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頼んでいない早出は残業になる?建設業の事前申請の決め方と、申請なしの早出の扱い

テーマ: 建設業の就業規則作成
30秒で結論

会社が頼んでいない早出は、それだけで残業になるわけではありませんが、働いていると知りながら受け入れ続ければ、口に出さなくても指示したもの(黙示の指示)と見られ、労働時間になりえます。始業からでは間に合わず早く始めざるを得なかった朝も同じです。事前申請制も規則に書くだけでは足りず、裁判例の分かれ目は毎日の運用、上司の対応、仕事の量、申請すれば通る形かでした。申請のない早出はさせない・黙認しない運用までそろえると、働く側も頼まれた早出が記録に残り、頼まれずに早く来る必要がなくなります(※2026年11月時点)。

→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます

朝6時、会社の玄関の前。始業は7時半なのに、若い職人がもう工具箱を開けて、今日の現場の道具をそろえています。頼んだ人はいません。「段取りが気になって」と笑う顔を見れば、やる気はありがたい。でも社長の手には、その職人が昨日の朝の分として出してきた早出の残業申請があります。判を押せば、頼んでいない朝まで認めたことになる。押さなければ、早く来てくれた人に「その朝はいらなかった」と言うことになる。人数の少ない会社で、明日も顔を合わせる相手です。どちらを選んでも気まずい1枚です。申請書の無い会社なら、「明日6時から積み込んでいいですか」と口で聞かれた朝が、同じ1枚です。

迷いの元は、判そのものより、その朝に何の仕事があったのかが紙に出ていないことです。申請書の書式を見直しても、ひな形の条文を読み返しても、答えは出てきません。ひな形に書いてあるのは始業の時刻までで、朝6時に工具箱を開ける人のことは書かれていないからです。事前申請は、早出を断るための紙ではありません。朝の仕事を見えるようにする紙です。どの仕事が始業前に要るのかを自社の決まりとして紙に持っておけば、判を押す前に聞くことが決まります。

この記事で分かること

  • 朝のどの時間が働いた時間に入るか(場面ごとの早見表)
  • もう働いた朝の申請の決め方と、職人に聞かれた時の答え方
  • 事前申請制のある会社で、裁判例が見た分かれ目
  • 働いた時間に当たる早出の残業代(日当の職人も)と、36協定の上限への数え方
  • 申請書の欄と就業規則の規定例

始業前の会社の玄関先で工具箱を開けて道具をそろえる職人と、朱色の申請書を手にその姿を見る社長

頼んでいない早出は、残業になりますか?

頼んでいないというだけでは決まりません。見るのは、その時間に仕事をしていたかと、会社がそれを分かって受け入れていたか、または始業からでは間に合わず、早く始めざるを得なかったかです。

早く着いて車の中で待っているだけで、仕事をしておらず会社から指示も受けていなければ、労働時間(賃金を払う対象になる、働いた時間)ではありません。渋滞を避けるなどの理由で自分から早く来る朝がこれに当たると、国のリーフレットは示しています。

反対に、会社が「来い」と言っていなくても、早く来て働いていることを会社が分かっていて受け入れていれば、会社の指示の下で働いていたと見られることがあります。これを黙示の指示といいます。労働時間かどうかは就業規則の定めによらず、義務づけられていたか、せざるを得ない状況だったかなどから個別に判断する、と国のガイドラインは示し、最高裁も規則の定めでは決まらないと判断しています(平成12年3月9日判決)。

「おう、早いな」と声をかけて通り過ぎる朝が毎日続く。誰も命じていなくても、受け入れている形に近づいていきます。朝の場面ごとの見方は、次のとおりです(※2026年11月時点)。

朝の場面見るところ扱いの目安
早く着いて、車の中で待っている仕事をしていないか。指示を受けていないか労働時間ではない(国のリーフレット)
頼んでいないのに、道具の準備や積込みを始めている会社が分かっていて受け入れているか。始業後では間に合わない仕事か分かっていて受け入れ続けるか、始業後では間に合わず早く始めざるを得ない仕事なら、労働時間になりえる
会社の指示で資材を積み込む・受け出す会社が指示しているか始業前でも労働時間(最高裁の考え方)
会社に集まって積み込み、社用車で現場へ向かう集合、積込み、乗り合いを会社が指示しているか指示していれば、一般に移動の時間も労働時間に当たる(国のQ&A追補分)。直行が自由な中で、職人どうしが任意に乗り合っているだけなら当たらない
朝礼で業務の連絡を受ける出席が義務か。出ないと注意されるか出席が義務の職場で、朝礼と持ち場までの移動を労働時間とした裁判例あり(警備会社の事案・オーイング事件)
会社が全員に出席を求める安全の打合せ会社の業務として開いているか出席が義務の安全教育は労働時間(国の建設業向けQ&A)

迷うのは、たいてい、頼んでいないのに仕事を始めている朝です。

申請が上がってきたら、判を押すかどうかをどう決めますか?

