日給の職人にも有給は必要?建設業の有給休暇・賃金計算と雨の日の扱い
日給の職人にも、雇入れから6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤すれば年次有給休暇が発生し、有給の日の賃金は就業規則などで定めた通常の賃金・平均賃金などの方式で支払います。年10日以上付与される人には、基準日から1年以内に5日を取得させる義務があります。会社が決めた雨天休業日を事後に一方的に有給へ変えることはできず、有給を充てるなら労使協定による計画的付与で本人が自由に使える5日を残して事前に取得日を決めます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員6人の左官会社。朝、道具を積み込む前に若手から「有給って、法律で決まってますよね」と声をかけられる。「職人は日給やから有給はない」とずっと説明してきた社長は、返す言葉に詰まります。窓の外には雨雲。「雨で現場が休みの日を有給にすれば、給料の話も年5日の話も片付くのでは」。こんな場面を想像してみてください。日給でも有給は発生します。ただし、雨天休業の処理と有給の取得は分けて考える必要があります。この記事では、誰に何日与え、いくら払い、現場の予定とどう組み合わせるかまで順番に整理します。
日給の職人にも有給は発生しますか?何日与えればよいですか?
「社員は月給、職人は日給だから別」。給与台帳を分けていても、有給休暇の対象から外れるわけではありません。会社に雇われて働く職人には、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると、年次有給休暇が発生します。日給は賃金の計算方法であって、「有給なし」にする理由にはなりません。
通常の付与日数は次のとおりです。その後も、各判定期間の出勤率8割以上が条件になります(※2026年9月時点)。
| 入社からの継続勤務期間 | 新しく付与する日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
一方、週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下の人には、勤務日数に応じて少ない日数を与える「比例付与」が適用されます。所定とは、あらかじめ働くと決めた時間・日数のことです。週以外の期間で労働日数を決める場合は、年間216日以下が対象になります。
| 週の所定労働日数 | 入社6か月時点 | 入社6年6か月以上 |
|---|---|---|
| 4日 | 7日 | 15日 |
| 3日 | 5日 | 11日 |
| 2日 | 3日 | 7日 |
| 1日 | 1日 | 3日 |
この表は週30時間未満の人の抜粋です。間の勤続年数にもそれぞれ付与日数があり、両端の数字だけで運用しません。週4日でも1日8時間なら週32時間なので、通常の表を使います。条件と日数表は厚生労働省の案内で確認できます(※2026年9月時点)。
「今月は雨が多くて出勤が少なかった」という事情だけで、契約上の勤務日数を減らして比例付与にすることも避けます。まず6人の入社日、決めている勤務日数・時間、出勤記録を並べてください。「あの人は何日だったか」を社長の記憶に頼らず答えられるようになります。
日給の職人が有給を取った日は、いくら払えばよいですか?
給料日前、職人から「休んだら、その日の日当は引かれるんですか」と聞かれる。有給の日は無給の欠勤とは違い、賃金を支払います。ただし、金額の決め方は会社が採用している方式によって変わります。
| 方式 | 有給1日分の考え方 | 整えるもの |
|---|---|---|
| 通常の賃金 | 決められた労働時間を働いた場合に払う賃金 | 就業規則・賃金規定など |
| 平均賃金 | 原則、直前3か月の賃金総額を暦日数で割る。日給制には最低保障の計算もある | 就業規則・賃金規定など、算定資料 |
| 標準報酬日額に相当する額 | 健康保険の標準報酬を基にする額 | 就業規則などに加え、労使協定 |
労使協定とは、会社と、従業員の過半数で組織する労働組合、または組合がなければ過半数代表者との書面の取り決めです。過半数代表者は、従業員の過半数を代表する人を指します。現場に散っている職人から代表者を選ぶ手順例は就業規則の届出と過半数代表者の選び方で紹介しています(選ぶ目的は、結ぶ協定に合わせて明らかにします)。どの方式で払うかは先に決め、休むたびに安い方式へ切り替えないことが大切です。
日給1万2,000円なら、どう計算しますか?
