懲戒解雇でまさかの逆訴訟、就業規則に入れるべき懲戒規定
懲戒処分は、就業規則に懲戒の種類と事由が定められていて初めて有効になります。規定が無いまま「クビだ」と処分すると、後から無効を争われ、未払い賃金や損害賠償に発展することがあります。けん責・減給・出勤停止・解雇といった段階的な処分と、建設現場特有の事由を規則で整えておくことが会社を守ります。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます無断欠勤を繰り返し、注意しても直らない職人。ある日、材料が現場から消えているのに気づく。堪忍袋の緒が切れた社長が「もう来なくていい、クビだ」と言い渡す。本人はふてくされて帰っていった——ここまでは、よくある話です。問題は数ヶ月後。事務所に一通の内容証明が届きます。「不当解雇であり、解雇期間中の賃金を支払え」。正しいのは自分のはずなのに、なぜか会社が追い込まれる。この逆転を防ぐのが、就業規則の懲戒規定です。この記事では、恐怖を煽るためではなく「会社を守る」ために、懲戒規定をどう整えるかをお伝えします。

「クビだ」の一言が、なぜ逆に会社を追い込むのですか?
現場のトップである社長にとって、素行の悪い職人を切るのは当然の判断に思えます。ところが法律の世界では、解雇は会社が思うほど自由ではありません。とくに懲戒による解雇は、根拠となるルールと手続きがそろっていないと、後から簡単にひっくり返されます。
- 口頭の通告だけでは、いつ・何を理由に処分したのかが残らない
- 就業規則に懲戒の定めが無ければ、処分の根拠そのものが問われる
- 「感情でクビにした」と受け取られると、不利になるのは会社側
正義感で下した処分が、手続きの不備ひとつで「不当解雇」に化ける。これが逆訴訟の入口です。
就業規則に懲戒規定が無いと、処分はどうなりますか?
懲戒処分は、就業規則にその種類(けん責・減給・出勤停止・懲戒解雇など)と、どんな行為が対象になるか(懲戒事由)が定められていて、初めて有効に行えるとされています。ここが空白だと、正当な理由があっても処分の土台がありません。
- 今どうなっているか:ひな形の就業規則に懲戒の章が薄く、事由も抽象的。
- 整えるとどう変わるか:どんな行為に、どの重さの処分をするかが文書で決まり、処分に根拠が生まれる。
- 社長の毎日がどう変わるか:問題が起きたとき「規則のこの条項に沿って進める」と落ち着いて対応でき、内容証明に怯えなくてよくなります。
規則の不備は、ひな形のままだと危ない5つの落とし穴でも触れているとおり、いざという場面で会社を守れない典型です。
段階的な処分は、どう設計すればいいですか?
軽い違反にいきなり懲戒解雇を持ち出すと、「処分が重すぎる」と判断されがちです。行為の重さと処分の重さの釣り合いを、あらかじめ段階で用意しておくのが実務的です。
- けん責・戒告:始末書を出させ、注意を記録に残す
- 減給・出勤停止:繰り返しや、やや重い違反への中間的な処分
- 懲戒解雇:安全を脅かす重大行為など、最も重い場合に限る
段階を踏んだ記録があると、「会社はきちんと注意も指導もしていた」という事実が残ります。この積み重ねが、いざ争われたときに会社を守る証拠になります。なお減給には労働基準法で上限があり、壊した工具の代金を取り返すための仕組みでもありません(作業着代の天引き・壊した工具の弁償は給料から引ける?)。
建設現場で特に決めておくべき懲戒事由とは?
一般的なひな形の懲戒事由は、オフィス勤務を想定していることが多く、現場のリスクを拾えていません。建設業では、命と信用に直結する行為を具体的に書いておく必要があります。
- 安全ルール違反(保護具の未着用、危険作業の無断実施など)
- 飲酒・酒気帯びでの就労や運転
- 材料・工具・燃料の無断持ち出しや私的流用
- 無断欠勤・遅刻の繰り返しで工程に穴を空ける
- 元請や近隣とのトラブルを招く重大な迷惑行為
これらは安全配慮とも密接に関わります。事故の場面で会社が問われる責任については安全配慮義務と就業規則もあわせてご覧ください。社用車の運転前後の酒気帯び確認は建設業のアルコールチェック義務で、連絡が取れなくなった職人の扱いは職人が「飛んだ」ときで整理しています。
トラブルの前に、懲戒規定をどう整えればいいですか?
懲戒規定は、使わずに済むのが一番です。それでも整えておく意味は、「もしも」のときに社長が感情でなく規則で動けることにあります。処分の根拠があるだけで、無用な争いを避けられ、労基署の是正勧告(労基署の是正勧告が来たら)のような場面でも落ち着いて対応できます。
大切なのは、脅すための規定ではなく、会社と真面目な職人を守るための規定にすることです。当事務所では建設業の就業規則作成を顧問の基本料金内で行っており、懲戒規定の追加だけのご相談も承っています。Zoom30分の無料相談で、自社の規則に守る力があるかを一緒に点検しましょう。最新の制度や運用は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- モデル就業規則について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 就業規則の作成・変更・届出の義務(厚生労働省 栃木労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article89_90_92.html
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