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現場監督・職長に残業代は出ない?建設業の管理監督者の判断基準と役職手当

テーマ: 建設業の就業規則作成
30秒で結論

現場監督・職長などの肩書きや役職手当だけで、残業代が不要になるわけではありません。労基法上の管理監督者かは、職務内容・責任と権限・勤務態様・待遇の実態から総合的に判断します。該当しない施工管理者は時間外労働の上限規制の対象となり、該当する場合も深夜割増・年次有給休暇・労働時間の状況の把握は必要です。

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従業員10人の工務店。夜の事務所で、現場監督の2人が図面を広げ、工事写真を整理している。朝7時には現場を開け、職人が帰った後も仕事が残る。社長は「管理職やから残業代はなし」と、毎月3万円の役職手当を払ってきた。そのうちの1人が、画面から目を離さず「これ、名ばかり管理職ですよね」とこぼす——。役職と給与の扱いが、実際の働き方に合っていない会社で起こり得る場面です。

「任せている仕事は重い。それでも残業代が要るのか」。現場監督や職長を頼りにする社長ほど、迷うところです。この記事では、管理監督者の判断基準を建設現場の働き方に当てはめ、手当・勤怠・就業規則を見直す順番まで整理します。

現場監督を管理職にしたら、残業代は出さなくてよいのですか?

給与明細の「役職手当」に丸を付けても、それだけでは残業代が不要という説明にはなりません。会社が決めた管理職と、労働基準法41条2号の管理監督者は、同じとは限らないからです。

管理監督者とは、簡単にいうと、労働条件や人の管理について経営者と一体の立場にあり、通常の労働時間の規制になじまない重要な仕事と権限を持つ人です。該当する場合、労基法の労働時間・休憩・休日に関する規定が適用除外となります。該当しない場合は、管理職という呼び名でも、法定時間外・法定休日の労働に対する割増賃金が必要です。

判断では、次の4つを合わせて確認します。中央労働委員会の解説資料が示す一般的な判断要素を、工務店で確認しやすい問いに置き換えた表です。

判断要素社長が確かめたい実態
職務内容担当現場の段取りだけか、経営者と一体の立場で重要な運営判断も担うか
責任と権限責任を負うだけでなく、人員や労働条件について実際に何を決められるか
勤務態様出退勤を自分で調整できるか、現場や会社の決めた時刻に拘束されているか
賃金等の待遇基本給・手当・賞与などが、職務と権限に見合う処遇になっているか

これは「何個当てはまれば合格」という点数表ではありません。例えば、待遇がよくても、重要な判断はすべて社長の承認が必要で、出退勤にも裁量がないなら、その実態を含めた検討が必要です。反対に、手当の名称が「管理職手当」でないことだけで結論を出すものでもありません。

冒頭の3万円は、想定した会社の支給額であって、法律上の合格ラインではありません。「いくら上乗せしたか」に加えて、「何を任せ、何を本人が決めているか」を言葉にします。そこまで整理すると、給料の説明を求められた社長が、役職名だけで答えずに済みます。

現場代理人・主任技術者・職長・番頭なら、管理監督者に当たりますか?

朝、職長が「今日は先にこちらを組もう」と作業を振り分ける。現場監督は元請との打ち合わせに出る。その姿を見ると「現場を全部任せている」と感じます。しかし、現場で指示を出すことと、経営者と一体の立場で人や労働条件を決めることには違いがあります。

現場代理人・主任技術者・職長・番頭という肩書きだけで、管理監督者と判断することはできません。 以下は各役職の法律上の定義や、建設業固有の判定基準ではなく、自社の実態を確認するための例です。

社内での呼び名こうした実態なら、管理監督者として扱う前に点検が必要
現場代理人工事の窓口や段取りは任されるが、従業員の労働条件に関する決定は社長に戻る
主任技術者技術面で判断する一方、人員や処遇への権限がなく、自分も決められた時間に現場へ出る
職長当日の作業配置は決めるが、人を増やす判断や勤務の調整は自由にできない
番頭社長の指示を職人へ伝える役割が中心で、重要事項を決める権限が明確でない

こうした場合に管理監督者に当たりにくいのは、仕事が軽いからではありません。負っている責任に対して、実際に決められる範囲や勤務の裁量が十分か、という問題です。ベテランで社長から信頼されていることも、それだけで法律上の判断を置き換えません。

一方、番頭と呼ばれていても、実際には重要な運営判断や労務管理を担い、勤務の裁量と相応の待遇がある場合は、その実態を検討します。「建設業の現場監督は全員該当しない」と一律にはいえません。

社長と本人で、最近の判断を具体的に書き出してみてください。「職人を増やしたいとき」「工期が重なったとき」「自分が早く帰りたいとき」、誰が最後に決めたのか。組織図だけでは見えない権限が分かり、社長に毎回戻ってくる相談と、本人に任せる判断も整理できます。

管理監督者でも、深夜割増と有給休暇は必要ですか?