その朝に何時から何をしていたかと、その仕事が始業からでは間に合わなかったかの2つを聞いて、1枚ずつ決めます。もう過ぎた朝は、下の表のとおり、社長や職長が知っていたかと、これまで同じ早出を認めてきたかも見ます。押す時も返す時も、本人に言葉で伝えます。

判の力は、片方にしか働きません。押せば、その時間は会社が認めた労働時間になります。押さなくても、働いていた時間が消えるとは限りません。労働時間かどうかは、紙の判ではなく、その時間の実態で決まるからです。だから判はねぎらいではありません。やる気への感謝は言葉で伝え、これから頼む朝の判は、必要な仕事の時間にだけ押す。もう働いた朝の判は、働いた時間を記録に残してから決める。そう分けると、返す時の気まずさはずいぶん軽くなります。

明日から先の朝は、聞いた答えで分かれます。「段取りが気になって」だけなら、頼む仕事ではありません。「始業からでは元請の朝礼までに荷を降ろせない」なら、頼んでいないのではなく、段取りが早出を求めています。これは断る話ではなく、頼むか、段取りを直す話です。朝の積込みが同じ人に偏っているなら、担当を交代にするなど、朝の組み方から変える手もあります。

毎朝必ず要る仕事なら、1枚ずつ判を押すより、始業の時刻そのものを実際に合わせて書き直す道があります。ただ、変形労働時間制を使わない会社の所定労働時間(会社が決めた働く時間)は、休憩を除いて1日8時間・週40時間までです。今の所定が8時間なら、始業を早めた分だけ終業も早めます。終業を動かせない会社は、始業はそのままにして、毎朝の早出を36協定の範囲で会社が頼む時間外として決め、割増を払います。所定が8時間より短い会社が始業を早めて1日を延ばす時は、賃金を据え置くと時間あたりの額が下がるので、始業と終業と賃金を一緒に見直します。

目の前の1枚(口で聞かれた朝も同じ)社長がすること
前もって出た申請で、始業からでは間に合わない仕事判を押す。会社が頼んだ時間として記録する
前もって出た申請で、始業からで間に合う仕事理由を添えて返し、その時間は働かないと伝える
もう過ぎた朝の申請で、車で待っていただけ仕事も指示もない時間なので押さない。理由を本人に伝える
もう過ぎた朝の申請で、仕事をしていた。社長や職長が知っていて止めなかったか、始業からでは間に合わない仕事だった何時から何をしたかを記録し、押す側で考える。次からは前もって出すよう伝える
もう過ぎた朝の申請で、仕事をしていた。社長も職長も知らず、始業からで間に合う仕事だった何時から何をしたかを記録し、これまで同じ早出を認めてきたかを確かめて、押すかを決める。次からは前もって出すよう伝える
申請はないが、働いているのを見かけた朝すぐ止めるか、必要な仕事なら申請を出してもらう。どちらの朝も、止めるまでに働いた時間と内容を記録する

冒頭の1枚は、もう過ぎた朝に仕事をしていた1枚です。工具箱を開ける朝を社長も見ていて、止める決まりもまだ無かった朝なので、押します。押すのは、その時間を会社が認めた労働時間として残すためです。次の朝からどうするかは、言葉で伝えます。

たとえば、「この1枚は押す。働いた分は払う。ありがとう。ただ、この積込みは始業からで間に合う。明日からは、始業まで工具箱を開けなくていい。早く始めたい段取りがある時は、前の日に言ってくれ」。前の日に申請が出た時や、「明日6時から積み込んでいいですか」と聞かれた時は、要る朝なら「頼む」、要らない朝なら「始業からで間に合う。聞いてくれて助かる」と返します。止めたのはやる気ではなく、始業前の仕事です。早く着いて車で待つのは構いません。早く来るかどうかは本人が決める。早く始めるかどうかは会社が決める。本当にやってほしい朝は、断らずに頼めばいい。

