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60代のベテラン職人に長く働いてもらう|建設業の高齢者雇用と使える助成金

テーマ: 建設業の助成金サポート
30秒で結論

高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置(定年の引上げ・定年の廃止・継続雇用制度のいずれか)は事業主の義務で、70歳までの就業確保措置は努力義務です。就業規則の定年規定が60歳のまま止まっている会社は、まずそこから整えます。定年の引上げや廃止、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換などには65歳超雇用推進助成金が用意されており、資格取得や技能講習には人材開発支援助成金が使えます(※2026年7月時点・最新は公式で確認)。

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63歳の親方。図面を広げれば段取りが決まり、若手が詰まれば「あの人に聞け」と言われる存在です。従業員9人の会社にとって、この人が現場に立っているかどうかで一日の進み方が変わります。ただ、去年から膝が思わしくない。本人も「そろそろかな」と口にするようになりました。

社長は事務所の棚から就業規則を引っ張り出します。定年の欄には「満60歳」とだけ書いてある。3年前に60歳になったこの親方は、何にもとづいて今も働いているのか——ここで手が止まる会社は、実際とても多いです。

建設業は、経験を積んだ人ほど現場を回せる仕事です。この記事では、60代の職人に長く働いてもらうために労務側で整えることと、その取り組みに使える助成金を整理します。

ベテランと若手が並んで働く現場のイメージ写真

法律上、何歳まで雇う義務がありますか?

高年齢者雇用安定法により、定年を65歳未満と定めている事業主には、65歳までの雇用確保措置が義務づけられています。方法は次の3つのいずれかです。

  1. 定年年齢を65歳以上に引き上げる
  2. 定年の定めを廃止する
  3. 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度など)を導入する

さらに、70歳までの就業確保措置が努力義務として定められています(※2026年7月時点)。

多くの建設会社が採っているのは3の継続雇用制度ですが、問題は就業規則にその制度が書かれていないことです。定年は「満60歳」とだけあり、そのあと再雇用でどういう契約になるのか、賃金や勤務日数はどう決まるのかが何も規定されていない。実際には働き続けてもらっているので誰も困っていないように見えますが、この状態は整備が不十分です。就業規則の見直しの進め方は就業規則の見直し・改定の進め方と優先順位にまとめています。

60代に長く働いてもらうには、何を整えますか?

規定だけ直しても現場は変わりません。実務では、次の5つをセットで設計します。

1. 定年と再雇用のルールを就業規則に書く

定年年齢、再雇用の対象と手続き、契約の期間と更新、上限年齢。ここを書面にしておくと、本人にも家族にも説明できます。「今年もよろしく」の口約束で毎年つないでいる状態は、いざ体調を崩したときに双方が困ります。条文の規定例は60代・70代の職人と定年|建設業の定年・継続雇用規程にまとめています。

2. 再雇用後の役割と賃金を、セットで決める

役割が変われば処遇が変わるのは自然なことです。問題は、仕事の中身が現役時代とほとんど同じなのに賃金だけ大きく下げる形。これは不合理な待遇差として問題になり得ます。「何をやめて、何を担うのか」を先に決めるのが順番です(建設業の同一労働同一賃金)。

3. 体力に配慮した働き方を用意する

  • 週4日勤務、午前のみ、隔日勤務といった短時間・短日数の選択肢
  • 高所作業や重量物の取扱いから外し、段取り・墨出し・検査・若手指導へ役割を移す
  • 夏場の熱中症対策(熱中症対策の義務化)、通院日の休みの取りやすさ

「フルタイムで現役と同じか、辞めるか」の二択しかない会社は、辞める側に倒れます。選択肢を1つ増やすだけで、あと5年働いてもらえることがあります。

4. 安全配慮と健康管理

高年齢の労働者は、転倒や墜落による災害が重篤化しやすい傾向があります。国も高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)を示しています。健康診断の確実な実施、通路や足場の段差解消、照度の確保といった現場側の手当も、労務の一部です(労災事故で問われる安全配慮義務)。

5. 社会保険・雇用保険の扱いを確認する

65歳以上でも、要件を満たせば雇用保険の高年齢被保険者として適用されます。厚生年金の被保険者資格は原則70歳まで、健康保険は75歳になるまでが対象です(※2026年7月時点)。勤務日数・時間を減らした場合の取扱いは個別に確認が必要なので、シフトを決める前に相談してください。

技能承継を「役割」にすると、何が変わりますか?

60代の職人が持っているのは、体力ではなく判断です。段取りの読み、納まりの勘所、危ないと感じる感覚。これは書面に落とせないので、一緒に現場に立つ時間でしか渡せません。

そこで、再雇用後の職務内容に「若手の指導」を明記します。指導手当を設ける、CCUSのレベルに応じた役割を割り当てる、職長として現場に入る——形にすると、本人にとっても「体力が落ちたから安く使われている」ではなく「役割が変わった」と受け止められます。若手が辞めない会社の作り方は職人が辞めない会社の就業規則にまとめました。

高齢者雇用で使える助成金は何ですか?