夜間工事を終えた監督が翌朝も現場を開け、有休の予定欄も空白のまま。「責任者だから自分で休めるはず」と任せていると、給与も休暇も確認する人がいなくなります。

管理監督者に該当しても、深夜割増賃金と年次有給休暇は対象です。厚生労働省の管理監督者の範囲に関するリーフレットでも、深夜業と年次有給休暇については別扱いにできないことが示されています。

  • 深夜割増:22時から翌5時までの勤務は、管理監督者でも深夜割増の対象です。夜間工事だけでなく、その時間帯の事務所での業務も確認します(※2026年9月時点)。時間外や休日と重なったときの率は夜間工事の割増賃金で解説しています。
  • 有給休暇:付与要件を満たす人には、管理監督者でも年次有給休暇を付与します。「役職者は対象外」とはできません。
  • 取得の管理:年10日以上の年次有給休暇を付与する人には、年5日の取得を確保する義務も及びます。本人が請求して取得した日などを確認し、不足分について時季指定を行います(※2026年9月時点)。管理簿の付け方は建設業の有給休暇と年5日の管理にまとめています。

社内規程にも、適用除外の範囲と、引き続き対応する項目を分けて書きます。次は条文イメージであり、管理監督者への該当性や自社の給与・休暇制度に合わせた調整が必要です。

規定例:労働基準法第41条第2号の管理監督者に該当する者については、同法の労働時間、休憩および休日に関する規定を適用しない。ただし、深夜割増賃金および年次有給休暇については、賃金規程および年次有給休暇の定めによる。

この一文で、会社が指定した人を自由に管理監督者にできるわけではありません。先ほどの実態確認が前提です。そのうえで深夜勤務の集計欄と有休の取得予定を用意すれば、給料日直前に夜間工事の記憶をたどったり、休暇の期限直前に代役を探したりする手間を減らせます。

役職手当を固定残業代にするなら、どう設計すればよいですか?

「管理監督者ではないなら、今の役職手当を残業代として扱えばいい」。給与明細を見ながら、そう考えたくなるかもしれません。まず確認するのは、その手当を何の対価として約束してきたかです。

役職の責任に対する手当と、時間外労働などに対する固定残業代は、目的を区別します。すでに役職の責任に対して払っている3万円を、書類の名前だけ変えて、当然に過去の残業代へ充当できるとは考えないでください。

今後、固定残業代を設ける場合は、通常の賃金と割増賃金を判別できる設計にし、金額・対応する時間数・対象となる労働を明らかにして、不足する差額を支払う運用を整えます。求人表示についても、厚生労働省は固定残業代の時間数・金額・超過分の追加支給などの明示を求めています。

具体的な計算、契約書・賃金規程・給与明細のそろえ方は、建設業の固定残業代の決め方と記載例で解説しています。ここでは、役職手当との関係が分かる設計例に絞ります。

規定例:役職手当は役職に伴う職務と責任に対して支給し、割増賃金を含まない。別途設ける固定時間外手当は、労働条件通知書に金額および対応する法定時間外労働の時間数を明示し、当該労働の有無にかかわらず支給する。実際の法定時間外労働に対する賃金が同手当を超える場合は、その差額を追加支給する。深夜割増および法定休日労働の賃金は同手当に含めず、別途支給する。

これは役職手当と固定時間外手当を別にする作例です。自社の賃金制度に合わせて調整し、既存の賃金条件を変える場合は、本人への説明や変更手続きも含めて確認してください。記載項目がそろえば、どんな運用でも有効になるという意味ではありません。

明細上でも責任への手当、固定の時間外手当、超過分を区別できれば、社長は昇格時に「任せる仕事への評価」と「働いた時間への支払い」をそれぞれ説明できます。

施工管理の残業にも上限はありますか?勤務時間はどう把握しますか?

