建設業の就業規則、従業員10人未満でも作るべき3つの理由
就業規則の作成義務は常時10人以上ですが、10人未満の建設会社でも作るべき理由は3つあります。キャリアアップ助成金など多くの助成金で就業規則が要件になること、問題のある職人を懲戒する法的根拠になること、「言った言わない」を防ぐ現場ルールを明文化できることです。義務がないうちに整えるほど、いざという時に会社を守れます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます社員が9人の工務店。社長は朝から現場に出て、夜は事務所で見積もりと請求書、その合間に職人の勤怠も自分でつけています。「うちは10人いないから就業規則はまだいい」——そう思って後回しにしているうちに、ある日ベテランの職人が無断で現場を離れ、注意すると「そんなルール、聞いてない」と返ってくる。助成金を申請しようとしたら「就業規則の写しを添付してください」と言われて固まる。10人未満の会社ほど、こういう場面で「守るもの」が無いことに気づきます。この記事では、法的な義務が無くても就業規則を作るべき3つの理由を、現場の場面とセットでお伝えします。

そもそも10人未満なら、就業規則は作らなくていいのでは?
労働基準法では、就業規則の作成・届出が義務になるのは「常時10人以上の労働者を使用する事業場」です。ですから、社員が9人以下なら、作らなくても法律違反ではありません。
ただ、ここで見落とされがちなのが「義務が無い=作る意味が無い」ではない、という点です。就業規則は、作って従業員に周知すれば、10人未満の会社でもちゃんと効力を持ちます。つまり10人未満の期間は、「義務に追われずに、自社の現場に合った規則をじっくり整えられる、いちばん良いタイミング」でもあるのです。
- 10人を超えてから慌てて作ると、労基署への届出期限に追われる
- 人が増えてからだと、既存の待遇を変えにくくなる
- 小さいうちなら、社長の頭の中のルールをそのまま文章にできる
会社が大きくなってからでは直しづらいことを、今のうちに固めておく。これが1つ目の考え方の土台になります。理由を3つ、順番に見ていきます。
理由1|助成金の「入口」になるのは、なぜですか?
キャリアアップ助成金をはじめ、国の助成金の多くは「就業規則が整っていること」を支給の前提にしています。たとえば有期契約の職人を正社員に登用して助成金を受け取る場合、その登用ルールが就業規則に書かれていることが要件になります。
- 制度としては:多くの助成金で、就業規則や賃金規定の整備が支給要件に含まれます。
- この会社はどう有利になるか:規則を先に整えておくと、「使える助成金があるとき、すぐ申請できる会社」になります。要件を満たすための書類が最初からそろっている状態です。
- 社長の毎日はどう変わるか:助成金の案内を見て「うちはどうせ間に合わない」と諦める必要がなくなります。申請直前に徹夜で規則を作る、あの慌ただしさが消えます。
現場でよくあるのは、助成金の申請期限が近づいてから「就業規則が無い」と気づき、間に合わずに数十万円をあきらめるケースです。入口を先にくぐっておくかどうかで、受け取れるお金が変わります。助成金が要件を満たせず不支給になるパターンは、助成金が不支給になるパターンでも詳しく触れています。
理由2|問題のある職人を辞めさせたいとき、根拠になるのは?
「無断欠勤を繰り返す」「現場で危険な行動をやめない」——こうした職人に辞めてもらいたいとき、口約束や社長の判断だけで解雇すると、あとで「不当解雇だ」と争われることがあります。
- 制度としては:懲戒や解雇は、就業規則にその事由と手続きが定められていて初めて、法的な根拠を持ちます。
- この会社はどう有利になるか:どんな行為が懲戒の対象か、どんな手順で処分するかを明文化しておくと、「ルールに沿って対応した会社」という立場が取れます。
- 社長の毎日はどう変わるか:問題のある職人に注意するとき、「規則にこう書いてある」と示せるだけで、対話が感情論になりません。辞めてもらった後に元従業員から連絡が来ても、堂々と構えていられます。
懲戒のルールをどう書くかは奥が深く、事由の書き方一つで効力が変わります。詳しくは建設業の懲戒規定の作り方で解説しています。連絡が取れなくなった職人を退職扱いにする手順は職人が「飛んだ」ときで扱っています。
理由3|「言った言わない」を無くす現場ルールは、どう明文化する?
朝の集合時間、安全帯の着用、資材の私的利用の禁止、遅刻の扱い——現場では細かなルールが山ほどありますが、その多くが「社長が口で言っているだけ」の状態です。
- 制度としては:就業規則は、服務規律(現場で守るべきルール)や賃金・休日の扱いを、会社の正式な文書として定めるものです。
- この会社はどう有利になるか:現場のルールが文章になっていると、新しく入った職人にも同じ基準で伝わります。人によって言うことが違う、という状態が無くなります。
- 社長の毎日はどう変わるか:「それ、聞いてない」という反論が返ってこなくなります。日給月給の欠勤控除など、お金に関わるルールも明文化しておけば、給料日ごとの説明の手間が減ります。賃金の書き方は日給月給の建設業が就業規則に入れるべき賃金規定も参考になります。
10人未満の会社は、どこから手を付ければいいですか?
一度にすべてを完璧にする必要はありません。まずは「助成金の申請予定があるか」「辞めてほしい人が今いるか」「現場で毎回もめるルールは何か」——この3つのうち、自社にいちばん近いものから固めていくのが現実的です。なお、実際に10人に到達すると就業規則の届出義務と安全衛生推進者の選任義務が発生します。何がどう変わるかは従業員10人の壁:建設会社が10人目を雇う前に整えることにまとめました。
自社の現場に合った就業規則をどう組み立てるかは、建設業の就業規則作成のページでも考え方を紹介しています。当事務所では、就業規則の作成・改定を顧問の基本料金内で行っており、他社のように作成だけで20〜30万円を別途いただくことはありません。「うちの規模だと何から始めればいいか」を整理したい方は、Zoom30分の無料相談で、自社の状況に合わせた優先順位を一緒に決められます。助成金の要件や制度の細部は変わることがあるため、最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- モデル就業規則について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
- 就業規則の作成・変更・届出の義務(厚生労働省 栃木労働局): https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article89_90_92.html
- キャリアアップ助成金(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00013.html
よくあるご質問
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