労基署の是正勧告とは?建設業で実際に多い指摘事項と対応の流れ
是正勧告とは、労働基準監督署の調査(臨検監督)で法違反が見つかった際に是正を求める文書で、是正勧告書を受けたら是正報告書を提出します。建設業では36協定の未届、移動・手待ち時間を含む割増賃金の不足、就業規則の未届、健康診断の未実施などが多く、放置は罰則リスクにつながります。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員7人の内装工事会社。社長は17時に現場から戻り、事務所で請求書と安全書類を1人でさばいています。そこへ「調査でうかがいます」と労働基準監督署から一本の電話が入り、手が止まる——。この段階でいただくご相談は、たいてい同じ言葉から始まります。「今の状態で調査が入ったら、人件費や法定福利費が膨らみすぎて会社が持たない」。怖いのは勧告そのものではなく、指摘どおりに直したあとに残る金額のほうなのです。是正勧告とは、労働基準監督署の調査で法律違反が見つかったときに、その是正を求める文書のこと。慌てず順番に対応すれば、必要以上に恐れるものではありません。ここでは、勧告の流れと、建設業で多い指摘、そして指摘される前に整えておきたい点を整理します。

是正勧告とは何ですか?
是正勧告は、労働基準監督署が労働基準法などの違反を見つけたときに、「ここを直してください」と是正を求める文書です。流れは、おおむね次のとおりです。
- 臨検監督(りんけんかんとく):監督官が事業場を調査します。定期的なものと、申告などをきっかけにしたものがあります。
- 是正勧告書の交付:法違反が見つかると、その内容と是正を求める期限が書かれた「是正勧告書」が渡されます。
- 是正報告書の提出:会社が改善し、その内容を「是正報告書」にまとめて、期限までに提出します。
臨検監督には、あらかじめ計画された定期的なもの(定期監督)のほか、働く人からの申告をきっかけにしたもの(申告監督)、労働災害の発生を受けて行われるものなどがあります。どの入り口であっても、確認されるポイントはおおむね共通しています。
是正勧告そのものは行政指導で、いきなり罰金や逮捕という性質のものではありません。ただし、指摘を放置したり、悪質と判断されたりすると、送検などより重い対応に進むことがあります。
建設業で実際に多い指摘事項は?
建設業の現場では、次のような指摘が目立ちます。
- 36協定の未届:36協定(時間外・休日労働をさせるための労使協定)を結ばず、または届け出ずに残業をさせている。法定労働時間を超えて働かせる根拠が無いため、違法になります。
- 割増賃金(残業代)の不足:特に「移動時間」や「手待ち時間(資材の到着待ちなど、次の作業を待つ時間)」を労働時間に入れておらず、残業代が足りていないケース。建設業は現場ごとに時間の管理があいまいになりやすく、ここは最もよくある指摘の一つです。
- 就業規則の未届:常時10人以上の事業場なのに、就業規則を作成・届出していない。
- 健康診断の未実施:定期健康診断を行っていない、または記録が残っていない。
いずれも「うっかり」で起きやすい一方、指摘されると影響が大きい項目です。
指摘を放置すると、どうなりますか?
是正勧告は行政指導ですが、放置は禁物です。
- 36協定なしの時間外労働は違法で、是正しなければ責任を問われます。
- 就業規則の作成・届出義務に違反した場合、30万円以下の罰金の対象になり得ます(労働基準法120条)。
- 未払い残業代があれば、さかのぼって支払う必要が生じます。
金額だけでなく、元請への信用や、経営事項審査・建設業許可といった場面にも影響しかねません。「指摘されたら直す」より、「指摘される前に整える」方が、結果的に負担は軽くなります(※罰則の内容は2026年7月時点)。
すでに是正勧告を受けてしまったら、どうすればいいですか?
もし是正勧告書を受け取ってしまっても、順番に動けば大丈夫です。慌てて対応を誤るより、次の初動を落ち着いて踏むことが大切です。
- 是正報告書の提出期日を確認する:勧告書には是正の期限が書かれています。まず、いつまでに何を報告するのかを正確に把握します。
- 指摘された事実と自社の実態を照らし合わせる:どの項目が、どういう理由で指摘されたのかを整理し、実際の勤務や賃金の記録と突き合わせます。
- 是正報告書は正直に、実行可能な内容で書く:体裁だけ整えて実態が伴わないと、後で食い違いが表面化します。すぐに直せる点と、時間をかけて整える点を分け、現実に守れる内容で報告します。
- 自社だけで抱え込まない:割増賃金の再計算や36協定・就業規則の整備など、判断に迷う部分は専門家に相談して構いません。
一度の指摘を「体制を立て直すきっかけ」に変えられれば、同じ指摘を繰り返さない会社になれます。
調査ではどんな書類を確認されますか?
臨検監督では、口頭のやり取りだけでなく、労務管理の記録そのものを確認されます。建設業で特に見られやすいのは、次のような書類です。
- 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(いわゆる法定三帳簿)
- 就業規則とその届出の控え
- 36協定の締結・届出の状況
- 賃金の計算根拠(残業代の単価や、移動・手待ち時間の扱い)
- 定期健康診断の実施記録
これらがそろっていないと、「実態を確認できない」こと自体が指摘につながります。逆に、ふだんから記録を整えておけば、調査は淡々と終わることがほとんどです。
指摘される前に整えるチェックリスト
最低限、次の点を確認しておきましょう。
- 36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ているか(毎年の更新も)
- 移動時間・手待ち時間を含めて、労働時間を正しく記録しているか
- 割増賃金(残業・休日・深夜)を正しい単価で計算しているか
- 常時10人以上の事業場で、就業規則を作成・届出しているか
- 定期健康診断を実施し、記録を残しているか
- 出勤簿・賃金台帳などの帳簿がそろっているか
一つずつ確認するだけでも、指摘されるリスクは大きく下がります。自社の就業規則から見直したい方は、建設業の就業規則作成のページをご覧ください。ひな形のまま運用していて不安な方は、ひな形のままだと危ない5つの落とし穴もあわせて参考になります。当事務所では、こうした就業規則や36協定の整備を顧問の基本料金内で行っています。時間外労働の上限への対応、移動時間の扱いの整理、出張手当の設計といった建設業特有の論点は、毎月のように扱っている実務です。指摘を受ける前に自社の状態を確かめたい方は、Zoom30分の無料相談で一緒に点検できます。最新の制度は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 時間外労働の上限について(36協定・厚生労働省 スタートアップ労働条件): https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/36_pact.html
- 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
よくあるご質問
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