雪国の建設業の1年単位の変形労働時間制|積雪特例と「冬を休日にするか休業にするか」
豪雪地帯にある建設会社が1年単位の変形労働時間制を使うと、屋外作業の職人には積雪特例(労基則附則65条)が適用され、48時間超の週は連続3週まで・3か月ごとに3回までの制限が外れます。1日10時間・週52時間・年280日の上限は残ります。豪雪地帯は24道府県532市町村で、通年雇用助成金の指定地域(13道県)とは範囲が違い、鳥取や兵庫・京都・滋賀の一部も入ります。冬をカレンダーで休日にした日は休業手当が生じず、休業助成の対象にもならないと読めます(※2026年10月時点)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員8人の土木会社。11月の夕方、事務所のホワイトボードには来年の年間カレンダーの下書きが貼ってあります。社長は去年の出勤簿を横に置き、12月から3月の欄を「休」で埋めていく手を止めました。この「休」は休日なのか、休業なのか。去年は雪で止まった日に休業手当を払いました。今年は春から秋に土曜も出てもらった分、冬はまとめて休みにして、割増なしで一年を収めたい。そこへ職長が顔を出します。「うちも、積雪の特例ってやつ使えるんですか」。雪国の建設会社で、毎年この時期に繰り返される場面です。
この記事では、1年単位の変形労働時間制のうち、雪の多い地域の会社だけに関わる所を掘ります。積雪特例は誰が・どの地域で・何が緩むのか。「豪雪地帯」と通年雇用助成金の対象地域はどう違うのか。冬をカレンダーで「休日」にするのと「休業」にするのとで、賃金・休業手当・助成金はどう変わるのか。除雪の残業の数え方と36協定の上限、途中で入社・退社した職人の賃金の清算、就業規則の規定例とカレンダーの組み方の例まで、雪が降る前に決める順に並べました。協定で決める事項・届出・様式・雨の日の扱いといった制度の基本は、建設業の1年単位の変形労働時間制にまとめてあります。

雪国の会社は、冬の休みを年間カレンダーに組み込めますか?
組み込めます。1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の対象期間を平均して週40時間以内に収める代わりに、あらかじめ決めた日や週には1日8時間・週40時間を超える勤務を所定として組める制度です(労働基準法32条の4、※2026年10月時点)。「春から秋は長く働き、雪で仕事が減る冬は短くするか休みにする」という配分は、この制度が本来想定している使い方そのものです。条件は、労使協定を結んで労働基準監督署に届け出ること、対象期間が始まる前に年間カレンダーで労働日と各日の労働時間を決めて職人に周知すること、始まってから会社の都合で組み替えないことです。協定で決める5つの事項、様式第4号の書き方、雨で工程がずれた日の扱い、向き不向きは兄弟記事に書いたので、ここでは繰り返しません。
ただ、雪国の会社が兄弟記事の限度表どおりにカレンダーを組もうとすると、一つ壁に当たります。春から秋は週50時間で走り、冬に短い週と休日をまとめて置きたい。ところが通常のルールでは、1日10時間・週52時間という上限とは別に、週48時間を超える週は連続3週まで、対象期間を3か月ごとに区切った各期間でも3回までという制限があります(労働基準法施行規則12条の4第4項)。週48時間までなら、この2つの制限に関しては何週続いても構いませんが、50時間の週を4月から6月まで並べる形は引っかかります。雪国の会社が夏に稼いで冬に休む設計をするには、この壁を外す必要があります。それが次の積雪特例です。
積雪特例とは何ですか?誰が・どの地域で・何が緩むのですか?
