「就業規則が現状に合っていない」建設業の見直し・改定の進め方と優先順位
就業規則は作った時点の会社を写したものなので、人・休日・手当・法改正の4方向からズレていきます。直す順番は、①実際の運用と食い違っていて争いになったら会社が負ける条項、②法改正に追いついていない条項、③助成金や採用のために使う条項——の順が現実的です。改定は「棚卸し→条文の設計→従業員代表の意見聴取→労基署へ届出(常時10人以上の事業場)→周知」の手順で進みます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます「就業規則はあるんです。5年前に作ったやつが」——従業員8人の内装会社。社長が事務所の引き出しから出してきたのは、表紙が少し日に焼けたファイルでした。作った当時は社員4人、全員が日給で、土曜はあたりまえに現場が動いていた会社です。いまは8人。外国人が1人入り、隔週で土曜を休みにして、遠方の現場には手当も付けるようになりました。ところが規則には、そのどれも書かれていません。「全く現状に見合っていないんですよね」。この記事では、すでにある就業規則を「今の会社」に合わせて直すとき、どこから手を付ければいいのかを、優先順位の付け方とセットでお伝えします。

なぜ、就業規則は現状と合わなくなるのですか?
就業規則は、作った瞬間の会社を写した1枚の写真のようなものです。写真は変わりませんが、会社は毎年変わります。ズレは、だいたい次の4方向から起きます。
- 人が変わる:4人が8人になり、日給の職人だけだった会社に、月給の社員やパートの事務員、外国人材が加わる。規則が想定していない働き方が増えます。
- 休みと時間が変わる:週休2日への移行、隔週の土曜休み、雨天中止の日の扱い。現場の運用は動いても、規則の「休日」の条文は昔のままです。
- お金が変わる:現場手当、資格手当、遠方手当。増やしたり止めたりを口頭でやってしまうと、規則の賃金の条文と実態が食い違います。
- 法律が変わる:時間外労働の上限、年次有給休暇の取得義務、育児介護の制度。会社が何もしなくても、規則のほうが古くなっていきます。
やっかいなのは、ズレていても普段は何も起きないことです。表に出るのは、退職者ともめたとき、労基署の調査が入ったとき、助成金を申請するとき——つまり「規則が読まれるとき」だけ。だから後回しになり、いざ読まれた瞬間に効いてきます。調査で何を見られるかは労基署の是正勧告にまとめています。
なお、これから初めて作る会社とは論点が違います。ひな形をそのまま使う危うさはひな形の5つの落とし穴、10人未満の会社が作る意味は10人未満でも就業規則を作る3つの理由をご覧ください。この記事は「すでにあるものを直す」側の話です。
いま何がズレているのか、どう棚卸しすればいいですか?
いきなり条文を書き換えないでください。先にやるのは棚卸しです。紙を1枚用意して、左に「規則にはこう書いてある」、右に「実際はこうしている」を並べます。見る場所は6つで足ります。
| 見る場所 | 実際と比べるポイント |
|---|---|
| 労働時間・休憩 | 始業終業の時刻、朝礼や片付けの扱い、現場への移動時間 |
| 休日・休暇 | 土曜の扱い、雨天中止の日、有給の取り方 |
| 賃金・手当 | 日給月給か、欠勤控除の計算、いま実際に払っている手当の名前 |
| 雇用の種類 | 正社員・パート・嘱託・外国人材ごとに、適用される条文があるか |
| 服務・懲戒 | 安全ルール、無断欠勤、現場写真やSNSの扱い |
| 法改正まわり | 時間外の上限、有給5日の取得、育児介護の最新ルール |
書き出すと、たいていの社長が同じ反応をします。「うちの規則、移動時間のことが一行も書いてない」。建設業でとくにもめやすいのは移動時間と雨天休業で、それぞれ移動時間は労働時間か、雨天中止の日の給料で扱っています。欠勤控除の書き方は日給月給の賃金規定が参考になります。
直す順番は、どう決めればいいですか?
全部を一度に直す必要はありません。優先順位は3段で考えます。
優先度A:争いになったら会社が負ける条項
- どういう性質か:規則の記載が実態より従業員に有利な場合、労基署や裁判の場面では、書いてあるほうが基準になりがちです。
- だから会社は:ここを先に直せば、「書いてあるとおりに払っていない」という一番弱い状態から抜けられます。
- 社長の毎日は:辞めた職人から書面が届いても、規則と現場の運用が一致しているので、開いて確認すれば済みます。夜中に過去の勤怠を掘り返す時間が消えます。
優先度B:法改正に追いついていない条項
時間外労働の上限、有給5日の取得義務、育児介護の制度。ここは「知らなかった」が通用しない領域です。上限規制の点検は時間外上限のチェックリスト、36協定の中身は36協定の基本で確認できます。
優先度C:これから使う制度のための条項
助成金の要件になる正社員登用のルール、若手が定着する休日・手当の設計。ここは守りではなく攻めの部分です。急ぎではないぶん、決めておかないといつまでも整いません。若手向けの設計は若手採用に強い就業規則にまとめています。
直さないままだと、どうなりますか?
放置した会社の景色はこうです。退職した職人から「有給が残っていた」と連絡が来て、規則を開くと社長自身も知らない条文が書いてある。助成金を申請しようとしたら規則の内容が要件に合わず、取り下げることになる。若手の面接で「休みはどうなってますか」と聞かれ、口で説明するしかない。
整えた会社の景色はこうです。移動時間も雨天の日も、規則を見せて「うちはこうです」と1分で説明できる。労基署に規則の提出を求められても、その場で渡せる。助成金の案内が来たとき「うちは要件を満たしています」と即答できる。違いは規則の分厚さではなく、書いてあることと現場が一致しているかどうか、それだけです。
改定は、どんな手順で進むのですか?
- 棚卸し:現行の規則と実際の運用を突き合わせ、ズレを一覧にする
- 設計:優先度A→B→Cの順に条文を書き換える。不利益変更にあたる部分は経過措置もセットで考える
- 意見聴取:過半数で組織する労働組合、ない場合は過半数代表者(従業員の代表として意見を言う人)から意見書をもらう
- 届出:常時10人以上の事業場は、変更届と意見書を労働基準監督署へ提出する
- 周知:現場から見られる場所に置く、データで共有する。周知していない規則は効力を持ちません
意見書のもらい方や届出・周知の具体的な手順は就業規則の届出と意見書の手順、手当や日当を下げるなど従業員に不利になる変更の進め方は不利益変更の進め方で詳しく扱っています。
規則を部分的に直すのではなく、今の会社に合わせて一から作り直す場合の進め方は、建設業の就業規則作成のページでご案内しています。当事務所は建設業に絞って、時間外の上限対応、一人親方から従業員への切り替え、現場への移動時間の扱い、出張手当の設計を毎月のように扱っています。就業規則の作成も改定も顧問の基本料金内で対応しているため、現場のルールが変わるたびに手を入れられます(料金の考え方)。「うちの規則、どこがズレてますか」の一言からで大丈夫です。Zoom30分の無料相談で、直す順番を一緒に決められます。制度は変わりますので、最新の要件は必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- モデル就業規則について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
- 就業規則の作成・変更・届出の義務(厚生労働省 栃木労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article89_90_92.html
- 時間外労働の上限について(36協定・厚生労働省 スタートアップ労働条件): https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/36_pact.html
よくあるご質問
「うちの就業規則は、今のままで大丈夫?」
作成・改定は顧問の基本料金内(他社相場:作成単体で20〜30万円)。Zoom30分・無料で、御社の現状から「直すべき順番」を整理します。
ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
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