建設業のアルコールチェック義務|安全運転管理者と社用車規程の作り方
安全運転管理者は、使用の本拠ごとに乗車定員11人以上の車を1台以上、またはその他の車を5台以上使う事業所で選任が必要です。対象事業所では運転前後の酒気帯び確認にアルコール検知器を使い、記録を1年間保存します。建設業では直行直帰の確認方法と、持ち帰り・私用・事故報告・懲戒のルールを社用車規程と就業規則でそろえます(※2026年9月時点)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員10人の土木会社。朝、駐車場に並ぶ軽トラ3台とハイエース2台へ、職人がそれぞれ向かいます。前日の晩酌はいつものこと。明日は現場へ直行するからと、車を自宅へ乗って帰る職人もいます。そこへ元請の担当者から「アルコールチェックはしていますか」と聞かれ、社長の返事が止まる。「うちの規模でも要るのか。朝、会社に来ない人はどうするんだ」——建設会社で起こり得る場面です。この記事では、対象になる台数の数え方から、直行直帰の確認、車の持ち帰りや事故時のルールまで、毎朝の配車に沿って整理します。
軽トラ3台とハイエース2台でも、安全運転管理者が必要ですか?
同じ使用の本拠で使う車なら、合計5台の会社も選任の対象です。 安全運転管理者とは、事業所で使う車の安全な運転を管理する担当者です。建設業かどうかや従業員数ではなく、車の乗車定員と台数を見ます。
| 使用する車 | 選任が必要となる基準 |
|---|---|
| 乗車定員11人以上の自動車 | 1台以上 |
| その他の自動車 | 5台以上 |
| 大型自動二輪車・普通自動二輪車 | 台数計算では1台を0.5台に換算 |
| 原動機付自転車 | この台数計算には含めない |
基準は自動車の「使用の本拠ごと」です。会社全体の所有台数だけで決めず、どの事業所でどの車を使っているかを一覧にします。冒頭の会社なら、軽トラとハイエースを別々に数えて「どちらも5台未満」とするのは誤りです。車名だけで乗車定員を決めず、車検証も確かめましょう(※基準は2026年9月時点)。
「台数は分かった。担当者に名前を付ければ終わりか」というと、届出も必要です。道路交通法では、選任義務に違反すると50万円以下の罰金、選任・解任の届出義務に違反すると5万円以下の罰金または科料が定められています。選任・解任から届出までの期限は15日以内で、法人にも処罰が及ぶ規定があります(※2026年9月時点)。
車両一覧を用意し、管轄警察署に選任資格や届出方法を確認してください。車を増やすときの確認項目にも入れておけば、元請に聞かれてから慌てて駐車場を数え直さずに済みます。
アルコールチェックは、いつ、何を記録すればいいですか?
朝の鍵の受け渡しに検知器を置いても、夕方の確認を決めていなければ片手落ちです。安全運転管理者の業務には、運転前と運転後の酒気帯びの有無の確認があります。運転者の状態を見る確認に加えて、アルコール検知器を使います。
目視等での確認と記録の1年間保存は2022年4月1日から、アルコール検知器を使う確認は2023年12月1日から義務化されています。対象事業所では「顔を見て大丈夫そうだった」だけで済ませない運用が必要です(※2026年9月時点)。
記録には、確認した人と運転した人、車を特定できる情報、日時、確認方法、酒気帯びの有無、指示した内容、その他必要事項を残します。確認結果の保存期間は1年間です(※2026年9月時点)。
会社の運用としては、朝と夕方の欄がある共通の記録票を用意し、未記入が誰の分か分かる形にすると回しやすくなります。紙で始めるなら保管ファイルを決め、電子で管理するなら保存先と閲覧できる担当者を決めておきましょう。個々の運転ごとではなく一連の業務の前後に確認できることや、具体的な記録事項は、警察庁の通達で示されています。
検知器は故障のない状態で使えるよう、取扱説明書に沿って管理・点検する必要もあります。「担当者が休み」「電池切れ」「記録の置き場所が分からない」を想定し、連絡先や機器の管理担当も記録票の置き場所と一緒に決めてください。
社長の仕事は、毎回「昨日、飲み過ぎていないか」と聞いて回ることから、確認が済んだ人と済んでいない人を見て配車することへ変わります。
直行直帰で社用車を持ち帰る職人は、どう確認しますか?