職長の「うちも使えるんですか」に答えるには、根拠の条文を一度だけ読んでおくのが早道です。積雪特例は、労働基準法施行規則の附則65条に置かれています(※2026年10月時点の現行条文)。
積雪の度が著しく高い地域として厚生労働大臣が指定する地域に所在する事業場において、冬期に当該地域における事業活動の縮小を余儀なくされる事業として厚生労働大臣が指定する事業に従事する労働者であつて、屋外で作業を行う必要がある業務であつて業務の性質上冬期に労働者が従事することが困難であるものとして厚生労働大臣が指定する業務に従事するものについては、第十二条の四第四項の規定にかかわらず、当分の間、……一日の労働時間の限度は十時間とし、一週間の労働時間の限度は五十二時間とする。
長い一文ですが、言っていることは3つの条件と1つの効果です。条件は「指定された地域にある事業場」「指定された事業」「指定された業務」の3つ。効果は「第12条の4第4項の規定にかかわらず、1日10時間・週52時間を限度とする」です。つまり、第4項の後半にある48時間超の週の制限(連続3週・3か月ごとに3回)が、この3条件を満たす人には適用されません。「当分の間」の決まりですが、平成9年4月1日の適用開始から現在まで続いています。
3つの条件の中身は、平成9年の労働省告示第8号(平成9年4月1日から適用。告示の題名は「施行規則第六十五条」ですが、現行の規則では附則65条です)で決まっています。
| 条件 | 告示で指定されているもの | 建設会社での見方 |
|---|---|---|
| ①地域 | 豪雪地帯対策特別措置法2条1項に基づき内閣総理大臣が指定する道・県の区域と市町村の区域(いわゆる豪雪地帯) | 会社や営業所など、事業場の所在地で見る |
| ②事業 | 労働基準法別表第一第三号の事業(建設の事業)。建設工事の資材・機械・廃棄物を運ぶ貨物自動車運送事業(その自動車の運転の業務)も指定 | 建設会社はそのまま当たる |
| ③業務 | 建設業法2条1項の建設工事に係る業務のうち、屋外で作業に従事するもの | 現場に出る職人は当たる。事務所の中の事務や工場内の作業は当たらない |
③が効いてきます。同じ会社でも、現場の職人は対象、事務員は対象外、というように人によって分かれます。冬の間だけ屋内で資材整理や機械の整備をする職人をどう扱うかは、行政の解釈を確かめられていません。協定の「対象労働者の範囲」を決める時に、迷う職種は労働基準監督署に確認してください。
何が緩み、何が残るかは、厚生労働省の建設業向けリーフレット(令和7年6月版)が図で整理しています。
| シフト作成のルール | 通常の1年単位の変形 | 積雪特例の対象者 |
|---|---|---|
| ①労働日数は年間280日まで | 適用 | 同様(変わらない) |
| ②連続労働日数は原則6日まで(特に繁忙な場合は12日まで) | 適用 | 同様 |
| ③1日10時間・1週52時間まで | 適用 | 同様 |
| ④労働時間が48時間を超える週は連続3回まで | 適用 | 適用されない |
| ⑤3か月ごとに区分した各期間で、48時間を超える週は3回まで | 適用 | 適用されない |
※2026年10月時点
緩むのは④⑤だけです。1日10時間・週52時間・年280日・連続6日は、雪国でもそのままです。この線引きを押さえておけば、「特例があるから夏は何時間でも組める」という思い込みで協定届が差し戻される事態を避けられます。職長への答えは、「うちの所在地が豪雪地帯に入っていれば、現場に出る人は対象。事務の人は対象外」で足ります。
「豪雪地帯」と通年雇用助成金の対象地域は、同じ範囲ですか?
違います。ここを同じだと思っていると、「うちは助成金の対象じゃないから特例も無理だろう」と、使える制度を使わずに終わります。逆の思い込みもあります。
積雪特例の地域は、豪雪地帯対策特別措置法で指定された豪雪地帯です。国土交通省の資料では、令和6年4月1日現在で532市町村(うち特別豪雪地帯201市町村)、24道府県に及びます。道県の全域が入るのは北海道・青森・岩手・秋田・山形・新潟・富山・石川・福井・鳥取の10道県。一部の市町村が入るのは宮城・福島・栃木・群馬・山梨・長野・岐阜・静岡・滋賀・京都・兵庫・島根・岡山・広島の14府県です。
一方、通年雇用助成金の指定地域は、令和8年4月1日版(令和8年度)の支給要領の別表第1で決まっていて、北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜の13道県です。全市町村が入るのは北海道・青森・岩手・秋田の4道県だけで、ほかは市町村や旧町村の単位で区切られています。
| 比べる点 | 積雪特例の「豪雪地帯」 | 通年雇用助成金の「指定地域」 |
|---|---|---|
| 決めているもの | 豪雪地帯対策特別措置法に基づく指定(告示が引用) | 雇用関係助成金支給要領の別表第1(令和8年4月1日版) |