取り組みの形によって、見る制度が変わります(※2026年7月時点・支給額や要件は年度で見直されるため、必ず公式サイトでご確認ください)。

会社がやること見る制度窓口
定年の引上げ・定年の廃止・継続雇用年齢の引上げ65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)JEED
高年齢者向けの評価制度・雇用管理の改善65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)JEED
高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)JEED
資格取得・技能講習を受けさせる人材開発支援助成金/建設事業主等に対する助成金労働局・ハローワーク
高年齢者をハローワーク等の紹介で雇い入れる特定求職者雇用開発助成金 など労働局・ハローワーク

注意点が2つあります。ひとつは、65歳超雇用推進助成金の窓口が労働局ではなく、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)であること。ハローワークに聞いても話が進まないことがあります。

もうひとつは、就業規則の改定そのものが要件になるという点です。定年の引上げや継続雇用年齢の引上げは、規則を変えて初めて成立します。つまり「就業規則を直す」という、いずれやらなければならない作業が、そのまま助成の対象になり得るということです。制度の全体像は建設業で使える雇用関係助成金一覧にまとめています。

整えた会社と、そのままの会社では何が変わりますか?

  • 制度としては:定年と再雇用のルールを就業規則に定め、短時間勤務や役割変更の選択肢を用意します。取り組みによっては助成金の対象になります。
  • この会社はどう有利になるか:本人と毎年その場で交渉する必要がなくなり、条件が制度として決まります。役割が明文化されるため、賃金の説明もつきます。膝の調子が悪くなったときに、辞める以外の選択肢を出せます。
  • 社長の毎日はどう変わるか:63歳の親方は、週4日、午前は現場、午後は若手の段取り確認という形で残ります。3年後、彼が本当に引退するとき、現場には彼のやり方を見て覚えた30代が2人立っています。技能を持った人が一人抜けるたびに受注できる現場が減っていく——あの目減りが止まります。

そのままにしておくと、逆のことが起こります。60歳を過ぎた職人は「いつまで働けるか分からない」まま働き、体調を崩した時点で辞めます。渡されなかった判断は、その日に会社から消えます。

まず何から手を付ければいいですか?

順番はシンプルです。①就業規則の定年・再雇用の規定を確認する、②60歳以上の在籍者と、5年以内に60歳になる人を名簿で洗い出す、③本人に希望する働き方を聞く。この3つが終われば、どの制度が使えるかは自然に決まります。誰がいつ節目を迎えるかを年間の計画に落とす考え方は助成金の年間活用計画を参考にしてください。

当事務所は建設業に特化しており、就業規則の作成・改定は顧問の基本料金内で対応しています。助成金は完全成果報酬で、受給できなければ費用は発生しません(※2026年7月時点・詳細は料金ページ)。定年規定の改定と、それを対象とする助成金の申請は同じ工程で進むため、切り離さずに設計するのがいちばん手戻りが少なくなります。サポートの全体像は建設業の助成金サポートをご覧ください。

「うちの親方、あと何年いけるやろか」——その話からで構いません。Zoom30分の無料相談で、名簿を前に一緒に整理できます。制度の要件は年度で変わりますので、申請の際は必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

あります。高年齢者雇用安定法により、定年を65歳未満と定めている事業主は、定年の引上げ・定年の定めの廃止・65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を講じる義務があります。70歳までの就業確保措置は努力義務です(※2026年7月時点)。
定年を60歳と定めること自体は可能ですが、その場合は65歳までの継続雇用制度を用意し、就業規則に定めておく必要があります。60歳定年とだけ書いてあり、その後の扱いが規定されていない状態は整備が不十分です。早めに改定してください。
役割や責任の範囲が変われば、それに応じた処遇にすること自体は可能です。ただし仕事の中身が現役時代とほとんど変わらないのに賃金だけ大きく下げる形は、不合理な待遇差として問題になり得ます。役割の変更を書面で明確にしておくことが要点です。
定年の引上げや廃止、継続雇用年齢の引上げ、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換などを対象とした65歳超雇用推進助成金があります。窓口は高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)です。資格取得や技能講習には人材開発支援助成金が使えます(※2026年7月時点・最新は公式で確認)。
できます。当事務所では就業規則の作成・改定を顧問の基本料金内で対応し、助成金は完全成果報酬でお受けしています。定年規定の整備と、それを対象とする助成金の申請は同じ工程で進めるのが最も手戻りが少ない進め方です。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号採用定着士

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用定着士として採用と定着の設計まで踏み込みます。

「うちに使える助成金、眠っていませんか?」

当事務所の助成金サポートは完全成果報酬。受給できなければ費用はかかりません。御社の採用予定を伺い、「使える制度があるか」の調査からZoom30分・無料でご相談いただけます。

ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。

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