言われた側が、そのまま引き下がるとは限りません。聞かれそうなことには、社長の答えを先に持っておきます。

  • 「あいつの早出はよくて、なんで俺はだめなんですか」と聞かれたら、「人で分けているんじゃない。あの朝は元請の朝礼までに荷を降ろす仕事があったから、俺が頼んだ。今朝の仕事は始業からで間に合う。お前にも、要る朝は頼む」。
  • 「金はいらないから、朝やらせてください」と言われたら、「気持ちはありがたい。でも、朝から無理をするな。始業までは車で休んでいてくれ。それに、黙ってやっているのを俺が見ていたら、頼んだのと同じと見られることがある。要る仕事なら前の日に言ってくれ。要ると決めたら俺が頼む」。
  • 「始業からじゃ終わらないんです」と言われたら、「それなら仕事の量と段取りの話だ。どの仕事が朝に回っているか教えてくれ。頼むか、組み方を変えるかを決める」。

不満そうな顔のまま工具箱を閉める朝もあります。誰に聞かれても答えが同じなら、次の朝も同じ話ができます。

断ったのに、翌朝また工具箱を開ける人もいます。その分まで払えば、言うことを聞かない者が得をするように見えます。でも、断っただけで止めずに、そろえた道具で現場を回せば、会社はその朝の仕事を受け取っています。決まった答えの無い場面ですが、断った後も働いていた朝は、働いた時間を記録し、払う側で考えるのが安全です。

止めるのは、始業前の仕事を生まないためです。許可のない残業が労働時間と認められなかった裁判例の会社も、許可なく夜に残ることを禁じ、残る人に申請を出すよう注意を重ねていました(三誠産業事件)。御社なら、工具箱を開けている朝は始業まで手を止めてもらい、理由を聞きます。朝が要る仕事なら、前の日の申請に回します。続く時は、止めた日と理由を記録に残し、仕事の量と段取りから見直します。

社長の目が届かない朝もあります。遠い現場、直行の朝、乗り合わせの車が先に着く朝です。見ていなかったというだけでは片づかないので、見る人と確かめ方を先に決めておきます。

  • 頼む朝は、前の日に言う。明日の始業の時刻と、早く始めてほしい人とその仕事を、前の日の夕方に伝えます。
  • 現場で止める人を決める。職長に、申請のない早出は止めることと、朝いちばんに来た人の時刻と最初の仕事を1行送ることを頼みます。
  • 1人の現場は、本人が送る。始業の時にスマホで時刻と最初の仕事を送ってもらい、日報や元請の入退場記録があれば見比べます。

事前申請制を入れれば、申請のない早出は払わなくてよいですか?

いいえ、申請制を入れただけでは決まりません。裁判例で分かれ目になったのは、規則に書いてあるかどうかより、毎日の運用でした。多くは終業後の残業についての1件ごとの判断ですが、同じ物差しを朝に当てはめると、自社の朝を確かめる問いが4つ取り出せます。

  1. 毎日、回っているか。出す・押す・確かめるが、毎朝動いているかです。申請と承認を毎日書面で回し、翌朝に上司が確認していた会社では、命令のない時間は労働時間と認められませんでした。始業前も、チャイムまでは自由時間とされていた点などから認められていません(ヒロセ電機事件)。
  2. 知っていて受け入れていないか。早出を見かけた時に、止めるか頼むかを決めているかです。命令の手続があっても、上司が時間外の勤務を日ごろから見て受け入れていた職場では、労働時間と判断されました(多摩教育事務所事件・公務員の事案)。許可願のない残業を把握しながら放置していたことがうかがわれた会社でも、残業が認められています(ゴムノイナキ事件)。
  3. 所定の時間で終わる仕事か。始業後に回せない積込みや段取りが、誰かの朝に乗っていないかです。所定の時間内に終わらない仕事を与えられていたことは、上の公務員の事案で労働時間と判断された事情の1つでした。
  4. 申請すれば通る道があるか。必要な朝に、出せば認められると職人が分かっているかです。上の三誠産業事件の会社は、申請があれば許可していました(21時以降の残業の事案で、21時までの分は認められています)。

当事務所では、頼んでいない早出は、申請を通さない限りさせない、見かけたら黙って認めずに止める、という運用を、申請制とセットでお勧めしています。決まっていれば、職人も今朝は何と言われるかを読まなくて済みます。

働いた時間に当たる早出は、残業代と36協定の上限にどう数えますか?