朝、自宅の前でハイエースに乗る職人。会社に検知器が1台あっても、この人が出発する前には使えません。持ち帰りを認めるなら、確認方法も一緒に用意します。
酒気帯び確認は対面が原則です。ただし、対面が難しい直行直帰では、携帯型検知器を持たせたうえで、映像や電話で確認する方法が警察庁の通達に示されています。映像なら顔色・声の調子と測定結果を確かめ、電話なら直接話して声の調子を確かめるとともに結果を報告させます。
この方法を会社の朝に落とすなら、次のような運用が考えられます。
- 前日、車の持ち帰りを許可する際に確認相手を決める。 翌朝の出発予定と、帰宅後の確認予定も共有します。
- 出発前、職人が停車した状態で連絡する。 指定した担当者と直接やり取りし、検知器の結果と本人の状態を確認します。
- 確認できないときの行動を決める。 電話がつながらない、測定結果に疑問があるなどの場合は、運転を始めず会社へ相談するルールにします。
- 帰宅して運転を終えた後も確認する。 朝と同じ記録先へ集め、翌日に未記入を持ち越さない担当を決めます。
上の手順は自社用に調整する運用例です。検知器の写真や「異常なし」というメッセージだけを送って終わりにせず、本人の状態を確かめるやり取りを組み込んでください。
管理者が対応できない場合は、事前に指定して指導・教育した補助者による確認も認められています。異常時に管理者へ報告し、運転中止などの指示につなぐ体制が条件です。確認方法と補助者の扱いは警察庁通達の「2 酒気帯び確認」に基づきます。
なお、移動時間を給与計算でどう扱うかは別途整理します。現場への移動時間は労働時間?で、集合や積み込みを伴う場合との違いを説明しています。確認のために何を指示しているかも記録し、時間の扱いを曖昧にしないでください。直行直帰そのものの記録方法や就業規則の定め方は、直行直帰の就業規則・規定例にまとめています。
連絡がつかないときの次の相手まで決まっていれば、職人は自宅の前で立ち往生せず、社長も出発時刻になってから電話番を探す必要がなくなります。
社用車規程には、持ち帰りや違反金の扱いをどう書きますか?
金曜の夕方、「月曜は直行なので乗って帰ります」。その許可が、週末の買い物や家族への貸し出しまで含むのか。ここを口約束にすると、人によって受け取り方が変わります。
社用車規程は、車の使い方をまとめる社内ルールです。就業規則の服務・安全・懲戒の定めと矛盾しないよう、次の項目を整理します。表は法定様式ではなく、建設会社で決めておきたい事項の例です。
| 項目 | 自社で決める内容 |
|---|---|
| 使用目的・私用禁止 | 業務に使う範囲、無断の買い物利用や家族への貸与を認めないこと |
| 運転できる人 | 会社が認めた運転者、免許の確認方法、運転を交代するときの連絡 |
| 持ち帰り | 許可する人・目的・期間・保管場所、直行直帰時の確認相手 |
| アルコールチェック | 確認方法、記録先、未確認・異常時の運転中止と連絡 |
| 事故・故障 | 救護や危険防止、警察への通報、会社・保険会社への連絡、報告書 |
| 違反に伴う金銭 | 書類の名義と内容の確認、報告先、立替え・精算を決める手順 |
| マイカーの業務使用 | 事前許可、免許・車検・保険の確認、燃料代などの精算、事故時の連絡 |
規定例:社用車は会社が認めた者が業務のために使用し、私用及び第三者への無断貸与を禁止する。直行直帰に伴う持ち帰りには事前の許可を要し、許可された運転者は、指定された方法による運転前後の酒気帯び確認及び報告を行う。確認が完了しない場合又は酒気帯びが疑われる場合は運転を開始せず、会社の指示を受ける。
実際の配車、確認担当者、車の保管方法に合わせて調整が必要です。
違反金については、「違反したら給料から引く」とひとまとめに書かないことが大切です。反則金・罰金・放置違反金などの通知を受けたら、まず書類の内容と名義を確認する運用にしましょう。通知の種類によって納付する人の扱いが異なるため、「違反金は運転した職人が払うもの」と一律に決めつけないようにします。
労働基準法第24条には、賃金を全額支払う原則と、法令や労使の書面協定による控除の例外があります。ただし、この一般原則から、会社が立て替えた違反金を当然に天引きできるとはいえません。誰が負担するかと、給与から差し引けるかは分けて検討し、会社の判断だけで控除しないようにします。協定の内容や本人の意思、精算方法は個別に確認してください。賃金控除協定や、事故の修理代を運転した職人に負担させる場合の考え方は、作業着代の天引き・壊した工具の弁償は給料から引ける?で整理しています。
マイカーも「本人の車だから任せる」で終わらせず、業務使用に必要な保険条件を保険会社へ確認する流れを許可手続きに入れます。申請先と判断材料がそろうと、社長は持ち帰りや立替えのたびに、その場で約束を増やさずに済みます。
飲酒運転や確認拒否は、就業規則の懲戒にどう定めますか?
