通年雇用助成金は建設業でいくら?対象地域・届出の時期と、1年出し忘れで途切れる落とし穴
通年雇用助成金は、北海道・東北などの指定地域で冬に仕事が減る建設業などの事業主が、季節の職人を冬も雇い続けると受けられる助成金です。冬に働かせた場合は対象期間の賃金の2分の1(1回目は3分の2)、休業させた場合は休業手当と賃金の合計の2分の1(2回目は3分の1)で、上限は1人54万円(1回目は71万円)。同じ職人で3回まで・3年連続が条件で、通年雇用届は12月16日〜1月31日。1年出し忘れると連続が切れ、ハローワークから催促は来ません(※2026年10月時点・令和8年度)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員8人の土木会社。11月の終わり、今年最後の舗装を終えた夕方に、社長が事務所の棚から去年のファイルを引き出します。探しているのは、去年の冬に初めて出した「通年雇用届」の控えです。季節で雇っている職人5人を、去年は冬の間も雇い続けました。1月と2月は休業手当を払い、3月は除雪と倉庫の片付けに出てもらい、春には同じ5人で着工できた。今年も同じ段取りのつもりですが、「届は何日までだったか」「春先に常用の若手が1人辞めたが、人数に響くのか」「去年の分の支給申請は、6月に出したのだったか」が、どうしても思い出せません。ハローワークからは、何の案内も届いていません。通年雇用助成金は、同じ職人について3回までしか受けられず、その3回は3年続いていなければならない制度です。そして1年出し忘れても、役所から催促は来ません。この記事では、対象になる地域・業種・職人、建設業で1人いくらになるか、通年雇用届と支給申請の時期と添付書類、冬に常用の職人が辞めると支給人数が減る仕組み、休業助成の落とし穴、不支給と返還の決まり、本州の現場へ職人を出す会社の移動就労経費まで、令和8年4月1日現在の支給要領に沿って整理します(※2026年10月時点)。雪の日の休業手当・除雪の残業・季節雇用の契約・特例一時金まで含めた冬の全体像は冬期休業・季節雇用・33条の届と就業規則にまとめていますので、この記事は助成金だけを深く掘ります。

通年雇用助成金は、どの地域・どの業種の、どの職人が対象ですか?
通年雇用助成金は、積雪や寒冷の度合いが特に高い「指定地域」で、季節の影響を強く受ける「指定業種」を営む事業主が、冬に離職して特例一時金を受けるはずだった季節労働者を冬も雇い続けた場合に受けられる助成金です。財源は、事業主が全額を負担している雇用保険二事業。つまり、社長が毎年納めている雇用保険料の事業主負担分が元になっています。申請しなければ戻ってこない点は、ほかの雇用関係助成金と同じです。令和8年度も存続していて、現行の支給要領は令和8年4月1日現在のものです(※2026年10月時点)。
北海道労働局の公表によると、令和6年度の北海道の季節労働者は30,365人で全国の58%を占め、そのうち建設業が13,424人(44.2%)です。昭和55年度には300,237人いたので10分の1まで減りましたが、今も季節労働者の半分近くが建設業の職人で、この制度が事実上「雪国の建設会社のための助成金」になっている理由がここにあります。
対象地域は13道県。全市町村が対象なのは4道県だけです
| 区分 | 道県 |
|---|---|
| 全市町村が指定地域 | 北海道・青森県・岩手県・秋田県 |
| 市町村や旧町村の単位で一部だけ指定 | 宮城県(加美郡の旧小野田町・旧宮崎町、大崎市の旧鳴子町など)、山形県(米沢市など)、福島県・石川県(いずれも一部の市町村)、新潟県(魚沼市・南魚沼市・佐渡市・湯沢町・津南町・岩船郡など)、富山県(上市町・立山町・朝日町など)、福井県(大野市)、長野県(軽井沢町など)、岐阜県(高山市など) |
市町村名は支給要領の別表第1からの抜粋です。「旧」の付く名称は昭和27年4月1日または昭和57年4月1日時点の区域を指すので、合併後の市の一部だけが対象、という形があります。北陸や信越の会社は「隣町が対象だからうちも」と考えず、所在地の市町村名(合併前の町村名まで)を別表第1で照合してください。
建設業のほか、現場で据付をする製造業も指定業種です
指定業種は11業種で、「建設業」はそのひとつです。ほかに、採石業や砂・砂利・玉石の採取業、セメント製品製造業、そして建設現場で据付作業を行う造作材・建具・鉄骨・建設用金属製品・金属製サッシ・ドア・畳などの製造業も指定されています。建具や鉄骨の加工場を持ち、職人が現場で据付まで行う会社は、製造業として申請できる余地があります。