| 広さ | 24道府県・532市町村(令和6年4月1日現在) | 13道県(市町村・旧町村単位の部分指定が多い) |
| 全域が入る | 北海道・青森・岩手・秋田・山形・新潟・富山・石川・福井・鳥取 | 北海道・青森・岩手・秋田 |
| 一部が入る | 宮城・福島・栃木・群馬・山梨・長野・岐阜・静岡・滋賀・京都・兵庫・島根・岡山・広島 | 宮城・山形・福島・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜 |
| 使い道 | 1年単位の変形の④⑤の制限を外す | 季節労働者を冬も雇い続ける会社への助成 |
※2026年10月時点。市町村単位の指定は、国土交通省の一覧と支給要領の別表で自社の所在地を確かめてください
たとえば新潟や山形の会社なら、積雪特例は県内どこの市町村でも地域の条件を満たしますが、通年雇用助成金は市町村次第です。両方に当たる会社は、冬を「休日」にする設計と、「休業」にして助成を受ける設計の両方を比べられます(次の節)。助成金の対象外でも、特例は使えます。
兵庫・京都・滋賀の雪の多い市町村や鳥取の会社も、特例の対象になり得ます
当事務所のある大阪府から見て、同じ近畿・中国地方にも豪雪地帯はあります。鳥取は県の全域、滋賀・京都・兵庫・島根・岡山・広島は一部の市町村が指定されています。これらの府県は通年雇用助成金の別表第1に入っていないので、「冬に職人を休ませて助成を受ける」道はありません。その代わり、所在地が豪雪地帯の市町村なら、積雪特例を使って「夏に長く・冬に短く」の年間カレンダーを組めます。助成で冬の人件費を埋められない地域だからこそ、冬の働き方を設計で決めておく価値は、北国の会社より大きいとも言えます。
自社の市町村が入っているかは、国土交通省が公開している豪雪地帯の道府県別一覧で確認してください。確認できたら、大阪の事務所とオンラインでやり取りしながら、協定とカレンダーまで進められます。
年間カレンダーは「夏を長く・冬を短く」どう組みますか?
ホワイトボードに、月ごとの「1週の所定労働時間」を書いていきます。雪国のカレンダーは、ここが通常の会社と一番違う所です。順番は次のとおりです。
- 去年の出勤簿から、降雪期を特定する。 雪で止まった週、短くなった週、除雪で延びた週を拾い、例年の降雪期(12月〜3月など)と、たまたま大雪だった週を分けます。
- 降雪期の所定を決める。 週30時間・1日6時間のように短くするか、休日を多く置くか。日給の職人の冬の月収がいくらになるかを、この段階で一緒に出します。
- 繁忙期の所定を決める。 上限は1日10時間・週52時間。積雪特例の対象者なら、週50時間の週を何週も並べられます。連続労働日数は原則6日まで(特定期間として協定した特に繁忙な期間は12日まで)です。
- 年間で照合する。 労働日数280日以内、対象期間を平均して週40時間以内、1日・1週の上限、連続勤務。
- 初年度の落とし穴を見る。 旧協定がある場合の280日の扱い(下で説明します)。
厚生労働省のリーフレット(令和7年6月版)には、積雪地域向けの勤務カレンダー例が2つ載っています。例❸は次のような配分です。
| 時期 | 1週の所定労働時間 | 1日の所定労働時間 |
|---|---|---|
| 12月、1月〜3月(降雪期) | 30時間 | 6時間 |
| 4月〜6月、9月〜11月(繁忙期) | 50時間 | 10時間 |
| 7月・8月 | 40時間 | — |
この例の年間は、労働日数246日・休日119日、所定の総労働時間2074時間、1週あたりの平均39時間46分です。平均が40時間に収まっているので制度として成立し、繁忙期の週50時間が半年続いても、④⑤の制限が外れる積雪特例の対象者なら組めます。通常の会社で同じ並びにすると、48時間超の週が連続3週・3か月ごとに3回を超えるため、組めません。もう一つの例❹は、12月を週30時間、1月〜3月を週24時間まで落とし、繁忙期は週50時間、7月・8月は週45時間で、年間労働日数234日・休日131日・総労働時間2041時間・週平均39時間08分です。リーフレットが「あくまでも一例」としているとおり、自社の工期と職人の生活に合わせて配分し直してください(数字は※2026年10月時点のリーフレットの例)。
初年度の落とし穴は、労働日数の上限です。 積雪特例が外すのは④⑤だけで、年280日の上限と、前年の協定(旧協定)がある場合の扱いはそのまま残ります。新しい協定で1日の最長が「旧協定の最長か9時間の長い方」を超えるか、1週の最長が「旧協定の最長か48時間の長い方」を超える時は、労働日数の上限が「旧協定の1年当たりの労働日数から1日を減じた日数か280日の少ない方」になります(労働基準法施行規則12条の4第3項)。去年まで1日最長9時間・週最長48時間・年260日の協定で回していた会社が、今年から夏を1日10時間に延ばすなら、労働日数は259日までです。「280日まで組める」と思って夏の労働日を増やすと、届出で止まります。
