建設業の冬期休業、給料はどうする?季節雇用・通年雇用助成金と就業規則
建設業の冬期休業は、通年雇用を続けて休業・別業務で対応するか、季節雇用とするかを、冬の収入と春の人員確保から比較します。積雪だけで休業手当が不要になるわけではなく、会社側の事情と回避可能性の確認が必要です。季節雇用の特例一時金には失業等の要件があり、通年雇用助成金も指定地域・対象労働者などの条件を満たす場合に限られます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員6人の外構・土木の会社。12月、事務所の窓の向こうで、資材置き場が白く埋まっていきます。現場は春まで閉まる見込み。社長は職人の名前が並ぶ予定表を前に、「休ませて給料を払うか、いったん離職してもらって春に呼び戻すか」と手を止めます。去年も同じことで悩み、春に連絡したときには別の会社へ移っていた職人もいる——積雪地の会社で考えておきたいのは、冬の支払いと、春に誰と現場を再開するかを一緒に決めることです。
この記事では、通年雇用と季節雇用の選び方から、雪の日の給料、契約書、雇用保険、助成金、冬の手当までを順番に整理します。就業規則と年間の予定がそろえば、雪が積もってから社長一人で答えを探す時間を減らせます。
冬も雇い続けるか、季節雇用にするか、何で比べればいいですか?
春の着工予定を見ながら「あの職長には戻ってきてほしい」と思うなら、冬の給料だけで結論を出すのは早いかもしれません。まず、雇用を続ける場合と、季節ごとに契約する場合を並べます。
| 選択肢 | 冬の運用と、先に決めること |
|---|---|
| 通年雇用で冬は休業 | 雇用を続け、休業の原因に応じた手当と契約上の賃金を確認。冬の支払いを資金計画に入れる |
| 通年雇用で別の仕事 | 屋内作業、道具の整備、資材整理などを検討。実際に用意できる業務と勤務日・賃金を決める |
| 季節雇用で春に再雇用を検討 | 雇用期間・更新条件・翌春の採用方針を整理。冬の収入や、春に人がそろわない可能性も考える |
これはこれからの雇用設計の比較です。現在の職人との契約を確認せず、社長の判断だけで「今年から冬は離職」に切り替える手順ではありません。今の契約期間、これまでの更新、本人への説明を先に確かめます。
通年雇用なら、冬にどれだけ仕事を用意できるかが鍵になります。整備や片付けを並べるだけでなく、「誰に、何日分あるか」まで書くと、仕事で埋まる日と休業になる日が見えてきます。助成金が使えない場合も支払えるか、併せて試算しておきましょう。
毎年の冬休みは、年間カレンダーに組み込めます
例年、冬に仕事が少ないなら、あらかじめ年間休日カレンダーに冬の休日を組み込む設計も考えられます。忙しい時期と閑散期の働き方を配分する「1年単位の変形労働時間制」も検討対象です。労使協定などの要件やカレンダーの作り方は、建設業の1年単位の変形労働時間制で解説します。
予定した休日と、働く予定だった日に会社が休ませる休業は分けて整理してください。雪が降ってから勤務日を休日扱いにして帳尻を合わせる設計にはしません。休日を多くする案でも、冬の月に本人が受け取る給料を併せて示すと、職人が生活の予定を立てやすくなります。社長も春の受注を、顔ぶれの見通しを持って考えられます。
雪で現場ができない日は、給料や休業手当を払うのですか?
