建設業の同一労働同一賃金|2026年10月改正で見直す手当と定年後の再雇用
2026年10月1日から同一労働同一賃金ガイドラインに無事故手当・家族手当・退職手当などの考え方が加わり、パートや有期の人を雇い入れる際は待遇差の説明を求められる旨の明示も義務になります(※2026年9月時点)。手当の差は手当ごとの目的で判断され、同じ仕事をする有期の職人には無事故手当や皆勤手当を正社員と同額で払うのが原則です。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員8人の型枠の会社。現場からの帰り道、1年契約で働く職人が助手席でぽつりと言います。「社長、俺、あの正社員の子と同じ型枠を組んでますよね。なんで自分には現場手当が付かへんのですか」。悪気のない、素朴な問いです。けれど、とっさに理由が出てこない。「昔からそういう決まりで……」と濁したその一言を、相手はちゃんと覚えています。
しかも2026年10月1日以降は、パートや有期契約の人を雇い入れるときに「正社員との待遇の違いについて、説明を求めることができます」と文書などで伝えることが、会社の義務です。聞かれてから理由を探すのではなく、聞かれる前に答えを用意しておく番です。この記事では、10月の同一労働同一賃金ガイドラインの改正で何が加わったのか、無事故・皆勤・現場・家族手当や退職金、出張旅費を有期の職人にどう払うのか、定年後に再雇用した職人の手当をどう決めるのかを、順番に整理します。

「なぜ手当が違うのか」と聞かれたら、会社は説明しなければいけないのですか?
はい。パートや有期契約の職人から求められたら、会社は正社員との待遇の違いの内容と理由、そして待遇を決めるときに考えた事項を説明しなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項)。説明を求めたことを理由に、解雇・減給・契約の更新拒否などの不利益な扱いをすることも禁止されています(同条第3項)。
どこまで説明すれば足りるのかは、厚生労働省の施行通達で線が引かれています。
- 比べる相手は、本人と仕事の中身や配置の変わり方が最も近いと会社が判断する正社員。誰を選んだか、その理由も伝える(相手の正社員が誰か特定されないよう配慮する)
- 「賃金は各人の能力や経験を考えて総合的に決めている」といった説明では十分ではない。賃金規程や等級表などで、正社員側の水準が分かるように示す
- 理由は、仕事の中身と責任、配置の変わり方、その他の事情のうち、その待遇の目的に合うものを挙げて説明する
- 本人が納得することまでは求められていないが、納得してもらえるよう誠実に対応する必要がある
2026年10月1日以降は、この「説明を求められる」ことを、雇い入れの時点で本人に知らせることも義務です。パートや有期契約の人を雇い入れるとき(有期契約の更新も、その都度「雇い入れ」に当たります)に文書などで示す事項は、これまで「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つでした。そこに「待遇の違いの内容・理由などの説明を求めることができる旨」が加わりました(パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正)。労働局の助言・指導・勧告を受けても直さなければ、公表の対象になり、10万円以下の過料(刑事罰の罰金ではなく、行政上のお金の制裁)に処されることもあります(※2026年9月時点)。説明の申出先(部署名や担当者)も書いておくのが望ましいとされ、厚生労働省の10月1日以降のモデル労働条件通知書(建設労働者用の常用・有期雇用型を含む)には、その欄が入りました。通知書全体の書き方は建設業の労働条件通知書の書き方で整理しています。
見落としやすいのは、説明の出来そのものが判断材料になる点です。改正後のガイドラインには、会社が待遇の違いの内容と理由を十分に説明しなかった場合や、パートや有期の人の意向を十分に考えずに一方的に待遇を決めた場合、その事実も、差が不合理だと判断される方向の事情として考慮されうると書き加えられました。助手席での「昔からそういう決まりで」は、それだけで会社に不利な材料になり得ます。反対に、手当ごとの理由を一行ずつ言えるようにしておけば、その場で答えが出せて、職人の不公平感が現場でくすぶり続けることもありません。
同一労働同一賃金は、建設会社の誰と誰を比べるルールですか?