就業規則には、労使協定とカレンダーにつなぐ条文を置きます。
規定例(1年単位の変形労働時間制と降雪期の勤務) 第○条 労使協定で定める屋外作業に従事する従業員については、同協定に定める起算日から1年間の変形労働時間制を適用し、対象期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲で、各日および各週の労働時間を定める。 2 労働日、各日の始業・終業時刻、休憩時間および休日は、労使協定に基づく年間勤務カレンダーで定め、対象期間の開始前に従業員に周知する。 3 降雪により屋外作業が縮小する期間の所定労働時間および休日は、年間勤務カレンダーにおいて他の期間と区別して定める。
条文イメージです。対象者の範囲、起算日、降雪期の月、別表の時刻は自社に合わせて調整してください。協定届は、令和5年2月27日から本社一括の届出ができ、令和3年4月1日からは労働基準法関係の電子申請に電子署名・電子証明書が要りません(※2026年10月時点)。営業所が複数ある会社は、起算日前の届出の手間をここで減らせます。
冬の所定が短い月に、日給や時給の職人の月収が下がる場合、社会保険の標準報酬月額の月額変更の対象になるかは、賃金の決め方ごとに年金事務所で確認してください。固定的賃金の変更の基本は日給を上げたら社会保険の届出は要る?にまとめています。
カレンダーができると、職人には「今年の冬は12月から3月まで1日6時間、1月のこの週は連休」と秋のうちに渡せます。冬の予定と収入の見通しが年の初めに立つのは、職人にとって一番分かりやすい利点です。社長は、雪の朝に一人ずつ電話をかける仕事から離れられます。
冬を「休日」にするか「休業」にするか、何が違いますか?
12月の朝、窓の外は雪。年間カレンダーでその日が「休日」なら、社長の電話は鳴りません。もともと働く日ではないからです。「労働日」なら、今日働かせるか休ませるかを社長が決め、休ませるなら休業手当の話が始まります。同じ「冬に休む」でも、制度の上ではまったく別の2つです。
| 比べる点 | 冬をカレンダーで「休日」にする | 冬の所定労働日に「休業」させる |
|---|---|---|
| その日の性質 | 所定労働日ではない | 所定労働日に会社が働かせない |
| 休業手当(労働基準法26条) | 働く日ではないので、休業という場面自体が生じない | 会社側の事情による休業なら平均賃金の60%以上が要る。不可抗力に当たれば対象外になり得る |
| 職人の収入 | 日給の職人なら、休日が増えた月の収入はその分減る。夏の長い週を含めた年間で見る | 休業の日に休業手当が出る |
| 通年雇用助成金の休業助成 | 助成金の「休業」は所定労働日に働けない状態を指すため、最初から休日にした日は当たらないと読める | 休業手当が26条に沿っているなど要件を満たせば対象になり得る(1人60日以内・令和10年4月30日まで) |
| 社会保険料 | 雇用は続き、保険料も続く | 雇用は続き、休業手当にも保険料がかかる |
| 決める時期 | 対象期間の開始前(カレンダーで確定) | 休業のたび(理由と賃金の処理を記録) |
※2026年10月時点
通年雇用助成金(令和8年度の支給要領)は「休業」を「所定労働日に労働の意志及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全一日にわたり労働することができない状態」と定義しています。有給休暇や休職の日は休業に当たりません。この定義を素直に読むと、1年単位の変形のカレンダーで最初から休日にした日は所定労働日ではないので、休業助成の対象にはなりません。つまり、冬を「休日」にする設計と、「休業」にして助成を受ける設計は、制度の上で分かれ道です。冬の全部を休日にせず、所定労働日を残して休業と組み合わせる形も考えられますが、助成金の対象になるかは個別の設計によるため、通年雇用届を出す前に労働局で確認してください。なお、この助成金はもともと季節雇用だった職人を冬も雇い続ける会社のための制度で、一年中雇っている職人をそのまま対象にできるものではありません。
休業にする場合、休業手当にも社会保険料・雇用保険料がかかり、標準報酬月額の等級は原則として休業が3か月を超えるまで夏の給料のままです。この手取りの話は冬の休業中の給料と社会保険料に、助成金の対象者・申請回数・出し忘れの落とし穴は通年雇用助成金のもらい方にまとめました。休業手当の「会社側の事情か、不可抗力か」の線引きは雨の日の休業手当と同じ枠組みで、冬期休業・季節雇用・除雪の33条の届の全体像は、親記事の建設業の冬、給料と除雪の残業はどうする?をご覧ください。
