遠方手当とは?相場より先に決める基準と順番|移動の残業代との分け方と額の出し方
遠方手当は法律に決まりがなく、どんな手当を設けるか、いくらにするかは会社が決めます。決める順番は、まず、どの移動が労働時間に当たるかを確かめ、当たる移動には賃金を払い、当たらない移動の負担に手当で応え、額は過去1年の支払いから出す、というものです。業種・規模別の公的な統計は、確認できる範囲では見当たりません(※2026年11月時点)。決まった額で払う手当は、残業代の計算には入れて考え、最低賃金は入れずに足りているかを先に確かめます。働く側も、どの現場にいくら付くかを行く前に確かめられます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます夕方の事務所。机に広げた地図の山あいに、赤い印がひとつ付いています。来月から入る現場です。昼間、職人に聞かれました。「片道2時間の現場は、いくら付けるんですか」。額だけなら、電卓を叩けば決まります。落ち着かないのは、決めたあとです。「なんでこの額なんですか」と聞かれた時に返す言葉が、まだ手元にありません。スマホに出てくる金額は、どの業種の、どの規模の、どの距離の話なのかも分からず、自社の片道2時間は入っていません。
額の理由は、よその数字からは出てきません。先に、どの移動が働いた時間に当たるかを確かめ、残った遠さの負担に、自社が1年間払ってきた額から1日の額を出す。この順番を規程に書いておけば、それが、どの現場にいくら付けるかを測る自社の物差しになります。
この記事で分かることは、次の4つです。
- 遠方手当とは何か。法律の決まりと、出張日当との違い
- 金額より先に決める順番と、移動の残業代との分け方
- 過去1年の支払いから1日の額を出す計算の手順
- 規程に書く文例と、残業代・最低賃金・社会保険への影響

遠方手当とは何ですか?法律で決まった手当ですか?
遠方手当は、遠い現場へ通う負担に応えるために会社が決めて払う手当で、法律に決まりはありません。どんな手当を設けるか、いくらにするかは会社が決めます。厚生労働省のモデル就業規則(国が公開している就業規則のひな形)も、手当の種類と金額は各事業場で決めるとしています。そのひな形の賃金の章にも、家族手当や通勤手当の規程例はあっても、遠方手当の例はありません。全業種向けのひな形なので、片道2時間の答えが見つからないのは当たり前です。
出張日当との違いは、何に払うかです。出張日当は日給のことではなく、宿泊や長い移動で増える細かな出費を補うお金です。遠方手当は、日帰りでも遠い現場へ通う負担に払うお金です。法律の定義ではないので、中身は会社ごとに決めます。
遠方手当の金額より先に、何を決めますか?
金額より先に決めるのは、どの移動が働いた時間に当たるかを実態に当てて確かめ、当たらない移動の負担に手当で応える、という順番です。額は、そのあとです。
手当を付けても、労働時間(会社の指示の下で働いた時間)に当たる移動が労働時間でなくなるわけではありません。移動が労働時間かどうかは、「移動手当を払っているから」「通勤扱いと決めたから」では決まらず、その間、会社の指示の下にあったかどうかで決まります(最高裁の判断。社内での行為についての判断で、車での移動そのものを扱った判決ではありません)。当たる移動には賃金が要り、法定の時間外や深夜に当たるなら、契約に書いていなくても割増賃金(残業代)を払う義務があります(最高裁の判断。仮眠時間の事案)。
では、どの移動が当たるのか。実態を見て個別に判断されますが、厚生労働省の「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A(追補分)」は、社用車の乗り合わせについて、一般的に次のように整理しています(※2026年11月時点)。
| 移動の形 | 労働時間か |
|---|---|
| 社用車に乗り合わせて現場へ向かうよう、会社が指示している | 当たる |
| 移動の前に会社へ集まって資材を積む、現場から戻った後に道具の清掃や資材の整理をするよう、会社が指示している | 当たる |
| 移動の車内に社長や上司も乗っていて、打ち合わせをしている | 当たる |
| 現場への直行も現場からの直帰も自由な中で、職人どうしが任意に、集まる時刻や運転する人を決めて社用車に乗り合わせている | 当たらない |
上の3つは、手当ではなく賃金で払う移動です。4つ目の形でも、会社がだれかに運転や運搬を頼めば、頼まれた人の移動は働いた時間に当たるのが基本です。手当の出番は、働いた時間に当たらない移動の負担です。
朝に会社へ集まり、社用車に道具を積んで出るのが決まりの会社は、1つ目か2つ目の形です。その形なら、手当の前に移動を時間で数えます。手当を使うのは、2つの時です。1つは、直行も直帰も本当に選べて、どの車で行くかを会社が決めず、移動中に仕事を頼まない現場を作った時です。道具を現場に置くのは、その形に近づける手の1つです。もう1つは、時間で払う人に遠さの分を上乗せする時です。
遠い現場で動くお金は、分けると4つです。
| お金 | 何に払うか | 額の決まり方 | 職人への一言の例 |
|---|---|---|---|
| 移動の賃金・残業代 | 働いた時間に当たる移動 | かかった時間と単価で決まる | 「この移動は働いた時間だから、時間で払う」 |
| 高速代・宿泊代 | 本来は会社が負担する費用 | 実際にかかった額 | 「かかった分は会社が持つ」 |
| 出張日当 | 宿泊や長い移動で増える細かな出費 | 旅費規程の区分で決める | 「出先で増える出費の補いだ」 |
| 遠方手当 | 働いた時間に当たらない移動の負担 | 過去1年の支払いから会社が決める | 「遠い現場へ通う負担に応える分だ」 |
「なんでこの額なんですか」に答えにくいのは、この4つが1つの額の中に混ざっている時です。分けてあれば、どのお金にも理由が1つずつ付きます。
移動の残業代を払っている人に遠方手当も付けると、二重ですか?