出発前、職人が「急いでいるから今日は省略で」と鍵を持ちます。そんなときは、処分を言い渡す前に、まず未確認のまま運転させない対応を取れるようにしておきます。
社用車規程には守る行動を書き、就業規則の懲戒規定には、その違反をどう扱うかを対応させます。飲酒運転だけでなく、正当な理由のない確認拒否、結果の偽装、無断使用、事故の隠蔽など、会社が防ぎたい行動を具体的に並べるのが実務的です。
規定例:飲酒又は酒気帯びの状態で運転したとき、正当な理由なく会社所定の酒気帯び確認を拒んだとき、確認結果を偽ったとき、又は事故の報告を故意に怠ったときは、就業規則の懲戒に関する定めにより、行為の内容及び事情に応じて処分を検討する。
これは条文のイメージです。自社の懲戒の種類・事由・手続きに合わせて調整し、職人へ内容を伝える必要があります。
「飲酒運転は懲戒解雇」と書くだけで、どのケースでも解雇が有効になるわけではありません。労働契約法第15条では、行為の性質や態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒は、権利の濫用として無効とされています。確認記録や本人の説明を整理して判断します。労働契約法(厚生労働省)
処分の種類や重さの組み立ては、就業規則に入れるべき懲戒規定で詳しく説明しています。解雇の妥当性や紛争が問題になるときは、弁護士へ相談してください。
運転を止める判断と、その後の処分の判断を分けておけば、社長は朝の慌ただしさの中で「クビだ」と結論まで出さず、安全の確保を先に進められます。
現場へ向かう途中で事故が起きたら、会社にも責任がありますか?
現場へ向かう軽トラが接触事故を起こし、職人から「相手がけがをした」と電話が入る。本人が運転していたとしても、会社と無関係とは限りません。
民法第715条には、従業員が事業の執行について第三者に与えた損害を、使用者が賠償する責任が定められています。これを「使用者責任」といいます。選任・監督に相当の注意をした場合などの例外もありますが、現場へ向かう業務中の事故では会社の責任も問題になり得ます。
一方、直行直帰の帰り道や私用の寄り道などを、すべて同じ結論で扱うこともできません。運転の目的、会社の指示や許可、車の使われ方といった事実を確認する必要があります。「私用禁止と規程に書いたから会社は責任を負わない」とは決めつけないでください。
会社としては、事故連絡を受けた人が確認する項目を、車内に置く連絡票とそろえておくと動きやすくなります。
- けが人への対応と現場の安全確保、警察への通報の状況
- 発生場所・時刻・運転者・車両・運転目的
- 会社と保険会社への連絡、記録や資料の保管
- 他の職人の移動や現場到着が遅れる場合の手配
賠償責任や示談の判断は保険会社・弁護士へ相談します。また、第三者への賠償とは別に、従業員の安全を守る会社の対応は、安全配慮義務と就業規則でも整理しています。
連絡の順番と残す情報が決まっていれば、社長は電話口で一から聞き取り項目を考えず、けが人への対応や現場の手配に集中できます。
明日の朝に回せるルールは、何から整えればいいですか?
机に車の鍵を並べるつもりで、まず「この車は誰が、どこから、何時に出すのか」を書き出してください。社用車規程のひな形を埋める前に、自社の朝と帰りを把握するところから始めます。
- 車両の使用の本拠・台数・定員を確認し、選任と届出の状況を整理する
- 出社する人と直行直帰の人の確認方法・担当者を決める
- 酒気帯びが疑われたとき、運転を止めて代わりの移動を手配する人を決める
- 記録票・保存先・検知器の管理方法をそろえる
- 持ち帰り・私用・事故報告・懲戒の定めを、実際の運用と照合する
中峯社労士事務所では、就業規則の作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。建設業の就業規則作成のページで進め方をご覧いただけます。「車は5台あるが、朝は皆ばらばらに出る」という会社も、Zoom30分の無料相談で、自社の確認方法や社用車規程に必要な項目を一緒に整理できます。
元請から確認されたときに、「誰が、どう確認して、どこへ記録しているか」を答えられる状態へ。社長が一人で毎朝の判断を抱え込まないルールを作りましょう。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 安全運転管理者制度(茨城県警察): https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/administrator/system.html
- 安全運転管理者制度について(長野県警察): https://www.pref.nagano.lg.jp/police/shinsei/koutsu/ankanseido.html
- 安全運転管理者による運転者に対する点呼等の実施及び酒気帯び確認等について・2024年12月27日通達(警察庁): https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzenuntenkanrisya/pdf/20241227ankankatyoutuutatu.pdf
- 民法・第715条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 労働基準法・第24条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働契約法・第15条(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536
よくあるご質問
「うちの就業規則は、今のままで大丈夫?」
作成・改定は顧問の基本料金内(他社相場:作成単体で20〜30万円)。Zoom30分・無料で、御社の現状から「直すべき順番」を整理します。
ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
▼ まずは現状をお聞かせください(相談は無料です) ▼
\ 予約ツールの入力は不要。「まず話だけ」「5分だけ電話」でOKです /