働いた時間に当たる早出は、その日の労働が8時間を超えるかどうかで、割増のつく残業になるか、割増のない賃金の支払いになるかが分かれます。どちらでも、払わなくてよい時間にはなりません。

この節の30分・7時間30分・22日と日当の額は、計算の手順を見せるための仮の数字です。

計算例(30分の早出が働いた時間に当たり、ほかに残業がない日)1日の労働時間支払い
所定労働時間が8時間の会社8時間30分30分は割増のつく残業
所定労働時間が7時間30分の会社8時間法律の割増はつかないが、30分の賃金は要る。自社の規則で所定を超えた分に割増を付けている会社は、そのとおり払う

1日8時間に収まっても、その週の労働が40時間を超えれば、超えた分は割増の対象です。午前5時より前に働いた分には、時間外になるかどうかにかかわらず、深夜の割増(25%以上)も付きます。

日当で払っている職人も、考え方は同じです。日当は、何時間働く日の賃金かを決めて考えます。その時間を超えて働いた早出は、日当とは別に足します。ほかの手当がなく、その月の時間外が60時間以内で、深夜に当たらない場合、所定8時間で日当16,000円なら1時間2,000円、時間外の25%増しで2,500円なので、30分の早出は1,250円です。朝の分を日当に含める形にするなら、内訳と時間数を決めておきます。決まっていないと、残業代を払ったと認められないおそれがあります。今の日当の額のまま朝の分を切り分ける形も、時間あたりの額が下がるうえ、同じおそれがあります。決め方は「日当に残業代込み」は通る?にまとめています。

残業は36協定(残業をさせるために結んで届け出る取り決め)の範囲でしか命じられません。早出が仕事の時間と認められれば、法律の8時間・40時間を超えた分は、月45時間・年360時間などの数に入ります(※2026年11月時点)。早出の時間外は、ほかの時間外と合わせて月ごとに合計し、36協定の限度時間と比べます。1年単位の変形労働時間制(対象期間が3か月を超えるもの)を使う会社の上限は月42時間・年320時間で、時間外の数え方も別になります。

朝の30分は小さく見えます。でも計算例として、所定8時間の会社で毎朝30分の早出が月22日続けば、それだけで11時間。月45時間の4分の1近くを、朝だけで使います。朝の分も同じ欄に入れて見ておきます。今の現場の数字は時間外労働の上限チェックリストで確かめられます。

朝の分まで記録しておく値打ちは、給料日の後にも出ます。何年かたって「あの朝は」と聞かれても、紙を出して答えられます。

これからの決まりと、これまでの朝の分は別の作業です。これまでの分はその時の実態で決まるので、規則を変えても消えません。決まりは来月からでも、朝の記録は今から始めます。働いた時間に当たる朝が賃金台帳の時間の欄に入っていないと分かれば、台帳と勤怠や日報を並べて差額を計算すると、大きさが分かります。分かった分は、いちばん早く払える給料で払います。先に片付けておくと、明日からの1枚を迷わず扱えます。

申請書と就業規則には、何を書けばいいですか?

申請書には理由と時間と承認と実際に働いた時間の欄を、就業規則には始業前の仕事の申請と記録の決まりを書きます。国が決めた様式も、厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の条文例も見当たらないので、自社の朝に合わせて決めます(※2026年11月時点)。

申請書には、申請した日時、理由、希望の時間、承認した人、実際に働いた時間、翌日の確認を書く欄があると、後で運用の記録になります。断った時は、理由と伝えた日も残します。

欄が多く見えても、社長が聞くのは2つです。事務員のいない会社なら、スマホの1行で足ります。本人は前の日に理由と時間を「明日6時から積込み。朝礼前に荷が要る」と送り、当日に始めた時刻をもう1行送ります。社長は「頼む」か「始業からでいい」の一言を返し、断った時は理由と伝えた日を残します。翌日に、自分や職長が見た時刻か、日報などと見比べて確認の1行を残します。頼む朝は社長から前の日に言うので、本人が送るのは始めた時刻だけです。