対象になる職人は「冬に離職すれば特例一時金を受けるはずだった季節の職人」です
対象になるのは、その年度の9月16日以前から続けて雇っていて、冬も雇い続けなければ1月31日に特例一時金(季節労働者の失業給付で、基本手当日額の40日分)を受ける見込みの季節労働者です。申請の回数で次の3つに分かれ、同じ会社・同じ職人で3回が限度、その3回は3年連続でなければなりません。
| 回数 | 区分 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 1回目 | 新規継続労働者 | 前年度の2月1日〜3月15日に同じ会社で雇われていなかった/前年度の10月1日〜1月31日に失業給付を受けた/前年度に初めて対象になり3月16日以後に離職した、のいずれか |
| 2回目 | 継続労働者 | 1回目の支給を受けた職人を、引き続き雇っている |
| 3回目 | 再継続労働者 | 2回目の支給を受けた職人を、引き続き雇っている |
役員や部課長などの主な役付者、本社の事務員や設計士は対象外です。一方、建設業の棒頭・世話役・現場主任と呼ばれる人は、管理監督の立場に見えても現場作業に就き、入離職に季節の影響を強く受けるため、申請対象労働者にできます。現場付属の事務員も、季節性があれば対象になります。なお、すでに一年中雇っている常用の職人を、そのまま対象にすることはできません。常用の職人は「支給される人数」の計算の方で関わってきます(後述)。
職人の側から見ると、冬に離職して特例一時金を受けて春を待つ道と、冬も雇われ続ける道の分かれ目にいる人が対象です。冬も雇用が続けば、給料日が来て、健康保険証が切れず、勤続も途切れません。離職する道を選ぶ場合の会社の手続きと金額の目安は季節雇用の職人の特例一時金で整理しています。
建設業では1人いくらもらえますか?支給額・対象期間・回数の決まり
冬に働かせた場合と、休業させた場合で、助成の元になる額と割合が違います。上限はどちらも1人54万円(1回目の新規継続労働者は71万円)です(※2026年10月時点・令和8年4月1日現在の支給要領)。
| 冬の取り組み | 助成の元になる額 | 割合 | 1人あたりの上限 |
|---|---|---|---|
| 事業所の中や外で働かせる(除雪、倉庫や工場での作業、他社の現場など) | 対象期間に払った賃金(臨時に払った賃金を除く) | 1回目(新規継続労働者)は3分の2、2回目・3回目は2分の1 | 71万円(1回目)/54万円 |
| 休業させる | 休業手当(60日分まで)と、対象期間に払った賃金(休業手当を除く)の合計 | 1回目は2分の1、2回目は3分の1 | 71万円(1回目)/54万円 |
対象期間はおおむね12月16日から翌年3月15日までで、助成の元になる賃金は「12月の賃金締切日の翌日から3月の賃金締切日までに払った賃金」です。3か月を超える期間ごとに払う賃金(冬のまとめ払いの手当など)は、最も高い1回分だけ入れられます。休業の助成は、3回のうち2回が限度です(こちらは連続していなくてもかまいません)。
計算例:月給30万円の職人を冬も雇い続けた場合
計算例です。月給や休業手当の額は仮の数字で、端数や賃金締切日の位置で変わるので、おおよその額として読んでください。
- 月給30万円の職人を、1回目(新規継続労働者)として冬の間、除雪と倉庫作業に出した場合:対象期間の賃金 約90万円 × 3分の2 = 60万円。上限71万円の中なので、おおよそ60万円。
- 同じ職人の2回目(継続労働者):約90万円 × 2分の1 = 45万円。上限54万円の中なので、おおよそ45万円。
- 1回目で、1月と2月に合計40日休業させ、休業手当(平均賃金の60%以上)の合計が24万円、残りの日に払った賃金が36万円だった場合:合計60万円 × 2分の1 = 30万円。2回目なら3分の1で20万円。
冬に払う人件費の半分が戻る、と考えるのは早いことが分かります。休業させる形は働かせる形より割合が低く、2回目には3分の1まで下がります。除雪や倉庫作業など、冬に本当に用意できる仕事を先に数えた方が、助成の額も職人の手取りも大きくなります。