何に払うお金かを分けてあれば、二重とは限りません。働いた時間に当たる移動には賃金、当たらない移動の遠さには手当、と分けて決めておけば、二重払いも払い漏れも防げます。
給料日の前の晩、同じ遠い現場に出た2人の明細を並べます。片方には移動の残業代、もう片方には遠方手当。乗り合わせが任意で、会社が片方にだけ運転を頼んでいれば、こういう月が出ます。運転した職人が聞いてきます。「ハンドルを握った俺には付かないんですか」。
答えは、こう言えます。「運転を頼んだ分は仕事だから、移動の時間ごと給料で払う。手当は、働いた時間に当たらない移動の遠さに払うものだ。だから運転した日は、手当じゃなくて時間で付く」。
助手席の職人は、逆を聞いてきます。「同じ車で行ったのに、なんであいつの方が多いんですか」。答えは、「運転は俺が頼んだ仕事だから、その時間を払っている。お前の移動には、遠さの分を手当で付けている」です。
運転した人にも遠さの手当を付ける決め方もあります。どちらにするかは会社が決めて、規程に書きます。働いた時間に当たる移動の支払いは、どちらの会社でも必ず要ります。
迷いやすいのは、ほかに4つです。
- 出張日当と移動の残業代を両方払っている月は、二重ですか。別のお金です。出張日当を払っていても、労働時間に当たる移動の残業代が済んだことにはなりません。
- 手当の中に、移動の残業代を含めたことにできますか。それは固定残業代の話になり、成り立つための要件があります。当事務所は、小規模の建設会社には固定残業代を原則としてお勧めしていません。
- これまで残業で払ってきた移動を、手当へ移せますか。呼び名を変えるだけでは、労働時間のままです。移せるのは、移動の実態が変わる時です。積込みをやめただけでは足りず、直行直帰が自由で、移動中に仕事の指示も移動手段の指示もなく、自由に使える時間になっていることが要ります。
- これまでの分はどう考えますか。これからの決まりとは別の作業です。これまでの分はその時の実態で決まり、規則を変えても消えません。働いた時間に当たる移動が時間の欄に入っていなかったり、法定の時間を超えた分の割増を、計算のもとに入る手当を除いた単価で出していたりすれば、賃金台帳と勤怠を並べて差額を出すと、大きさが分かります。分かった分は、いちばん早く払える給料で払います。ここを先に片付けておくと、新しい額の理由を話す時に、話がまっすぐ通ります。
遠方手当の相場はいくらですか?基準と額はどう決めますか?
建設業の遠方手当の金額を業種・規模別に示した公的な統計は、確認できる範囲では見当たらないので(※2026年11月時点)、額は相場を探すより先に、過去1年に払ってきた手当や出張日当を並べて、そこから出します。
数字の手がかりが1つあります。当事務所の標準の規程では、出張日当は、宿泊を伴う出張、または片道60km以上を目安に、1日3,000円です。これは出張日当の目安で、遠方手当の額ではありません。御社の数字でも、業界の相場でも、国が決めた額でもありません。決め方は建設業の出張手当の相場は?日当3,000円を目安に決める方法にまとめています。片道60km以上の日帰りの現場は、出張日当の側にも遠方手当の側にも入りえるので、どちらで払うかを先に決めて書いておきます。どちらで払っても、扱いは名前ではなく中身で決まります。出張日当の側で払うなら、出張で増える出費を補う形に、実際の払い方もそろえます。同じ遠さの負担に、2度は払いません。
よその額を写しても、「なんでこの額か」の答えにはなりません。相場の代わりになるのは、手元の1年分です。次の順に紙へ書き出します。
- 過去1年の遠い現場を並べる。現場ごとに、片道の時間と距離、行った人、延べ日数(人数×日数)を書きます。
- 渡したお金を分けて書く。移動の残業代、高速代・宿泊代、出張日当、手当を、人ごとに別の欄にします。移動の分も遠さの分も1つの額で渡してきて、分け方の決まりが無ければ、手当の欄にそのまま書き、移動の時間数を隣の欄に書きます。
- 移動を2つに分ける。さきほどの移動の表に当てて、だれの移動が働いた時間に当たるかを現場ごとに確かめます。当たらない移動が、手当の出番です。
- 付け始める遠さを決める。現場を遠い順に並べ直すと、出発が暗いうちになる、帰りが遅くて翌朝がきつい、泊まりに切り替えてきた、といった負担の変わり目が見えます。そこが自社の区切りです。何キロから、何時間から付けるかに、法律の決まりはありません。