比べるのは、自社が雇っている正社員と、自社がパートや有期契約で雇っている人です。「パート」「アルバイト」「契約社員」などの呼び名は関係なく、期間を決めて雇っているか、週の所定労働時間が正社員より短ければ対象になります。中小企業にも2021年4月1日から適用されています。
| 働き方 | 対象になるか | 建設会社での例 |
|---|---|---|
| 期間を決めて雇っている(有期) | 対象 | 1年契約の職人、定年後に1年ごとに更新する嘱託、冬の間など期間を決めた季節雇用、日雇いで入る手元(1日ごとの契約も有期に当たる) |
| 週の所定労働時間が正社員より短い(パート) | 対象 | 週3日の事務のパート、午前だけの手元 |
| 期間の定めがなく、正社員と同じ時間働く | 法律の対象外。ただし正社員との釣り合い(均衡)を考えて条件を決める | 有期から無期に転換した職人 |
| 請負で入る一人親方、他社に雇われて応援に来る職人 | 対象外(自社が雇っていない) | 契約が請負でも、働き方の実態から自社の労働者と判断されれば話は別 |
建設現場には一人親方や他社の応援職人も一緒に入りますが、同一労働同一賃金で比べるのは、同じ会社に雇われている人どうしです。一方で、1年契約を何年も更新している職人、定年後の嘱託、事務のパートは、社長が「うちの社員と同じようなもの」と思っていても対象になります。
法律が禁じているのは差そのものではなく、「不合理な」差です(同法第8条)。手当や休暇などの待遇ごとに、その性質と目的に照らして、次の違いから説明がつくかで判断されます。
- 職務の内容:仕事の中身と、それに伴う責任の重さ(職長をやるか、段取りを組むか)
- 職務の内容と配置の変更の範囲:将来、担当する仕事や現場・地域がどこまで変わり得るか
- その他の事情:成果・能力・経験、合理的な労使の慣行、労使の話し合いの経緯など
仕事の中身が正社員と同じで、雇用が終わるまでの配置の変わり方も同じと見込まれる人には、パートや有期であることを理由とした差別的な取扱いそのものが禁止されます(同法第9条)。
有期契約の通算が5年を超え、本人の申込みで期間の定めのない契約に切り替わった職人(無期転換)は、フルタイムならこの法律の対象から外れます。それでも改正後のガイドラインには、転換後の条件を決めるときは正社員との間に不合理な差がないかを前もって点検し、差があれば確実に解消することが求められる、と書き加えられました(厚生労働省のQ&Aでは、転換の前に点検・解消しておく趣旨と説明されています)。
2026年10月1日のガイドライン改正で、何が加わったのですか?
2026年10月1日から、同一労働同一賃金ガイドラインに無事故手当・家族手当・住宅手当・退職手当・夏季冬季休暇・褒賞の6つの考え方が新しく加わり、賞与・病気休職・福利厚生施設の記載も詳しくなりました。2026年4月28日に告示された(令和8年厚生労働省告示第203号)、適用日の決まった改正です。ガイドラインは、どんな待遇差が不合理になり得るかの原則と具体例を国が示した指針で、原則に反すると差が不合理と判断される可能性があります。なお、下の表の退職手当と賞与は「原則となる考え方」ではなく、最高裁が手当の性質や目的に触れた内容を「留意すべき事項」として書き加えたものです。
| 待遇 | 改正後のガイドラインの考え方(要約) | 踏まえた裁判例 |
|---|---|---|
| 無事故手当(新規) | 正社員と業務の内容が同じなら、同一の無事故手当を支給 | ハマキョウレックス事件(最高裁) |
| 家族手当(新規) | 契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるなら同一の家族手当を支給 | 日本郵便(大阪)事件(最高裁) |
| 住宅手当(新規) | 転居を伴う配置変更の有無で払う手当なら、同じく転居を伴う配置変更がある人には同一の住宅手当を支給 | ハマキョウレックス事件(最高裁)など |
| 退職手当(新規・留意事項) | 後払い・功労報償などの目的がパートや有期にも当てはまるのに、働き方の違いに応じた釣り合いのとれた内容を払わず、見合いの措置もなければ、不合理とされ得る | メトロコマース事件(最高裁) |
| 夏季冬季休暇(新規) | パートや有期にも正社員と同一の夏季冬季休暇を付与 | 日本郵便(佐賀)事件(最高裁) |
| 褒賞(新規) | 一定期間の勤続に与える褒賞は、同じ期間勤続したパートや有期にも同一のものを付与 | メトロコマース事件(高裁) |
| 賞与(留意事項を追加) | 退職手当と同じく、目的が当てはまるのに釣り合いのとれた内容を払わず、見合いもなければ不合理とされ得る | 長澤運輸事件(最高裁) |
| 病気休職(記載を充実) | 正社員に休職中の給与を保障しているなら、相応に継続的な勤務が見込まれるパートや有期にも同一の保障 | 日本郵便(東京)事件(最高裁) |
| 福利厚生施設(記載を充実) | 利用料金・割引率などの利用条件にも不合理な差を設けない | ― |
表のほかに、差の理由の考え方についても、新しく書き加えられたり、はっきり書き直されたりしました。