職人が現場を出た時刻で勤怠を締めても、監督はその後に事務所へ戻り、写真を整理しているかもしれません。現場の終了時刻だけを見ていると、施工管理を担う人の負担が抜け落ちます。

建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、原則は月45時間・年360時間です(※2026年9月時点)。管理監督者に該当しない施工管理者は、管理職と呼ばれていても上限規制の対象です。 残業代や役職手当を払えば、上限を超えてよいわけではありません。

管理監督者に該当する場合は労働時間の上限規制の対象外ですが、健康確保のための時間把握まで不要にはなりません。制度の詳細や協定との照合は、建設業の時間外労働上限規制チェックリストにまとめています。

労働安全衛生法66条の8の3に基づく労働時間の状況の把握は、管理監督者も対象です。原則としてタイムカードやパソコンの使用記録などの客観的な記録で把握し、その記録は3年間保存するための措置が必要です(※2026年9月時点)。厚生労働省の労働時間制度に関する資料に、管理監督者への適用と把握方法が整理されています。

小さな工務店では、まず次の流れをつなげてください。

  1. 現場で仕事を始めた時刻、休憩、現場を離れた時刻を記録する。
  2. 帰社後の図面修正・写真整理など、現場の外で行う業務も記録に含める。
  3. 勤怠の記録とパソコンの使用記録などにずれがあれば、本人に仕事内容を確認する。
  4. 社長が定期的に負担の偏りを見て、書類作業の分担や翌日の配置を調整する。

例えば、遅くまでパソコンが動いている記録だけで、すべてを仕事と決めるのではなく、何をしていたかを確かめます。逆に「現場は終わっていたから」と、必要な事務作業を記録から外さないことです。

数字が見えると、「監督だから仕方ない」で終わっていた夜の作業を、誰に渡せるか考えられます。社長が次の現場を受ける前に、今の2人で回せる工程なのか判断しやすくなります。

「管理職だから残業代なし」を見直すなら、何から始めればよいですか?

明日、監督を呼んで「来月から手当を変える」と伝える前に、机へ資料を並べてください。必要なのは、雇用契約書・労働条件通知書、就業規則・賃金規程、給与明細、勤怠記録と、本人が実際に任されている仕事のメモです。

見直しは、次の順に進めると、役職の話とお金の話が混ざりにくくなります。

  1. 本人ごとに実態を聞く。「朝の開錠から夜の写真整理まで、何をしているか」「何を自分で決められるか」を確認します。同じ現場監督でも、一括で結論を出しません。
  2. 管理監督者への該当性を検討する。4つの判断要素と照らし、肩書きと給与上の扱いが合っているか整理します。
  3. 過去の支払いを確認する。当時の勤務と賃金を照合し、不足がないか確認します。記録が足りなければ、残っている資料と本人の説明を集めます。
  4. 今後の手当と時間管理を設計する。役職への評価、割増賃金、記録方法、工程の分担を決め、必要な変更手続きを確認したうえで本人に説明します。
  5. 規程と給与計算をそろえる。変更後の最初の給与で、記録した時間が計算に反映され、深夜割増や固定分の超過額が漏れていないか確かめます。

今後の制度を直すことと、過去の不足を整理することは別に進めます。さかのぼる請求と記録の備えは、建設業の未払い賃金リスクも参照してください。すでに紛争となり、交渉や訴訟の代理が必要な場合は、弁護士へ相談します。

中峯社労士事務所では、建設業の就業規則作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。Zoom30分の無料相談で、自社の監督に任せている権限や役職手当、勤怠の記録をもとに、どこから見直すかを一緒に整理できます。

「責任者なんだから」で会話を終える代わりに、任せる範囲と支払う根拠を同じ紙で確認する。その状態を作れば、社長も監督も、次の現場の段取りを話し合いやすくなります。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

同意書だけで労基法上の管理監督者になるわけではありません。実際の職務・権限・勤務態様・待遇で判断し、該当しなければ法律に沿った割増賃金の支払いが必要です。
その金額だけでは判断できません。基本給や賞与も含めた待遇と実際の勤務を確認し、職務内容や権限などと合わせて判断します。手当を増やすだけで問題が解決するとは限りません。
当日の作業配置を決めることだけでは結論は出せません。労働条件や人員に関する実質的な権限、自分の勤務時間の裁量、待遇などを合わせて確認します。
はい。健康確保や深夜割増の計算のために勤務の状況を記録します。記録を取ることと、出退勤を自分で決められるかという裁量の問題は区別して確認してください。
書き直すだけで過去の支払いの性質が変わるわけではありません。当時の契約や説明、勤怠記録、給与明細を確認し、今後の制度設計とは別に未払いの有無を整理します。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号採用定着士

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用定着士として採用と定着の設計まで踏み込みます。

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