北海道労働局が公表している数字では、令和6年度に北海道で通年雇用助成金を受けた事業所は2,273、対象の労働者は4,495人、支給額は約23億円(2,305,743,269円)で、そのうち建設業が2,176事業所・4,343人です。支給額の約97%が建設業で、1人あたりにならすとおおよそ51万円になります(割合と1人あたりの額は当方の計算)。前年度(令和5年度)は2,452事業所・4,778人でしたから、使う会社は少しずつ減っています。それでも1人50万円前後が動く制度を、届出1枚の有無で落とすのはもったいない、という額です。
このほか、職人を冬の別の仕事に移す業務転換(上限71万円)、新しい分野に出る新分野進出(設置・整備費用の10分の1・上限500万円)、職業訓練(経費の2分の1または3分の2で、1人あたりの上限は季節業務の訓練3万円・一般業務の訓練4万円)、季節トライアル雇用(上限71万円)の助成もあります。
冬に本州の現場へ職人を出す会社は、移動就労経費の上乗せも使えます
雪で地元の現場が止まる間、関東や関西の元請の現場へ職人を連れて行く会社があります。指定地域の外の現場で冬に働かせ、会社が往復の交通費・途中の宿泊料・移転料を負担した場合、移動就労経費の助成が次の額を上限に上乗せされます(令和10年3月15日までの措置・※2026年10月時点)。
| 移動の距離(ハローワークの所在地どうしの鉄道距離) | 上限 |
|---|---|
| 400km以上800km未満 | 30,000円 |
| 800km以上1,200km未満 | 60,000円 |
| 1,200km以上1,600km未満 | 90,000円 |
| 1,600km以上2,000km未満 | 120,000円 |
| 2,000km以上 | 150,000円 |
400km未満は対象外です。もうひとつ、この形には審査があります。移動先で「適正な請負」として事業を行ったかどうかを、主な機械と材料のリース・購入・運搬の契約書などの写しで確かめられます。職人だけを送り込み、機械も材料も段取りも元請任せ、という形だと請負として見てもらえないおそれがあるので、機械と材料を自社で手配し、自社の職長が段取りを握る形を、契約書の段階から整えておきます。職人に払う出張手当・宿泊費の決め方は建設業の出張手当・日当の相場と決め方、長い移動の時間を労働時間に数えるかは現場への移動時間は労働時間?で整理しています。
通年雇用届はいつ・どこに・何を添えて出しますか?1年出し忘れるとどうなりますか?
今年の冬(令和8年度)なら、令和8年12月16日から令和9年1月31日までの間に、所在地を管轄する労働局長へ「通年雇用届」などを出します。電子申請なら、雇用関係助成金ポータルの計画届で出せます。日付の流れを一冬分並べると次のとおりです(※2026年10月時点・令和8年4月1日現在の支給要領)。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 12月15日 | 常用の職人(継続雇用労働者)の人数を数える基準日。初めて申請する会社はこの人数が「基礎数」になる |
| 12月16日〜1月31日 | 通年雇用届などを管轄の労働局長へ提出(電子申請可)。届に不備があり、補正期限までに直さないと助成金は支給されない |
| 12月16日〜3月15日ごろ | 対象期間。冬の仕事(除雪・倉庫・他社の現場)や休業を実施。賃金は12月の賃金締切日の翌日から3月の賃金締切日までの分が助成の元 |
| 3月15日 | 常用の職人の人数を数える、もうひとつの基準日 |
| 3月16日〜翌年度6月15日 | 支給申請(働かせた場合)。休業させた場合は、対象の休業手当の額が確定した日から6月15日まで |
| 翌年度12月15日 | 継続雇用予定期限。これより前に会社の都合で離職させると、原則として返還 |
添える書類で建設業の会社に特有なのは、冬に仕事があることの証明です。支給要領は、就労の見込みを「工事請負契約書の写し、元請事業主の証明等」で示すよう求めていて、北海道労働局のチェックリスト(令和8年4月)には「対象期間内の工事(生産)見込証明書(原本)」「請負契約書や注文書等」「継続雇用労働者名簿(12月15日・3月15日現在)」が並びます。建設業許可を受けている会社は許可を証する書面を添えますが、前回から変わっていなければ添付を省き、届の欄外に許可番号と許可年月日を書く形で足ります。元請に冬の工事の見込みを証明してもらうには相手の事務の都合もあるので、12月に入ってから頼むのでは間に合わないことがあります。11月のうちに「12月16日に出す届に、この現場の見込証明が要る」と伝えておくのが実務的です。