外せないのは、国のガイドラインが求める「始業・終業時刻をきちんと記録する」「申告を妨げない」の2点です。自己申告で時間を記録している会社で、「月○時間までしか申請を受けない」「上限を超える申告は認めない」とすると、ガイドラインが禁じる「申告を妨げる措置」になりえます。書けない空気ができると、早出は消えずに、紙から見えなくなるだけです。

何時に来て何時に帰ったかは、会社が確かめて記録する責任があり、労働時間の記録に関する書類は3年間の保存が必要です(※2026年11月時点)。

就業規則には、たとえば次のように書きます。就業規則の無い10人未満の会社は、同じ決まりを全員に渡す紙で始められます。

規定例(始業前の業務と事前申請)

第○条 従業員は、始業時刻より前に業務を行う必要があるときは、前日までに会社が定める方法で申請し、承認を受けるものとする。急を要するときは口頭で承認を受け、翌日までに申請する。会社が前日までに指示したときは、申請を要せず、承認を受けたものとする。

2 会社は、申請の内容を確認し、承認するかどうかを本人に伝える。承認した時間は労働時間として扱う。

3 承認を受けていない者は、始業時刻より前に業務を行ってはならない。会社は、業務を行っている者を認めたときは、これをやめさせる。

4 始業時刻より前に業務を行った者は、承認の有無にかかわらず、実際に業務を行った時間と内容を申告し、会社は翌日までにこれを確認して記録する。会社は、時間数に上限を設けること、承認がないことだけを理由に記録を認めないことなど、実際の時間の申告を妨げる扱いをしない。承認のない業務の時間が労働時間に当たるかは、実態に基づいて判断する。

5 始業時刻より前に到着しても、業務を行わず、会社の指示も受けていない時間は、労働時間としない。

規定例です。始業の時刻や現場の回り方に合わせた調整が要ります。条文を入れただけで、申請のない早出を払わなくてよくなるものではありません。条文が働くのは、申請のやり取りに加えて、見かけたら止める運用と、仕事の量の見直しがそろった時です。それでも、申請のない早出が働いた時間に当たるかは、その朝の実態で決まります(規定例の4)。

規定例を足す時も、始業の時刻を書き直す時も、常時10人以上の事業場なら、過半数労働組合があればその組合、なければ過半数代表者(従業員の過半数を代表する人)の意見を聞き、意見書を付けて届け出ます。全員への周知は、人数に関係なく要ります。始業を早めて1日の時間が延びる書き直しは、賃金が同じでも働く側に不利な変更なので、次の段落と同じ進め方になります。特定技能の方がいる会社は、所定労働時間が増える書き直しに、出入国在留管理庁への届出も要ります(変更の日から14日以内)。1号の方の所定労働時間が増える時は、国土交通省の建設特定技能受入計画の事前の変更申請も要り、認定されるまでは今の計画どおりに動かします。その方に不利な変更は、原則として認定されません。

これまで申請なしの早出も払ってきた会社が扱いを変える時は、規則より先に職人への説明です。ただし、説明すれば変えてよい、とはなりません。給料が下がる方向の変更は、本人の合意を得て進めるのが原則です。就業規則や賃金規程、10人未満の会社が全員に渡している決まりの紙に、早出の払い方が書いてある時は、本人が合意していても、それを下回る約束はその部分が無効になるので(労働契約法12条)、その規則や紙も一緒に直します。合意がない人には、就業規則を変える形で、周知と変更の合理性が問われます(労働契約法10条)。働いた時間に当たる早出は、扱いを変えた後も払います。順番は決まりを変える時に、職人へどう説明するかにまとめています。

早出の決まりができると、判を押す朝と給料日はどう変わりますか?

判を押す前に聞くことが2つに決まり、給料日には早出の理由をその場で話せるようになります。

要る朝は頼み、要らない朝は理由を添えて返す。もう働いた朝は、記録に残してから判を決める。月末に勤怠を締める夜、朝の30分が誰の何の仕事だったかが紙で分かります。給料日には、明細を渡しながら「ここの30分は、あの現場の積込みで頼んだ分だ」と言えます。「なんであいつだけ」と聞かれても、答えは同じです。

工具箱を開ける側から見ても、朝は分かりやすくなります。頼まれた早出は記録に残り、その分が給料に入っているかを自分で確かめられます。早く着いた日は、車の中でコーヒーを飲んでいて構わない。どの朝が仕事かを、空気ではなく紙で確かめられます。

北海道の建設会社の事例も参考にしてください。

何から手を付ければいいですか?