朝、現場の雪の写真が届き、「今日は中止」と決める。そのときは、安全のために作業を止める判断と、賃金の扱いを分けて確認します。「雪だから無給」「日給だから出勤しない日はゼロ」と一括処理はできません。
労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由、つまり会社側の事情による休業では、平均賃金の60%以上の休業手当を求めています(※2026年9月時点)。平均賃金は法令に沿って算定する基準で、職人の日給をそのまま指す言葉ではありません。また、契約や就業規則で約束した賃金の扱いも確認が必要です。
一方、不可抗力による休業は同条の支払義務の対象外です。ただし、厚生労働省北海道労働局の資料が示す判断には、次の両方が必要です。
- 原因が事業の外部で発生したこと。
- 通常の経営者として最大限の注意を尽くしても、避けられなかったこと。
雪は会社の外で起きる自然現象ですが、それだけで判断は終わりません。毎年予定されている現場閉鎖と、急な大雪で道路や作業場所が使えなくなった場合は、同じ説明にはなりません。予測できた状況、現場の危険、別作業の可否などから、休業を避けられたかを個別に検討します。「毎冬の積雪なら必ず会社都合」「災害級なら必ず不可抗力」とも決めつけないことです。
実務では、休業日ごとに「中止理由・現場の状態・検討した代替作業・賃金の処理」を残しておくと、後から判断を説明できます。
規定例(冬期の休業) 会社は、積雪その他の事情により就業が困難な場合、代替業務の可否を検討したうえで休業を命じることがある。使用者の責に帰すべき事由による休業には、平均賃金の60%以上の休業手当を支給する。
条文イメージです。実際の支給水準、既存の賃金の約束、連絡方法を自社に合わせて調整してください。規定を書くだけで、個別の日の不可抗力が確定するわけではありません。
天候休業の基本や別作業への振替は、雨で現場が休みになった日の休業手当にまとめています。冬も同じ判断軸を持っておけば、給料日の前夜に「あの雪の日をどう処理するか」と記憶をたどらずに済みます。
季節雇用の契約は、期間・更新・春の約束をどう書きますか?
仕事納めに「春になったらまた頼むわ」と声をかける。社長には声かけでも、職人には来春の仕事の約束として伝わることがあります。契約書を作るときは、その言葉と書面が食い違わないようにします。
期間を定める雇用では、契約期間、更新の有無、更新する場合の判断基準を整理します。更新上限の有無と、上限を設ける場合の内容も明示します(※2026年9月時点)。滋賀労働局が公開する建設労働者用のモデル労働条件通知書を参照し、少なくとも次の欄を確認してください。
- 今回の契約期間:始まる日と終わる日。「雪が降るまで」のように終期を曖昧にしない。
- 今回の契約の更新:更新するかどうかと、判断する場合の基準。業務量・勤務状況など、自社で実際に判断する内容を書く。
- 更新上限:有無と内容を確認し、設ける場合は回数や通算期間を明確にする。
- 翌春の再雇用:採用を約束しているのか、採用を検討する段階なのか。連絡時期と条件の確認方法を分けて書く。
規定例(翌季の再雇用を検討する場合の連絡) 翌季の再雇用を検討する場合、会社は受注見込み及び本人の就労希望を確認し、あらかじめ双方で定めた期日までに採用の可否及び採用する場合の労働条件を書面で通知する。
これは連絡方法の例であり、雇用契約全体のひな形ではありません。すでに再雇用を約束している人に、後から「検討するだけだった」と説明するためには使えません。過去の更新や説明によって扱いが変わり得るため、契約終了に不安がある場合は個別に確認します。契約期間や更新上限の欄の書き方は、建設業の労働条件通知書・雇用契約書の書き方でも整理しています。
本人への説明では、冬の収入と春の連絡予定まで一緒に話しましょう。社長は「戻るつもりだと思っていた」、職人は「仕事があるか分からないから他を探した」という行き違いを減らせます。
季節労働者の雇用保険と特例一時金は、誰が対象ですか?