就業規則、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳などを整え、労働局長から求められたらすぐ出せる状態にしておくことも、支給の条件に入っています。窓口は所在地を管轄する労働局またはハローワークで、北海道では令和7年4月1日から札幌圏の受付が雇用助成金さっぽろセンターに集約されています。ほかの道県の窓口は、各労働局の案内で確かめてください。北海道労働局は、例年、春繁期(4〜6月)は窓口が大変混雑すると案内しているので、支給申請は3月16日に出せる形で3月中に書類をそろえておくと待たされません。
1年出し忘れると、連続が切れます。催促は来ません
一番の落とし穴がここです。厚生労働省の事業主向けの案内(Q&A)は、前年度分の支給申請を期限内に出さなかった場合について、支給の要件を満たしていても、継続して雇用しているかどうかの確認が取れないため支給できない、と答えています。そして、ハローワークから事業所へ「申請書を提出してください」といった連絡をすることはないので、事業所側で管理して翌年度の申請を忘れないように、と続きます。
同じ職人について3回が限度で、その3回は3年連続でなければなりません。2年目の届や申請を出し忘れると、2年目の分が出ないだけでなく連続が切れ、その職人について残りの回を受けられなくなるおそれがあります(扱いは管轄の労働局で確認してください)。冒頭の社長が「去年の支給申請は6月に出したのだったか」と思い出せなかったのは、怠慢ではなく、催促が来ない仕組みの中で段取りを頭の中だけに置いていたからです。直し方は簡単で、「12月15日 名簿」「12月16日 届」「3月16日 支給申請」「6月15日 申請期限」の4つを、年間カレンダーに職人の名前と一緒に3年分書き込んでおくことです。助成金全般の年間の段取りは助成金の年間活用計画にまとめています。
冬に常用の職人が辞めると、支給される人数はなぜ減るのですか?
通年雇用助成金は、季節の職人を冬も雇ったかどうかだけでなく、一年中雇っている常用の職人の人数も見ています。季節の職人を冬も雇う代わりに常用の人を減らしたのでは、通年雇用が増えたことにならないからです。支給対象になる人数は、次の式で決まります。
支給対象労働者の数 = 申請対象労働者の数 −(基礎数 − その年度の3月15日現在の継続雇用労働者の数)
継続雇用労働者とは、常用として雇い入れて雇い続けている職人、有期から常用に変わった職人、届出年度の3年度前の9月16日以前から続けて雇っている有期の職人です。管理監督者、季節的な業務以外の業務の人、現場に付属しない事務所の事務員は数えません。基礎数は、初めて申請する会社では「その年度の12月15日現在の継続雇用労働者の数」です。カッコの中が負(3月15日に増えている)なら0として扱います。
計算例で見ます。
- 12月15日に常用の職人が5人(基礎数5)、季節の職人3人を冬も雇い続ける(申請対象労働者3人)。
- 3月15日も常用が5人のまま:3 −(5 − 5)= 3人が支給対象。
- 1月に常用の若手が1人、自己都合で辞めて3月15日に4人:3 −(5 − 4)= 2人。季節の職人は3人とも冬も雇ったのに、支給は2人分です。
- 反対に常用が1人増えて6人:カッコの中は負なので0、3人全員が支給対象。
支給対象が申請した人数より少なくなった時は、①支給額の高い職人、②申請回数の少ない職人、の順に選ばれます。厚生労働省のQ&Aも、対象期間中(12月15日〜3月15日)に常用の労働者が自己都合で辞めると、3月15日現在の継続雇用労働者の数が減り、支給対象労働者数の算定に変更が生じる可能性があると答えています。支給申請を出した後に辞めた場合は影響しません。
2回目以降は、初めて申請した年度の12月15日現在の人数に、過去に通年雇用へ切り替えて支給が確定した職人のうち初回の申請が3年以上前の年度だった人の数の3分の1(1人未満は切り捨て)などを足した数が基礎数になります。通年雇用に切り替えた職人が、3年たつと3分の1ずつ「常用の基準」に積み上がっていく、と覚えておけば十分です。直前の3年度以上、支給を受けていない会社は、その年の12月15日現在の人数に戻ります。
ここで気をつけたいのは、この式を「常用の職人を辞めさせないように縛る」方向に使わないことです。冬の間に常用の若手が辞める理由の多くは、冬の収入が見えないことや、春までの働き方が示されないことにあります。12月に入る前に「冬はこの仕事で、この給料」と常用・季節の両方の職人へ示しておくことが、結果として3月15日の人数を守ります。
冬に休業させる場合の助成は、どこでつまずきますか?
