示があればすぐに作業に戻ることを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(いわゆる手待時間)
  • 会社の指示で行う準備や、作業後の片付けの時間

また、労働時間に当たるかどうかは、就業規則や契約に「休憩」と書いたかではなく、実態から客観的に判断されるとしています。

夜間工事に当てはめると、次のように分けて考えるのが実務的です。

夜間工事でよくある時間考え方
昼現場と夜現場の間、帰宅や食事が自由にできる時間休憩として扱いやすい
資材置き場でトラックへの積込み、機械の点検をする時間労働時間
規制の開始や機械の到着を、現場で指示を待ちながら待つ時間労働時間と判断されることがある
仮眠中でも、無線や呼び出しに対応する決まりがある時間労働時間と判断されることがある
誰にも呼ばれず、現場から離れて眠れることが決まっている時間休憩として扱える可能性がある

冒頭の会社で、17時から20時の間に資材置き場で合材を積んでいたなら、その時間も時間外労働です。例2の時間外労働は3時間増え(深夜前なので25%以上)、架空の単価なら2,500円×3時間=7,500円が上乗せになります。

規定例(夜間工事の休憩・待機) 第○条 夜間工事の休憩時間は、作業指示書に開始時刻と終了時刻を記載して与える。休憩時間中は、現場責任者からの呼び出しおよび無線への対応を求めない。 2 工事の開始または再開を現場で待つよう指示した時間は、労働時間として取り扱う。

※規定例です。現場の人数や交代の体制に合わせて調整が必要です。

「休憩は誰にも呼ばれない時間」と決めて現場で守れば、職人は本当に体を休められ、社長は給料日に「あの待ち時間は何だったか」を思い出す必要がなくなります。

1回5千円の夜間手当で、深夜割増を払ったことになりますか?

「夜は5千円付けているから、割増込みのつもり」。このつもりが伝わるかどうかは、書き方と支払い方で決まります。

夜間手当を割増賃金の支払いに充てるなら、通常の賃金と割増賃金を判別できることが出発点です。固定残業代について最高裁は、手当が時間外労働の対価かどうかを、契約書の記載だけでなく会社の説明や勤務の実態も踏まえて判断しています(日本ケミカル事件・最高裁第一小法廷 平成30年7月19日判決)。また、割増分と通常の賃金を判別できない賃金の仕組みでは、法定の割増賃金を払ったとはいえないと判断した事件もあります(国際自動車事件・最高裁第一小法廷 令和2年3月30日判決)。どちらも建設業の事件ではありませんが、夜間手当にも同じ視点が当てはまります。

設計の方向は、大きく2つです。

設計夜間手当の位置付け必要なこと
A:割増に充てる深夜割増賃金の支払いとして定める何の割増に充てるかを明記し、法令で計算した額が手当を超えたら差額を払う
B:割増とは別に払う夜間工事への上乗せの手当として払う深夜・時間外の割増は別に計算して払う。手当が割増の計算の基礎に入るかも支給の実態で確認する

冒頭の会社のように「深夜割増に充てたい」ならAです。

規定例(深夜割増手当) 第○条 午後10時から午前5時までの間に勤務した日には、1回につき5,000円の深夜割増手当を支給する。 2 深夜割増手当は、労働基準法第37条第4項の深夜割増賃金として支払う。当該勤務について法令により計算した深夜割増賃金の額が同手当を超えるときは、その差額を支給する。 3 時間外労働および休日労働の割増賃金は、深夜割増手当に含めず、別に支給する。

※規定例です。雇用契約書・給与明細の欄の名前と金額をそろえ、自社の賃金制度に合わせて調整が必要です。

この書き方だと、例2の日も深夜割増3,000円は5,000円の手当で足り、時間外の割増4,000円を別に払えば不足は出ません。月60時間を超えた後の時間外労働は、時間外の割増を50%以上で別に計算し、深夜の25%分だけを手当と比べます。

すでに「夜間手当に全部込み」で払ってきた場合、今後の規程を整えることと、過去の支払いが足りていたかは別の問題です。手当の名前を後から付け替えると、労働条件の変更に当たることもあります。固定額で割増を払う時の考え方は「日当に残業代込み」は通る?建設業の固定残業代の決め方で、夜間工事に出る現場監督・職長の扱いは現場監督・職長に残業代は出ない?で解説しています。

明細に「深夜割増手当」「時間外割増」「差額」の欄が並んでいれば、職人は自分の夜が正しく計算されていると分かり、社長は「5千円で足りているのか」を毎月悩まずに済みます。

夜勤明けの休みと勤務間インターバルは、どう決めればいいですか?