- ガイドラインに原則が書かれていない待遇や、具体例に当たらない場合でも、差が不合理とされる可能性がある
- 「正社員として働ける人を確保し、定着させるため」という目的があるだけでは、差が不合理でないとは当然には認められない
- 定年後に継続雇用された人であることだけで、直ちに差が不合理でないとは認められない(賃金だけでなく、手当や休暇を含む待遇全般の話として整理された)
- 差を解消するときは、正社員の労働条件を不利益に変えずに、パートや有期の側を改善することが求められる
「うちは正社員を大事にしたいから」という一言は、それだけでは理由として足りません。一方で、表にない手当なら自由に決めてよい、ということでもありません。手当ごとに「何に対して払っているか」を言葉にしておくことが、改正後も変わらない出発点です。
建設会社でよくある手当は、有期やパートの職人にも同じ額を払うべきですか?
同じ現場で同じ仕事をしている有期の職人には、無事故手当・皆勤手当・作業に対して払う現場手当・出張旅費や通勤手当を、正社員と同じ額で払うのが原則です。家族手当・退職金・住宅手当は、勤務の続き方や転勤の実態によって差を残せる場合があります。全部の手当を同額にしなければならない、というルールではありません。
| 手当 | 改正後のガイドラインの考え方 | 建設会社での点検ポイント |
|---|---|---|
| 無事故手当 | 業務の内容が同じなら同一 | ダンプや重機の運転、現場作業の無事故に払っているなら、同じ業務をする有期の職人にも同額。「安全手当」など名前が違っても、事故を起こさなかったことに払う手当なら同じ考え方で点検する |
| 皆勤手当 | 業務の内容が同じなら同一 | 正社員だけ欠勤を査定で減点し、待遇に反映しているなら、その見合いの範囲で差を残せる。査定の違いがないのに有期だけ外すのは説明がつかない |
| 現場手当(作業・環境に払う分) | 同じ危険度・作業環境の業務なら同一 | 高所・解体・真夏の屋外など作業そのものに払うなら、同じ現場で同じ作業をする有期の職人にも同額 |
| 現場手当(職長・段取りの責任に払う分) | 同じ役職なら同一。役職の内容が違えば違いに応じた額 | 職長を任せていない有期の職人に払わない理由になる。有期でも職長を任せたら払う |
| 家族手当 | 契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるなら同一 | 1年契約を何度も更新しているベテランに、正社員と同じ家族手当が出ているか。更新を重ねる見込みのない短期の雇用なら差を残せる |
| 退職金 | (留意事項)目的が当てはまるのに釣り合いのとれた内容を払わず、見合いもなければ不合理とされ得る | 正社員には退職金規程があり、長く勤める有期の職人には何もない、という形になっていないか |
| 出張旅費・通勤手当 | 正社員と同一 | 遠方現場への交通費・宿泊費や通勤の交通費は、雇用形態で分けない。週の所定労働日数が少ない人には通勤手当を日額で払うなど、払い方を変えることは問題とならない例に挙がっている |
| 住宅手当 | 転居を伴う配置変更の有無で払うなら、同じく転居を伴う配置変更がある人には同一 | 正社員にも実際は転勤を命じていないのに、「正社員は転勤があるから」は理由にならない |
見られるのは、手当の名前ではなく中身です。最高裁の長澤運輸事件でも、手当ごとに支給の条件と内容からその趣旨を確かめたうえで、差が不合理かどうかが判断されています。賃金規程に手当の名前と金額しか書いていないと、趣旨は後から説明するしかありません。支給の条件と目的を1行ずつ書いておけば、それ自体が説明の資料になります。
家族手当などの「相応に継続的な勤務が見込まれる」は、何年と決まっているわけではありません。契約の期間や更新の回数、ほかの有期の人の更新の状況などから判断するとされています(厚生労働省のQ&A)。週の所定労働時間が短いパートに「同一」とされた待遇を全く同じ額・同じ日数で与えなければならないのか、という問いには、その待遇の目的が働く時間の長短にかかわらず当てはまるかなどの観点から、労使で話し合って決めると答えています(同Q&A)。事務のパートの手当は、この物差しで一つずつ決めます。
休暇も同じ考え方です。正社員にだけ夏季休暇・冬季休暇(会社の休日とは別に与える休み)を付けているなら、有期の職人にも同じ休暇を付けるのが改正後の原則です。ガイドラインは、繁忙期に限った短期間の勤務ではない有期雇用の人に付けていないことを、問題となる例に挙げています。
退職金を建退共(建設業退職金共済)で積み立てている会社は、誰を対象に掛金を納めているかと、退職金規程の書き方をそろえておくと説明しやすくなります(建退共と退職金規程の決め方)。遠方現場の日当や宿泊費の決め方は出張手当・日当と旅費規程にまとめています。手当ごとに理由が1行で書けていれば、契約を更新するたびに、社長が頭の中で理由を組み立て直す必要もなくなります。
定年後に有期で再雇用した職人の手当は、どう決めればいいですか?
