採用しても3か月で辞める建設会社が、入社後90日でやるべきこと
早期離職を面接だけで防ぐのには限界があり、辞める理由の多くは入社後の受け入れ方でつくられます。多くの人は最初の2週間で「ここは合うか合わないか」を決めるため、入社後90日を7日・30日・90日の3区切りで設計するのが実務的です。0〜7日目は迷わせないこと、8〜30日目は教育係を1人指名すること、31〜90日目は振り返り面談を3回入れることが柱になります。設計した内容は試用期間・評価・昇給として就業規則に落とし込み、口約束で終わらせないことが定着の分かれ目です。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます入社初日の朝7時。従業員7人の土木会社の詰所で、社長が新人を職人たちに紹介します。「今日から入る◯◯くんや。ほな、△△さんに付いて行って」。それが受け入れの全部でした。新人は言われるままハイエースの助手席に乗り、現場に着き、丸一日「そこ持って」「もうええわ」を繰り返して帰ります。3か月後の朝、彼は来ませんでした。電話にも出ません。社長は「最近の子は根性がない」と言い、また求人を出します。辞める理由は、面接ではなく、この初日から積み上がっていました。この記事では、入社後90日で何をするかを日数で区切って整理します。

面接で見抜けば、早期離職は防げますか?
防げません。面接で分かるのは、受け答え、時間を守るか、身なり、質問の中身——つまり印象です。「この人は3か月で辞めるかどうか」は、そこに書いていません。
もっと言えば、辞める理由の多くは入社後に会社側がつくっています。
- 誰に何を聞けばいいか分からない
- 教える人が日によって変わり、言うことが違う
- 求人票や面接で聞いた条件と、実際が違う
- 自分がこの先どうなるのかが見えない
どれも本人の資質ではなく、受け入れの設計の問題です。面接の精度を上げる努力より、入社後90日に手をかけるほうが、はるかに費用対効果が高いのはこのためです。
辞める人は、いつ「辞めよう」と決めていますか?
現場でよく見るのは、最初の2週間でほぼ決まっているという形です。その後の2か月半は、辞めるタイミングと言い出す口実を探している期間になります。だから、力を入れる順番は前に寄せます。
| 期間 | この時期の目的 | 会社がやること |
|---|---|---|
| 0〜7日目 | 迷わせない | 段取り・道具・聞く相手を決めておく |
| 8〜30日目 | 居場所をつくる | 教育係を1人指名し、教える順番を決める |
| 31〜90日目 | 先を見せる | 振り返り面談を3回、評価と昇給の道筋を示す |
0〜7日目:迷わせないための準備
初日に「何をすればいいか分からない時間」が長いほど、離職率は上がります。前日までに用意するのはこれだけです。
- 書類:労働条件通知書と雇用契約書を初日に渡す。就業規則を見せ、休日・残業・給与の締めと支払日を口頭でも説明する(書き方は建設業の労働条件通知書・雇用契約書の書き方)
- 道具と装備:ヘルメット、安全帯、作業着。「自分で買っといて」で始めると、初日の印象がそこで決まります
- 生活のこと:昼はどうするか、トイレはどこか、集合は何時か、雨の日の連絡は誰にどうするか
- 最初の現場を選ぶ:怒鳴り声が飛ぶ現場や、極端に忙しい現場に初日から入れない。最初の1週間は、教える余裕のある現場に置く
- 聞く相手を1人決める:「分からんことは全部この人に聞け」と本人と周囲の両方に伝える
とくに最後の1つが効きます。新人が黙っているのは、疑問がないからではなく、誰に聞いていいか分からないからです。
8〜30日目:教育係を1人決める
「見て覚えて」は教育ではありません。それで育った世代がいるのは事実ですが、辞めずに残った人だけが見えているだけです。
- 教育係を指名する:一番腕のいい職人ではなく、聞かれたときに手を止められる人を選びます
- 教育係にも報いる:手当を付けるか、評価に反映します。無報酬で押し付けると、教育係のほうが先に疲れます
- 教える順番を紙にする:1週目は道具と材料の名前、2週目は墨出し、3週目は…。順番が決まっていれば、教える側が日によって違うことを言わなくなります
- 1日の終わりに1分:「今日できるようになったこと」を1つ言わせる。本人が成長を自覚できます
この時期に効いてくるのが評価の見え方です。教育係を評価に組み込むところまで含めた設計は職人が辞めない会社の就業規則で整理しています。
31〜90日目:振り返り面談を3回
面談は、2週目・1か月・3か月の3回。15分で十分です。聞くのは3つだけにします。
- できるようになったことは何か(本人に言わせる)
- まだ分からない、聞きにくいことは何か
- 入る前に聞いていた話と、違うところはないか
3つ目が最も重要です。ここで「実は土曜が思ったより多くて」と出てきたときに、ごまかさないでください。求人票や面接で伝えた条件と実態がずれているなら、その場で確認し、直せるなら直す。ここでの誠実さが、その後の1年を決めます。ずれを放置すると、本人は「言っても無駄だ」と判断し、静かに次を探し始めます。
3か月面談ではもう1つ、この先の道筋を示します。1年後に何ができるようになっているか、どの資格を会社の負担で取るか、給与がどう上がるか。先が見えない仕事を、20代は続けません。
90日の設計は、書類につないで初めて残ります
口約束で終わらせると、社長が現場に出ている会社では次の採用のときに再現できません。決めたことは書類に落とします。
- 試用期間の長さと、その間の労働条件(建設業の試用期間)
- 評価と昇給の基準(何ができるようになったら、いくら上がるのか)
- 資格取得の支援(費用負担と、取得後の手当)
- 教育係の手当
これらは就業規則と賃金規定に書く内容です。当事務所では就業規則の作成・改定、雇用契約書・労働条件通知書の整備を顧問の基本料金内で対応しています(※2026年7月時点)。若手向けの見せ方は若手採用に強い就業規則にまとめています。
整えると、会社はどう変わりますか?
- 仕組みとしては:入社後90日に、担当者と日付の付いた予定が入ります。初日の持ち物から3か月面談まで、誰が何をするかが決まっている状態です。
- だから会社はどうなるか:辞める前のサインを拾えるようになります。「最近口数が減った」「遅刻が増えた」が、面談という定期の網に引っかかります。同じ手順を次の採用でも使えるので、人が増えるほど手間が減ります。
- 社長の毎日はどう変わるか:朝、詰所で人数が足りているかを確認するときの緊張がなくなります。3年で4人採って4人辞めた会社が、採った人が残る会社になれば、断っていた工事を受けられるようになります。
当事務所は建設業に特化した社労士事務所であり、採用定着士として採用の入口から定着までを担当範囲に含めています。求人を出して応募が来たら終わり、ではありません。求人設計と有料枠の運用は月額報酬型で、成果に納得できなければいつでもやめられる契約です(※2026年7月時点)。進め方は採用コンサルティング(採用定着士)、金額は料金ページに公開しています。人事の機能そのものを外に持つ考え方は従業員7人の建設会社に「人事部」をつくる方法もご覧ください。
直近で辞めた人が、入社何日目に何があって辞めたのか——覚えている範囲でかまいません。それをZoom30分の無料相談でお聞かせいただければ、御社の90日のどこに穴が空いているかを具体的に特定できます。
参考(一次情報)
- モデル就業規則について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
よくあるご質問
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