職人から「冬は雇用保険が出るんやろ」と聞かれても、その場で金額を約束しないでください。季節雇用という呼び名と、雇用保険の区分・受給資格は別に確認します。
雇用保険の「短期雇用特例被保険者」は、季節的に雇われる人のための区分です。季節的な雇用で、4か月以内の期間を定めた雇用ではないこと、週の所定労働時間が30時間以上であることが主な確認点です(※2026年9月時点)。契約書だけをこの形にすればよいのではなく、実際の雇い方をハローワークに伝えて確認します。
この区分の人が失業したときに、要件を満たすと受けられるのが「特例一時金」です。主な条件は次のとおりです。
| 確認すること | 特例一時金の主な内容 |
|---|---|
| 加入・就労の履歴 | 離職前1年間に、11日以上働いた月が通算6か月以上あること |
| 失業の状態 | 就職する意思と能力があり、求職活動をしているが就職できないこと |
| 支給額 | 基本手当日額の40日分。40日分は暫定措置 |
| 受給期限 | 離職日の翌日から6か月 |
| 待期 | 7日間。離職理由によっては別途給付制限もある |
※2026年9月時点。具体的な資格・額・手続日程は、ハローワークで確認してください。
40日分は、会社で払っていた日給の40日分ではありません。また、冬の全期間にわたり月々の給料を補う制度として説明するのも不正確です。春の再雇用を約束している場合は、その内容も伝え、失業状態に当たるかを確認します。
通年雇用を続ける職人を、書類の上だけ離職したことにして利用する設計にはしません。給付の見込みを本人と正しく共有できれば、「社長が出ると言ったのに」という給付をめぐる行き違いを避け、本人も冬の生活費を具体的に考えられます。
通年雇用助成金は、うちの地域で何に使えますか?
冬の資金計画を作るとき、「休業手当を出して雇用を続ける負担を支える制度はないか」と思ったら、通年雇用助成金を確認します。これは指定地域で季節の影響を受ける事業主が、季節労働者を通年雇用する場合などに助成する制度です。令和8年度も存続し、建設業は指定業種です(※2026年9月時点)。
対象は北海道・東北の指定地域を中心に、北陸・長野・岐阜の一部地域などにも及びます。ただし、市町村や区域の細かな指定があります。「北海道と同じくらい雪が降るから対象」と判断せず、支給要領の別表で所在地を照合してください。地域と業種が合っても、それだけで全従業員が対象になるわけではありません。対象になる職人は、その年度の9月16日以前から雇っていて、この措置がなければ冬に離職して特例一時金を受けると見込まれる季節労働者で、前年度の雇われ方などの条件もあります。すでに一年中雇っている職人を、そのまま対象にできる制度ではありません(※令和8年度支給要領・2026年9月時点)。
冬をどう過ごすかによって、確認する助成が変わります
| 冬に取り組むこと | 確認する助成の内容 |
|---|---|
| 雇用を続けて休業させる | 要件に合う休業手当と対象期間の賃金に対する助成 |
| 事業所内・事業所外で働く機会を確保する | 要件に合う就業期間の賃金に対する助成 |
| 職業訓練を行う | 対象となる訓練経費の助成 |
| 業務転換・新分野への進出を行う | 措置ごとの条件に合う経費等の助成 |
それぞれ要件が異なります。冬に別作業を用意しただけで、自動的にいずれかの対象になる制度ではありません。
休業の助成では、労基法26条に違反しない休業手当を支払っていることなどが必要です。対象となる休業の延日数は、申請対象労働者1人につき1月1日から起算して60日以内。支給対象となる休業措置は令和10年4月30日までとされています(※令和8年度支給要領・2026年9月時点)。この60日は助成の条件であり、それを超えれば会社の休業手当の義務がなくなるという意味ではありません。
支給要領の休業助成は、対象の休業手当と、対象期間の賃金(休業手当を除く)の合計額の2分の1、2回目は3分の1が基本です。上限は54万円、新規継続労働者分は71万円とされています(※2026年9月時点)。対象者の区分や期間などで計算が変わるため、冬に払う人件費全体の半分が戻る計算にはしないでください。
就業規則、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳など、該当する書類の整備・保管も要件に含まれます。休業の助成を受けるには、その年度の12月16日から1月31日までに通年雇用届などを労働局へ出す流れになっています(※令和8年度支給要領・2026年9月時点)。休業などの措置を始める前に、必要な届出と期限を労働局・ハローワークで確認しましょう。年間の準備は助成金の年間活用計画、冬以外の取り組みは建設業の雇用関係助成金一覧にまとめています。
先に対象者と使える措置を確認すると、社長は助成金の見込みと、自社で用意すべき資金を分けて考えられます。支給を当てにしてから慌てるより、冬の支払いと春の人手の両方を見通せます。
寒冷地手当や燃料手当は、残業代の計算に入れますか?