来週の5日間、朝いちばんに来た人の時刻と、その人が最初に手を付けた仕事をメモしてください。カレンダーの裏で構いません。社長が会社にいない朝や遠い現場の分は、職長から1行送ってもらえば足ります。並べると、「頼む朝」「返す朝」「段取りを直す朝」が見えてきます。

会社に集まって車で向かう朝があるなら、次は乗り合わせの移動は残業になる?を読んでください。積込みの後の移動の数え方が分かります。

社員の方でこのページを読まれた方は、社長に見せていただくのがいちばんの近道です。ご相談は会社からお受けしています。

メモを規則に落とす進め方は、建設業の就業規則作成のページでご案内しています。当事務所の料金は次のとおりで、全体は料金表にあります。

  • 顧問の契約なしでの就業規則の作成は、スポット(1時間15,000円・15分単位・税別・2026年10月時点)でお受けしています。今の規則に申請の決まりを1つ足すだけの時の扱いは、無料相談でご確認ください。
  • 顧問の場合、就業規則の作成・改定は基本料金の中です。基本料金は月22,000〜28,000円(契約の年数が長いほど下がります・税別・2026年10月時点)。申請の決まりを足す改定も、そのご相談も、36協定の作成・届出も、この中で対応します。
  • 当事務所が従業員の前で話す説明会を頼む時は、別料金です(1回50,000円・税別・2026年10月時点)。

その朝に積む荷と元請の朝礼の時刻が分からなければ、1枚の判は決められません。私が建設業に絞っているのは、そのためです。

前の日の夕方、現場から戻った職人に声をかけます。「明日は元請の朝礼までに荷を降ろす。6時半から積込みを頼む。ほかは始業からでいい」。早出が、朝に見つけて迷うものから、夕方に社長が頼むものに変わります。どちらを選んでも気まずい1枚は、そのぶん減っていきます。頼んでいない朝の1枚が上がっても、2つ聞けば、次の朝に「ありがとう、明日は始業からでいい」と言うのか、頼んで判を押すのかが決まります。申請書は、断るための紙ではなく、朝の仕事を見えるようにする紙になっています。

判を押すか迷った1枚、または口で聞かれて答えに迷った朝があれば、その話を聞かせてください。Zoom30分の無料相談です。押すか返すかが決まるだけで終わっても構いません。遠方の会社でも、オンラインで進められます。

最新の制度は、厚生労働省などの公式サイトでご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

足りるとは言い切れません。同じ趣旨の定めがあった裁判例でも、裁判所が理由に挙げたのは、許可制の厳格な運用とそれを前提にした指導でした。規則の一文に頼らず、申請のない早出はさせない・黙認しない運用までそろえます(※2026年11月時点)。
朝の扱いは、むしろ分かりやすくなります。頼まれた早出は記録に残り、その分が給料に入っているかを自分で確かめられます。必要な朝は申請すれば通る道があり、頼まれていないのに早く来て待つ必要もなくなります。全員に同じ理由で説明されるので、人によって扱いが違うという引っかかりも小さくなります。
出席が義務になっているか、出ないと注意されるなどの不利益があるかで分かれます。朝礼で業務の連絡があり、出ないと注意される職場で、朝礼と持ち場までの移動が労働時間と判断された裁判例があります(警備会社の事案)。KY活動(危険予知活動)も同じ見方で確かめます。出席が業務上義務づけられた安全教育の時間は労働時間です(国の建設業向けQ&A)。
見ていなかったというだけでは片づきません。始業・終業の時刻を確かめて記録する責任は会社にあり、記録と本人の申告が大きくずれていれば、会社が実態を調べて直すよう国のガイドラインは求めています。職長に朝いちばんの時刻と最初の仕事を送ってもらう、スマホの打刻や日報に残すなど、確かめ方を先に決めておきます。
紙でもスマホでも、受け方は会社が決めることです。大事なのは、誰がいつ承認し、実際に何時間働いたかが、後から見返せる形で残ることです。口で受けた朝も、スマホに1行残します。急ぎの朝の受け方も先に決めておくと、現場が止まりません(※2026年11月時点)。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用と定着の設計まで踏み込みます。

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