以下は仕組みを比べるための架空の計算例です。所定労働時間分の日給が1万2,000円、算定期間は暦日90日、実際に働いた日は60日、賃金総額は72万円とします。手当・残業代などはなく、算定から除外する期間もない単純な条件です。
- 通常の賃金方式:有給1日分は1万2,000円。
- 平均賃金方式の原則計算:72万円÷90日=8,000円。
- 日給制の最低保障額:72万円÷60日×60%=7,200円。
- 平均賃金方式で支払う額:比較して高い8,000円。
同じ日給でも、この例では支払額に差が出ます。通常の賃金方式なら「有給の日も所定時間分の日給を払う」と説明できます。平均賃金方式なら、計算の根拠と金額まで伝えておかないと、職人が思い描く「いつもの日当」と食い違います。
ここでの60%は、日給制の平均賃金を計算する際の最低保障です。「有給は日給の6割だけ払えばよい」という意味ではありません。 実際には手当の構成や算定期間などを確認して計算します(※計算制度は2026年9月時点。金額は説明用の仮定)。
日給を時間単価に直す方法や欠勤控除・残業代の整理は、日給月給の賃金規定にまとめています。有給の金額も同じ賃金規定にそろえると、給与担当者が変わっても説明がぶれません。
年5日の取得義務は、誰を対象にどう管理すればよいですか?
秋の工程表を開いてから「この人、まだ1日も休んでいない」と気付く。少人数の会社では、その時点から休みを組むのが難しくなります。
年10日以上の法定の有給休暇が付与される人には、基準日から1年以内に5日を取得させる義務があります。基準日は、有給が付与される日のことです。全員を会社の年度末で区切るとは限りません。比例付与の人も、新たな付与日数が10日以上になれば対象です(※2026年9月時点)。
取得方法は、本人の申請、労使協定による計画的付与、会社による時季指定の3つです。時季指定とは会社が取得日を決めることですが、事前に本人の意見を聴き、希望を尊重するよう努める必要があります。
たとえば本人の申請で2日、計画的付与で2日取得済みなら、確保すべき残りは1日です。合計5日を取得した人に、この義務を理由としてさらに5日を指定する制度ではありません。また「年5日しか有給を使わせなくてよい」という上限でもありません。
義務を満たさない場合には、30万円以下の罰金の対象となります(※2026年9月時点)。「本人が取りたがらなかった」だけで会社の義務がなくなるわけではありません。
管理簿には、何を残しますか?
年次有給休暇管理簿は、従業員ごとに基準日・取得した日付・日数を明らかにする記録です。必要事項に加えて、次の欄を置くと毎月の確認に使えます。
| 管理する欄 | 使い道 |
|---|---|
| 基準日と取得期限 | 誰がいつまでに5日必要かを確認する |
| 新たな付与日数・繰越日数 | 対象者と使える日数を把握する |
| 実際の取得日・取得日数 | 年5日の進み具合を確認する |
| これからの取得予定 | 工程表に先に反映する |
「予定を入れた日」と「実際に休んだ日」は分けます。予定日に出勤していたら、取得実績として数えられません。管理簿は対象期間中に管理し、その期間の満了後も、当分の間は3年間保存が必要です。厚生労働省の管理簿Q&Aにも保存と記載事項が示されています(※2026年9月時点)。
給与締めのときに管理簿も見れば、工程が埋まる前に「来月、いつ休めそうか」を本人に聞けます。期限直前に全員分を数える作業を、毎月の短い確認に変えられます。
雨で現場が休みになった日を、会社が有給にしてもよいですか?
朝に「今日は雨で中止」と連絡し、月末になって「この日は有給にしておいた」。このような事後の一方的な処理はできません。休業手当の負担や年5日の不足を、有給の残日数を減らすことで解決しないようにします。
まず区別したいのは、「働く予定の日に本人が有給を申請すること」と「会社が休業を決めた日」です。厚生労働省のQ&Aでは、所定休日や休業日など、すでに労働義務のない日には年休を取れないと説明しています。休業を決めた後で、申請書だけ出してもらえば済む、という運用にはしません。
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| まだ勤務予定で、本人から有給の申請がある | 本人の申請として、通常の年休の手続きで扱う |
| 会社がすでに雨天休業を決めている | 有給へ自動的に置き換えず、休業の賃金の扱いを判断する |
| 過ぎた雨天休業日を会社がまとめて有給にする | 事後に一方的に処理しない |
| あらかじめ計画的付与日を決めている | 労使協定・勤務カレンダーに沿って運用する |
年5日のための会社の時季指定も、本人の意見を事前に聴く手続きが必要です。「社長が日を決められる制度があるから、昨日の雨休みも有給にできる」とは考えません。
雨天休業の賃金は、会社都合か不可抗力かなどで判断が分かれます。線引きや休業手当の計算は雨で現場が休みになった日の給料で詳しく解説しています。中止の連絡と給与の処理を同じルールで扱えば、給料日に「あの日、勝手に有給が減っている」と言われる事態を防げます。
計画的付与なら、雨の季節やお盆・年末年始と組み合わせられますか?