どちらを選ぶかは、冬に払うお金だけでなく、職人がどちらを望むかでも決まります。休日なら、職人は冬の予定を年の初めから立てられ、夏の長い日の分が冬の休みで返ってくる形がはっきりします。休業なら、休業手当が出る代わりに、その日に呼び出される可能性が残ります。会社が得をして職人が損をする形ではなく、冬の月の手取りと、春にまた同じ顔ぶれで現場を開ける形を、両方に見える数字で先に示す。それが当事務所の整え方です。
就業規則には、休日と休業を区別する条文を置いておくと、雪の朝の判断が規則どおりになります。
規定例(年間勤務カレンダー上の休日と休業の区別) 第○条 年間勤務カレンダーで休日と定めた日は、休業として取り扱わない。 2 年間勤務カレンダーで労働日と定めた日に、積雪その他の事情により就業させない場合は休業とし、使用者の責に帰すべき事由による休業については、平均賃金の60%以上の休業手当を支給する。
条文イメージです。支給水準や連絡の方法は自社に合わせて調整してください。この条文があっても、個々の日が不可抗力に当たるかどうかが決まるわけではありません。
季節雇用で冬に離職する職人は、変形の対象に入れますか?
入れることはできますが、辞める時に賃金の清算が要る可能性が高くなります。対象期間より短い期間しか働かなかった人(途中で入社・退社した人、配置転換で対象から外れた人)については、実際に働いた期間を平均して週40時間を超えた時間に、割増賃金を払わなければなりません(労働基準法32条の4の2)。すでに時間外労働や休日労働として割増を払った時間は除きます。清算の時期は、途中で退職した人はその退職時、途中で入社した人は対象期間の終わりです(※2026年10月時点)。
雪国で起きやすいのは、こういう形です。4月に入社して夏は週50時間で働き、所定が短い冬を前に11月末で離職する季節雇用の職人。会社全体のカレンダーでは平均40時間に収まっていても、この人が働いた4月から11月だけを平均すると40時間を超えます。超えた分は退職時に割増で清算します。
設計は2つあります。季節雇用の職人を協定の対象労働者から外し、通常の労働時間制で働いてもらう形。対象に入れて、退職時の清算を最初から見込んでおく形。どちらでも、働いた分の賃金が減ることはありません。職人の側から見れば、夏に長く働いた分が離職時に清算されるのは、正しく受け取るべきお金です。冬に離職する職人の雇用保険・離職票・特例一時金の手続きは季節雇用の職人の特例一時金と離職の手続きに分けて書きました。通年雇用助成金の休業助成を使う職人が12月16日から4月30日の間に離職すると、理由を問わず助成の対象外になる点も、離職日を決める前に押さえておきます(※2026年10月時点)。
冬の除雪の残業は、どう数えますか?36協定は月45時間のままですか?
1月、所定6時間の日。朝から除雪に出て、戻ったら8時間働いていた。この2時間に割増は付くのか。職人も社長も、毎年ここで止まります。
1年単位の変形労働時間制の時間外労働は、3段で数えます(長野労働局「労働条件ハンドブック」より)。
| 段 | 時間外労働になる時間 |
|---|---|
| ①1日 | 協定で8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えた分。それ以外の日は8時間を超えた分 |
| ②1週 | 協定で40時間を超える時間を定めた週はその時間を超えた分。それ以外の週は40時間を超えた分(①を除く) |
| ③対象期間 | 法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7。1年365日なら2085時間42分)を超えた分(①②を除く) |
※2026年10月時点
所定6時間の日に8時間働いた場合、6時間から8時間までの2時間は、その日の時間外労働にはなりません(8時間を超えた分からが①です)。ただし、働いた2時間分の賃金そのものは要ります。所定30時間の週に40時間働いても、その週の時間外にはなりません。ところが、年度の終わりに実際の労働時間の合計が総枠(2085時間42分)を超えていれば、超えた分に③として割増賃金が要ります。「冬の短い日の除雪は割増ゼロ」ではありません。冬に除雪が多い会社は、総枠に対して年度末にいくら残っているかを、月ごとに見ておく必要があります。午後10時から午前5時の深夜の除雪には、時間外とは別に深夜の割増が要ります。具体の計算は、自社の協定の各日・各週の所定と出勤簿を使って行い、迷う時は社労士に検算を頼んでください。
36協定の上限も変わります。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制で働く人の限度時間は、月42時間・年320時間です(通常は月45時間・年360時間。労働基準法36条4項、※2026年10月時点)。特別条項で限度時間を超えられる月数も、42時間を超える月で数えて年6か月以内です。積雪特例の対象者でも、ここは同じです。冬に除雪の残業が集中する会社は、36協定の業務の欄に除雪を入れ、1か月42時間の枠で冬の月を見込みます。様式の選び方と特別条項の書き方は建設業の36協定の書き方に、大雪で協定の時間では足りない夜の33条の許可・届(様式第6号)と、除雪が災害復旧に当たる場合の139条の協定は、親記事の除雪の節にまとめています。33条で延ばした時間にも割増賃金は要ります。