休業させる形は、冬の仕事を用意しなくてよい分だけ条件が細かく、落ちやすい所が6つあります(※2026年10月時点・令和8年4月1日現在の支給要領)。
- 丸一日の休業だけが対象です。 休業とは「所定労働日の全一日にわたり労働することができない状態」で、午前だけ働いて午後は休業、という部分休業は対象になりません。病気や休職、ストライキ、有給休暇、配置転換、出向の日も休業には当たりません。
- 休業手当が労働基準法26条どおりであること。 平均賃金の60%以上の休業手当を払っていることが条件です。会社側の事情による休業を、日給だから無給、と処理していると、助成どころか手当の未払いになります。雨の日と同じ考え方で、雨で現場が休みになった日の休業手当に計算例があります。
- 1人につき60日以内。 1月1日から数えて60日以内の休業が対象で、支給対象になる休業の措置は令和10年4月30日までです。60日を超えた休業に休業手当が要らなくなる、という意味ではありません。
- 対象期間中に離職すると、理由を問わず対象外。 対象の職人が12月16日から4月30日までの間に離職した場合、本人の都合でも会社の都合でも、休業の助成は受けられません。
- 1人でも休業の助成を使うと、事業所全体の申請時期が変わります。 支給申請書の提出は1年度につき1事業所1回で、申請対象労働者の中に1人でも休業の助成を使う人がいると、その事業所の提出期間は休業の提出期間(休業手当の額が確定した日から6月15日まで)になります。働かせた職人の分だけ先に3月16日に出す、という形にはなりません。
- 休業の助成は2回まで。 3回のうち休業で受けられるのは2回が限度です。3年のうち1年は、冬の仕事を用意する形で組む必要があります。
休業手当にも健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料はかかり続け、等級は夏の給料で決めたまま3か月を超えるまで変わらないので、職人の手取りの見込みは冬の休業中の給料と社会保険料で確かめてください。また、休業は所定労働日に休ませた日を指すので、1年単位の変形労働時間制で冬を最初から休日にした日は、ここでいう休業には入りません。冬を休日として組むか休業にするかの比べ方は雪の多い地域の1年単位の変形労働時間制で整理しています。
法令違反や未払いがあると、不支給や返還になるのはどんな時ですか?
1月の夜、町から「朝までに路線を開けてほしい」と電話が入り、職長とオペレーターが明け方まで除雪に出る。この夜が月に何度も重なって36協定の上限を超え、33条の届も出していなかった、という状態は、残業の問題で終わりません。通年雇用助成金の不支給の決まりに、支給申請日の前日から1年前の日までの間に労働関係法令の違反があった事業主、労働保険料を納めていない事業主、が入っているからです。除雪の残業の収め方(36協定・災害復旧の協定・33条の届)は親記事の除雪の節と建設業の36協定の書き方で解説しています。今の残業が上限に収まっているかは時間外労働の上限規制チェックリストで点検できます。
未払いにも決まりがあります。支払期日までに払っていない賃金があると支給の判定は保留され、最終の支払期日から1か月以内に払われなければ不支給です。冬の資金繰りで給料日を遅らせると、助成金の方が先に止まります。
受け取った後にも落とし穴があります。
- 返還:助成金を受けた職人は、翌年度の12月15日(継続雇用予定期限)まで雇い続けることが前提で、それより前に離職させると原則として返還を求められます。天災、本人の死亡、本人の都合による離職、その他やむを得ない理由なら免除されることがありますが、本人都合でも、特定受給資格者や特定理由離職者に当たる場合は免除の対象から外れます。春に仕事が始まったら季節の職人を入れ替える、という運用とは両立しません。
- 申し出:対象の職人が転勤・離職する時は、転出届や資格喪失届をハローワークに出す際に「助成金の申請対象労働者である」と申し出ます。これを怠ると、後になって不正受給の疑いを持たれることがあります。
- ほかの助成金との重なり:同じ理由で雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金などを受けている場合、通年雇用助成金が支給されないことがあります。建設業で使う助成金の全体像は建設業で使える雇用関係助成金一覧、不支給になる典型は助成金が不支給になるパターンにまとめています。
何から手を付ければいいですか?