手当を一つずつ見て、仕事や役割が変わった分だけ差をつけ、変わっていない手当は残すのが基本です。定年後の再雇用であることは差を考えるときの事情の一つになりますが、それだけで直ちに差が不合理でないとは認められません。改正後のガイドラインは、この考え方を賃金だけでなく手当や休暇などの待遇全般に広げて書き直し、待遇ごとに判断することをはっきりさせました。
型枠大工のAさんの例で考えます。60歳の定年で1年契約の再雇用に切り替わり、職長は若手に譲りましたが、同じ現場で型枠を組む仕事は続けます。
| 項目 | 再雇用後の決め方の例 | 説明の軸 |
|---|---|---|
| 基本の日給 | 職長としての段取りと責任が外れた分を反映して決め直す | 仕事の中身と責任の変化 |
| 職長手当 | 外す | 職長という役割に払う手当で、その役割を外れた |
| 現場手当(作業に払う分) | 同じ額で残す | 同じ現場で同じ作業をしている |
| 皆勤手当 | 同じ額で残す | 仕事が同じなら、休まず出てほしい必要性は変わらない |
| 無事故手当 | 同じ額で残す | 業務の内容が同じなら、事故を防ぐ必要性も同じ |
| 家族手当・賞与 | 外すなら、理由を個別に書き残す | 年金がいつから出るか、会社が埋め合わせに払うものの有無など、Aさんと会社の事情(下の注意を参照) |
この表は、最高裁の長澤運輸事件(平成30年6月1日判決。当時の労働契約法20条をめぐる事件)の考え方に沿っています。定年後に再雇用されたトラック運転手について、判決は、賃金の差を総額だけで比べず項目ごとに趣旨を見るべきだとしたうえで、次のように判断しました。
- 休日以外は1日も欠かさず出勤することを促す精勤手当を、仕事が同じ再雇用者に払わないのは不合理。正社員は残業代の計算の基礎に精勤手当が入るのに、再雇用者は入らない点も不合理
- 正社員の中から指定された役付者であることに払う役付手当を、再雇用者に払わないのは不合理とはいえない
- 住宅手当・家族手当は、幅広い世代がいる正社員の生活費を補助する理由がある一方、再雇用者は老齢厚生年金の支給が予定され、支給開始までは会社から調整給が出ていたことなどから、払わなくても不合理とはいえない
- 賞与は、定年退職時に退職金を受け取っていること、年金と調整給の予定、再雇用後の賃金体系の工夫などを総合して、払わなくても不合理とはいえない
注意したいのは、判決が住宅手当・家族手当・賞与について「不合理とはいえない」とした前提に、年金と、年金が出るまでの調整給があったことです。2026年に60歳になったAさん(昭和41年生まれ)は、男性なら、65歳より前に出る特別支給の老齢厚生年金の対象外です(男性の対象は昭和36年4月1日以前の生まれ=日本年金機構)。老齢厚生年金は原則65歳からで、いま60代前半の男性の職人の多くは同じです。長澤運輸事件と同じ理由で家族手当や賞与を外せるとは限らず、同じ結論になるかは、年金が出るまでの期間の埋め合わせの仕組みなど、会社ごとの事情しだいです。改正後のガイドラインが待遇ごとの判断を求めているので、外す手当ごとに理由を書き残しておきます。基本の日給の決め直し方、65歳までの継続雇用の義務、高年齢雇用継続給付との関係は60代・70代の職人と定年で整理しています。表の右の列を労働条件通知書と一緒に綴じておけば、毎年の更新の席で「なんでこの手当は外れたんですか」と聞かれても、紙を指しながら話ができます。
差をなくすために、正社員の手当を下げてもいいですか?