「灯油代が上がっているから、冬だけ手当を出そう」。職人を支えるために決めた手当でも、給与計算の設定が基本給だけのままだと、割増賃金の計算漏れにつながることがあります。
割増賃金は、残業などに対して割増して支払う賃金です。その計算の基礎から除けるものは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の限定された項目です。手当の名前だけで除けるわけではありません。
毎月の給料と一緒に払う寒冷地手当・燃料手当は、原則として算入されます。 除外できる項目に入っていないためです。一方、冬の初めに年1回まとめて払う手当は、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」として除外できる場合があります。ただし、中身は毎月の手当なのに払い方だけをまとめている場合は、除外が認められないおそれがあります。「燃料費だから実費」「年に一度払うから除外」と形式だけで決めず、次を一緒に確認してください。
- 誰に支払うか、何を基準に支給額を決めるか。
- どの期間に対応する手当で、いつ支払うか。
- 給与明細と賃金規定の説明が一致しているか。
- 割増賃金の基礎に入れるか、除外できる根拠があるか。
手当ごとの扱いと計算例は現場手当・資格手当も残業代に入る?割増賃金の基礎、日給・月給の時間単価などの基本は建設業の賃金規定と計算方法をご覧ください。冬の手当を新設するときに給与計算まで点検すれば、社長の「少しでも生活の足しに」という判断を、給料日の計算漏れで台無しにせずに済みます。
雪が降る前に、何から整えればいいですか?
まず、去年の冬の出勤簿と賃金台帳、職人との契約書を机に並べてください。「去年と同じでいいか」ではなく、休んだ日と払った額、春に戻った顔ぶれを一緒に振り返ります。
- 冬の仕事を数える:屋内作業や整備を含め、誰に何日分用意できるかを書き出す。
- 雇用の方針を決める:今の契約を確認し、通年雇用・季節雇用それぞれの負担と本人の希望を整理する。
- 給料のルールをそろえる:年間休日、休業手当、冬の手当を就業規則・賃金規定・給与計算へ反映する。
- 雇用保険と助成金を確認する:職人ごとの条件と必要書類、届出の順番を確かめ、本人にも説明する。
最初から全部の条文を作る必要はありません。自社で決めたいことを整理する段階から、建設業の就業規則作成をご利用いただけます。中峯社労士事務所では、就業規則の作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。Zoom30分の無料相談では、冬の仕事量や今の契約をもとに、自社の場合に何を決めるべきかを一緒に整理できます。
雪で現場が閉まる日にも、「今年の冬はこの働き方で、この給料になる」と職人に説明できる。その準備が、社長が春の現場の段取りに集中するための土台になります。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 労働基準法・第26条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則・第21条等(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 休業手当と不可抗力の判断基準〔新型コロナウイルスに関連した休業の注意事項〕(北海道労働局・労働基準監督署): https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/000766887.pdf
- 離職されたみなさまへ〈特例一時金のご案内〉(厚生労働省・ハローワーク): https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000695033.pdf
- 雇用関係助成金支給要領・通年雇用助成金〔令和8年4月1日現在〕(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001470776.pdf
- モデル労働条件通知書・建設労働者用〔常用・有期雇用型〕(滋賀労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/002780293.pdf
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