北海道では、厚生労働省北海道労働局の委託で、市町村の季節労働者通年雇用促進協議会が通年雇用促進支援事業を行っていて、石狩市では令和8年度、特定社会保険労務士による個別訪問相談などを無料で受けられます。ほかの市町村での実施の有無は確認できていないので、所在地の市役所・町役場に「通年雇用促進協議会」があるかを一度聞いてみてください。
その上で、冬の前(10〜11月)にやることを順番に並べます。
- 所在地を別表第1で照合する。 北海道・青森・岩手・秋田以外の会社は、合併前の町村名まで確かめる。
- 職人を仕分けする。 9月16日以前から雇っている季節の職人を1回目・2回目・3回目に分け、常用の職人の人数(12月15日現在の見込み)を数える。
- 冬の仕事と休業を決める。 除雪・倉庫・工場・他社の現場で「誰に何日分あるか」を書き、残りを休業にするなら60日・丸一日・休業手当60%以上で組む。本州の現場へ出すなら、請負の形と移動費を契約書の段階で固める。
- 元請に見込証明を頼む。 12月16日に出す届に添える工事の見込証明と請負契約書・注文書を、11月のうちに頼んでおく。
- 36協定と帳簿を整える。 除雪の残業が協定の中に収まる形か、就業規則・労働者名簿・出勤簿・賃金台帳がすぐ出せるかを見る。
- 4つの日付をカレンダーに書く。 12月15日の名簿、12月16日の届、3月16日の支給申請、6月15日の申請期限を、職人の名前と一緒に3年分。
整えた先で、毎日はこう変わります。
- 仕組みとして:通年雇用助成金は、季節の職人を冬も雇い続けた会社に、冬の賃金と休業手当の一部を3年にわたって戻す制度です。
- だから会社は:冬の人件費のうち戻る分と自分で持つ分を、11月の時点で分けて見積もれます。春に職人を探し直す時間がなくなり、着工の段取りを去年と同じ顔ぶれで組めます。
- 社長の毎日は:11月の夕方にファイルの棚を探る代わりに、カレンダーの「12月16日 届」の横に書いた5人の名前を見て、去年の名簿を写すだけになります。6月の申請期限を過ぎてから思い出す、ということが起きません。
- 職人の毎日は:冬も給料日が来ます。休業の月は休業手当、除雪に出た月はその賃金が入り、健康保険証は切れず、年金の月数も勤続も途切れません。春にハローワークへ行って仕事を探す代わりに、去年と同じ現場に戻る日が決まっています。
会社は助成金で冬の人件費を支え、職人は冬も雇用と収入が続く。通年雇用助成金は、労使のどちらにも良い形を国が後押しする仕組みで、当事務所の直し方もその線で組みます。
通年雇用助成金は、同じ職人について3回・3年連続という設計なので、1年ごとの単発の申請代行より、3年分をまとめて段取りする方が向いています。中峯社労士事務所には助成金の専門対応部署があり、顧問料とは別枠の助成金プラン(3年契約・人数別の月額)で、通年雇用届から3年目の支給申請までを設計します。3年間完走して、3年間のお支払い合計(基本料金+助成金プラン料金)が受給額を上回った場合は差額を返金します(返金保証。※2026年10月時点・詳細は料金ページ)。サポートの全体像は建設業の助成金サポートをご覧ください。支給要領が整備・保管を求めている書類のうち、就業規則と、除雪の残業を収める36協定は、建設業の就業規則作成として顧問の基本料金内で整えます。労働者名簿・出勤簿・賃金台帳も、申請の時にすぐ出せる形になっているかを一緒に確かめます。雪国の会社でも、オンラインでやり取りしながら進められます(遠方の社労士に頼む流れ)。「うちの所在地は対象か」「この5人は何回目か」「冬の仕事は何日分あるか」の3点を手元に、Zoom30分の無料相談で一緒に仕分けできます。
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参考(一次情報)
- 通年雇用助成金(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tsuunen_koyou.html
- 雇用関係助成金支給要領・通年雇用助成金〔令和8年4月1日現在〕(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001470776.pdf
- 通年雇用助成金制度 その利用の仕方(厚生労働省職業安定局・令和7年10月1日現在): https://www.mhlw.go.jp/content/001335659.pdf
- 通年雇用助成金 チェックリスト(北海道労働局・令和8年4月): https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/002622240.pdf
- 季節労働者の推移と現況(令和6年度)(北海道労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/002453049.pdf
- 令和8年度 通年雇用促進支援事業(石狩市・北海道労働局委託): https://www.city.ishikari.hokkaido.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/330/0606.pdf
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