元請の工程表で、お盆前後に現場が動かない日が見えている。そこで来季の勤務カレンダーを作る段階から、職人の休暇も一緒に組む方法があります。これが「計画的付与」です。
労使協定を結ぶことで、各人が持つ有給のうち5日を超える部分について、取得時季をあらかじめ決められます。本人が自由に取得する分として5日を残す仕組みです。繰越分がない人なら、10日付与のうち計画に組めるのは5日、20日付与なら15日までです(※2026年9月時点)。
全員が同じ日に休む方法だけでなく、班ごとに交替する方法、個人ごとに計画を立てる方法もあります。左官の仕上げ日が班によって違うなら、一斉に休む形にこだわらず、工程に合う方式を選びます。
お盆や雨の季節には、どう使いますか?
- お盆・年末年始:元請の休工予定と自社の勤務カレンダーを照合し、労働日に計画年休を設定して連休につなげます。
- 雨の多い季節:工程に余裕を見込める時期を候補に、取得日を前もって調整します。「雨が降った当日を自動的に有給にする」という包括的な扱いにはしません。
- 有給がない・少ない入社直後の人:一斉に休む計画に含める前に、特別有給休暇を設けるなど、その人の休みと賃金を別に設計します。
もともとの所定休日に有給を重ねることはできません。 既存の休日を労働日に変えて計画年休を充てる設計は、従業員の条件が悪くならないかも含めて検討する必要があります。カレンダーの色だけを塗り替える話ではありません。土曜や休日の配置を年間カレンダーで組み直す場合は、建設業の1年単位の変形労働時間制も確認してください。
中峯社労士事務所の「年5日の有給、うちの職人は取ってくれない」を解いた事例では、従業員との話し合いを前提に、お盆・年末年始の一部を活用して年5日の取得を達成しました。労使協定や自由取得分の確保に加え、納得を得る工夫として特別休暇を別途設ける提案、日給制でも有給の日は賃金が支払われることの説明を紹介しています。
特別休暇を何日設けるかまで、法律が一律に決めているわけではありません。自社の休日・有給残日数・賃金を並べて設計することで、社長は現場の人数を早めに読め、職人も家族との予定を立てやすくなります。
就業規則にはどう書き、何から整えればよいですか?
若手からまた有給の話が出たとき、「調べておく」で終わらず、本人の日数と1日分の金額を見せられる。その状態を先に作りましょう。整える順番は次のとおりです。
- 対象者と日数を確定する:入社日・勤務条件・出勤記録・これまでの取得を確認する。
- 支払方法を確認する:今の賃金規定と実際の計算を照らし合わせる。
- 取得の手順を決める:本人の申請先、会社の時季指定、計画的付与を分けて定める。
- 管理簿と工程表をそろえる:取得期限と予定を共有し、実際に休んだ日を毎月記録する。
次は、通常の賃金方式を採用する場合の短い規定例です。付与日数表や申請手続きは別に整え、既存の労働条件に合わせて調整してください。
規定例①|有給休暇中の賃金
年次有給休暇を取得した日については、所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
規定例②|会社による時季指定と計画的付与
年次有給休暇が10日以上付与される従業員について、付与日から1年以内の取得が5日に満たない場合は、不足日数について、会社があらかじめ本人の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めた上で取得時季を指定する。本人の申請(時間単位で取得したものを除く)または計画的付与による取得日数は、その5日から控除する。
労使協定を締結した場合は、各従業員の有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、協定に定める時季に取得させることがある。
規定例②は、期限が過ぎてから不足分を処理するという意味ではありません。期限内に実際の取得を確保するための規定です。また、この条文だけで計画的付与の労使協定を代用することはできません。
自社の日給や雨天休業と合わせた整理は、建設業の就業規則作成をご覧ください。当事務所では、就業規則の作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。Zoom30分の無料相談では、今の勤務カレンダーや給与の計算方法を基に、自社では何から直すかを一緒に整理できます。「有給はあるのか」と聞かれるたびに迷う状態から、日数・賃金・取得日を同じ資料で説明できる状態へ整えていきましょう。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 年次有給休暇取得促進特設サイト・事業主の方へ(厚生労働省): https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/jigyousya.html
- 年次有給休暇をとる条件は?パート労働者でももらえますか?(厚生労働省): https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/yukyu/q1.html
- 年休取得管理簿の作成・保管の留意点(厚生労働省): https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/yukyu/q5.html
- 年次有給休暇を上手に活用し働き方・休み方を見直しましょう(厚生労働省・労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/002379427.pdf
- 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463186.pdf
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