朝5時に国道の規制を解いた職人に、「今日の昼、別の現場に顔を出せるか」と頼みたくなる日があります。割増を払えば済む話ではありません。寝不足のまま重機やトラックに乗れば、事故のおそれが一気に高まります。

終業から次の始業までに一定の休息時間を空ける仕組みを、勤務間インターバルといいます。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第2条第1項は、事業主が「終業から始業までの時間の設定」などの措置を講じるよう努めなければならないと定めています。罰則のない努力義務です(※2026年9月時点)。連続勤務の上限や勤務間インターバルを含む労働基準法の大幅な見直しは、2026年の通常国会への法案提出が見送られ、施行日は決まっていません。

努力義務だからこそ、会社のルールとして書いておくと現場で迷いません。夜間工事の多い会社で決めておきたいのは次の4点です。

  1. 明けの日の扱い:朝まで働いた日は、原則その日の勤務を入れない
  2. 休息時間:終業から次の始業まで、何時間空けるか
  3. 始業の繰り下げ:休息時間が次の始業に食い込む時、始業を後ろにずらすか。ずらした時間の賃金をどう扱うか
  4. 休日との区別:明けの休みと、就業規則で定める休日を分けて数える

4つ目は注意が必要です。休日は原則として、午前0時から午後12時までの暦日で与えるものです。朝5時まで働いた日は、その日の一部がすでに勤務に使われているため、原則として丸1日の休日には数えられません。明けの休みとは別に休日を確保する組み方にしておきましょう。休日の数え方は振替休日と代休の違いでも整理しています。

規定例(夜間工事後の休息) 第○条 会社は、夜間工事等により終業時刻が午前0時を過ぎた場合、終業から次の始業までに11時間以上の休息時間を確保するよう努める。 2 前項の休息時間が翌勤務日の始業時刻に及ぶときは、始業時刻を休息時間の終了時刻まで繰り下げる。この場合、繰り下げた時間は勤務したものとみなし、賃金を控除しない。

※規定例です。11時間は会社が決める目安の一例で、法律で定められた時間ではありません。休息時間の長さや対象となる勤務は、工程や人数に合わせて調整が必要です。

明けの休みが規則で決まっていれば、元請から朝の現場への応援を頼まれた時も、社長は「うちは夜勤明けは入れない決まりです」と断る根拠を持てます。職人が安心して夜の現場を引き受けてくれることにもつながります。

夜間工事の割増を見直すなら、何から始めればいいですか?

まず、夜間工事のあった月を1か月選び、職人1人分の勤務表と給与明細を並べてください。次の順で確認すると、どこから直すかが見えてきます。

  1. 時間帯で分けて記録できているか:22時前と22時以降、休憩、待機、積込みの時間が分かるか
  2. 昼から続けて入った日を拾えているか:始業した日の勤務としてまとめ、8時間を超えた分を時間外にしているか
  3. 率を重ねて計算しているか:時間外+深夜50%、月60時間超+深夜75%、法定休日+深夜60%
  4. 夜間手当の位置付けが書いてあるか:何の割増に充てるのか、差額をどう払うのかが、規程・契約書・明細でそろっているか
  5. 明けの休みのルールがあるか:休息時間と、休日の数え方を分けているか

5つのうち1つでも「分からない」があれば、そこが見直しの入口です。

中峯社労士事務所では、建設業の就業規則作成として、深夜割増手当や休息時間の定めを含む就業規則・賃金規程の作成・改定を、顧問の基本料金内で行っています。夜間工事の勤務表と給与明細をお手元に置いて、Zoom30分の無料相談で「うちの夜間手当で足りているか」を一緒に整理できます。すでに退職した職人との間で支払いをめぐる話し合いや訴訟になっている場合は、弁護士への相談もあわせてご検討ください。

夜の現場を終えた職人に「今夜の分はこう計算しています」と言える状態をつくっておけば、夜間工事の受注を増やす判断も、社長が数字を持って下せるようになります。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

いいえ。午後10時から午前5時までに働いた時間には、所定の勤務時間の中であっても25%以上の深夜割増が必要です。夜の勤務をあらかじめ決めていることと、割増が要らないことは別の話です(※2026年9月時点)。
日給の中のどこが割増分なのかを判別できなければ、割増賃金を払ったとは認められないおそれがあります。夜の日給を上げるなら、通常の賃金と割増分を分けて定め、法令で計算した額に足りない時は差額を払う形にします。
割増の対象は実際に働いた時間なので、午後10時から午前5時の間に取った休憩は除きます。ただし、呼ばれたらすぐ作業に戻る前提で待っている時間は、休憩ではなく労働時間と判断されることがあります。
中止が決まるまで現場で待機を指示していた時間は、労働時間と判断されることがあります。中止の連絡を誰がいつ出すか、待機した時間をどう記録するかを決めておくと、給料日の食い違いを防げます。
朝5時まで働いた日は、その日の一部がすでに勤務に使われています。休日は原則として午前0時から午後12時までの暦日で与えるため、明けの日は原則として丸1日の休日には数えられません。明けの休みとは別に休日を確保する設計にしておきましょう(※2026年9月時点)。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号採用定着士

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用定着士として採用と定着の設計まで踏み込みます。

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