おすすめできません。改正後のガイドラインは、差を解消するときは正社員の労働条件を不利益に変えずに、パートや有期の側を改善することが求められる、と明記しました。
やむを得ず就業規則の変更で正社員の手当を下げる場合も、原則は本人との合意が必要です(労働契約法第9条)。合意なしに進めるなら、変更後の規則を周知したうえで、不利益の程度や変更の必要性、内容の相当性、話し合いの状況などから見て、変更が合理的でなければなりません(同法第10条)。そのうえでガイドラインは、こうした対応は基本的に望ましいとはいえないことに留意すべきだ、としています。手当や日当を下げる変更の進め方は手当・日当を下げる就業規則の不利益変更にまとめています。
現実的なのは、次の順番です。
- 説明のつかない差だけを洗い出す
- 同じ仕事の職人に払う手当(無事故・皆勤・作業に対する現場手当)から、有期の職人の側を先にそろえる
- 家族手当や退職金のように金額の大きいものは、対象と時期を決めた計画を作り、職人とも話し合って進める
正社員の手当に手を付けずに済めば、ベテランの正社員に「自分の給料が下がるのか」と身構えさせることもありません。なお、家族手当のうち配偶者の収入で支給が決まるいわゆる配偶者手当は、パートで働く人の就業調整の原因になっていると指摘されており、労使の話し合いで働き方に中立的な仕組みに見直すことが望まれる、ともガイドラインに書かれました。見直しで正社員の手当の条件を変えるときも、上の合意と合理性のルールに沿って進めます(厚生労働省のQ&A)。
何から手を付ければいいですか?
10月1日以降の雇入れと契約更新に間に合わせるなら、次の順で進めます。
- 対象の人を書き出す:1年契約の職人、定年後の嘱託、季節雇用、事務のパートなど、パートや有期で雇っている人を一覧にする。
- 手当・休暇・賞与・退職金を並べる:それぞれ「何に対して払っているか」を1行で書く。
- 差の理由を書く:差がある所に、仕事の中身と責任、配置の変わり方、その他の事情のどれで説明するかを書く。書けない差は、正社員を下げずに有期の側を上げる計画にする。
- 通知書を直す:10月1日以降の雇入れ・更新から、「待遇の違いの説明を求めることができる旨」を労働条件通知書に入れ、申出先の部署名や担当者も書く。説明を求められていなくても、更新の面談のときなどに、違いと理由をまとめた分かりやすい資料を渡しておくことが望ましいとされています(改正後の雇用管理指針)。
- 規程に落とす:就業規則と賃金規程に、手当の目的と支給条件を書く。パートや有期の人に関わる規則を作ったり変えたりするときは、その人たちの過半数を代表する人の意見を聴くよう努める(パートタイム・有期雇用労働法第7条)。代表は管理職ではなく、意見を聴く人を選ぶと明らかにした投票や挙手などで選ばれた人で、会社の意向で選んだ人ではないことが必要です(改正後の雇用管理指針)。
ここまで整えば、助手席で同じことを聞かれても、社長は「その手当は職長の役割に払っているから」「来月から現場手当は同じ額にする」と、その場で答えられます。説明のつく給料は、有期の職人が腰を据えて働き続ける理由にもなります。
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参考(一次情報)
- 同一労働同一賃金特集ページ(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
- パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)リーフレット(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001698010.pdf
- 同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001695906.pdf
- 同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針に関するQ&A(令和8年改正)(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001716915.pdf
- 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000076
- 最高裁判所第二小法廷 平成30年6月1日判決(平成29(受)442)長澤運輸事件(裁判所): https://www.courts.go.jp/hanrei/87785/detail2/index.html
よくあるご質問
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