カレンダーに無い日に働けば割増が付く、という原則は雪国でも変わりません。土曜の現場が止められない建設会社の事例で整理したとおり、設定した労働日ではない日の勤務は通常どおり割増の対象です。冬のカレンダーで休日にした日に除雪で呼び出した時間は、上の3段(法定休日なら休日労働)で数えて割増の対象になり得ます。確定したカレンダーを後から入れ替えて帳尻を合わせる形にはしません。雪下ろし・除雪でのケガの備えは雪下ろし・除雪で職人がケガをしたらに分けました。
総枠と42時間の2つの数字を事務所に貼っておけば、1月の夜に町から出動の電話が来た時も、「今月はあと何時間、年度末にあと何時間」が答えられます。職人にも、冬の除雪の分が年度末にどう清算されるかを、最初に説明できます。
雪が降る前に、何から手を付ければいいですか?
最初にやるのは、自社の所在地を2つの一覧で引くことです。国土交通省の豪雪地帯の一覧に市町村があれば積雪特例が使え、支給要領の別表第1にあれば通年雇用助成金が検討できます。そこから先は、次の順です。
- 対象者を分ける。 屋外で作業する職人(特例の対象)と、事務員・屋内作業の人(対象外)。季節雇用の職人を対象に入れるか外すか。
- 冬を「休日」にするか「休業」にするかを決める。 去年の出勤簿と、職人の冬の希望、助成金の有無を並べて選ぶ。
- カレンダーを組む。 降雪期の週時間、繁忙期の週時間、280日(旧協定があれば259日などの計算)、平均40時間、総枠。
- 36協定を組み直す。 月42時間・年320時間の枠で、除雪の業務と冬の月の時間を見込む。33条の届に要る記録の欄を日報に足す。
- 就業規則と賃金規程を直し、起算日の前に届け出て周知する。 協定届・協定書・年間カレンダーを所轄の労働基準監督署へ。
整うと、社長の冬はこう変わります。12月の朝、雪が積もっても、カレンダーが休日なら電話は要りません。労働日に休ませる時は、規則の条文どおりに休業手当を処理し、助成金の届の期限が手帳に書いてあります。1月の夜に除雪の出動が来ても、「今月あと何時間」が事務所で答えられます。職人の側も変わります。職長は秋のうちに家族へ「冬はこの週が休み、1月の手取りはこのくらい」と言え、夏に土曜まで出た分が冬の休みで返ってくると分かっています。夏だけ働いて離職する職人には、辞める時に清算されるお金が正しく渡ります。会社だけが得をする形でも、職人だけが我慢する形でもなく、労使のどちらにも見える数字で冬を決めるのが、当事務所の直し方です。
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参考(一次情報)
- 労働基準法施行規則 第12条の4・附則第65条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 労働基準法 第32条の4・第32条の4の2・第36条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則第六十五条の規定に基づく厚生労働大臣が指定する地域等・平成9年労働省告示第8号(厚生労働省 法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73997249&dataType=0&pageNo=1
- 豪雪地帯対策における施策の実施状況等・令和7年2月(国土交通省 国土政策局): https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001864515.pdf
- 豪雪地帯道府県別市町村数(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/common/001475871.pdf
- 建設業における1年単位の変形労働時間制のポイント・令和7年6月版(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署): https://www.mhlw.go.jp/content/001505975.pdf
- 労働条件ハンドブック 6 労働時間(長野労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/roudoujyouken_handbook202602-6.pdf
- 雇用関係助成金支給要領・通年雇用助成金〔令和8年4月1日〕(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001470776.pdf
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