- 1日の額を出す。足すのは、日帰りの遠い現場で遠さの分として渡してきた手当や出張日当だけです。働いた時間の賃金である移動の残業代と、実費の高速代・宿泊代は足しません。
計算例です。計算の手順を見せるための仮の数字です。相場でも目安でもありません。去年、日帰りで通った遠い現場が3つあり、遠さの分として次の額を渡していたとします。
| 現場 | 片道 | 延べ日数 | 渡した額 | 1日あたり |
|---|---|---|---|---|
| A | 1時間40分 | 30日 | 30,000円 | 1,000円 |
| B | 2時間 | 40日 | 60,000円 | 1,500円 |
| C | 2時間20分 | 30日 | 60,000円 | 2,000円 |
| 合計 | 100日 | 150,000円 | 1,500円 |
150,000円を100日で割ると、1日1,500円です。去年と同じ現場の量なら、手当の額の合計は変わらず、現場ごとのでこぼこだけが消えます。ただ、出張日当で渡していた分を決まった額の手当に移すと、残業代の単価と社会保険料は動くことがあります。税の扱いも変わり得るので、顧問税理士に確かめます。
1,500円の1つの額にそろえると、遠さが額に出ず、いちばん遠いC現場の人だけが1日500円下がります。そこで、片道の時間で2段に分け、遠い現場ほど額が上になる形をお勧めします。片道2時間まではAとBの70日で90,000円なので、1日約1,286円です。100円単位に切り上げて、1,300円とします。2時間を超える現場はCの30日で60,000円なので、1日2,000円です。この2段で計算すると合計は151,000円です。切り上げた分だけ多くなりますが、去年の150,000円とほぼ同じです。
それでも、去年の額から下がる人が出ます。片道2時間のB現場に通う人です。この例では、出発が暗いうちになるのは片道2時間を超える現場からなので、2時間までを1つの段にしています。A現場とB現場は同じ段に入るので、去年のでこぼこがそろい、Bは1日1,500円から1,300円へ200円下がり、Aは300円上がります。総額がほぼ同じでも、下がる人がいる変更です。給料が下がる方向の変更は、本人の合意を得て進めるのが原則です。就業規則や賃金規程・旅費規程に、手当や出張日当の額が書いてある時は、本人が合意していても、それを下回る約束はその部分が無効になるので(労働契約法12条)、その規程も一緒に直します。合意がない人には、就業規則を変える形で、周知と変更の合理性が問われます(労働契約法10条)。
B現場に通う人には、朝礼より先に1人ずつ話します。「遠さで段を分けたら、片道2時間までは1日1,300円になる。去年より下がる200円は、期間を決めて、差を埋める手当で払う。いつまで払うかは、この紙に書いてきた」。B現場に通う人が下がる時の話し方は、決まりを変える時に、職人へどう説明するかにまとめています。
1,300円も2,000円も、去年とほぼ同じ総額から出した、もとになる額です。上げるかどうかは会社が決めます。1日500円上げると、去年と同じ現場の量で、手当の額だけで年に50,000円増えます。職人に見せるのは人ごとの欄ではなく、現場ごとの合計の表です。
移動の残業代が減る人が出る時。減らしてよいのは、移動の実態が変わって、働いた時間に当たらなくなった分だけです。呼び名を手当に変えただけなら、残業代は減らせません。
実態が変わる時は、手当1つでは埋まりません。ここも計算の手順を見せるための仮の数字です。遠さの手当ではなく、移動を時間で払ってきた職人(運転を頼まれていた人など)で考えます。日給16,000円・所定8時間なら1時間2,000円、時間外は25%増しの2,500円です(ほかの手当もなく、その月の時間外が60時間以内で、深夜に当たらない場合。60時間を超えた分は5割以上)。現場で8時間働く日に片道2時間なら、往復4時間×2,500円で、移動の残業代は1日10,000円。ここに手当1,300円が付いても、1日8,700円の差が出ます。人ごとに比べる時は、額を出す時に足さなかった残業代も足して、去年の受け取りと新しい額を並べます。
差が出る職人には、3つの手があります。額を見直す。差を埋める手当を期間を決めて付ける。その人の移動は今のまま時間で払う。この1日8,700円の差は、本人にとっては暮らしの額です。直行直帰に切り替われば、会社に集まって積み込む朝がなくなり、家を出る時刻が遅くなる人もいます。どの手にするかは、その両方を本人に話してから決めます。これも給料が下がる方向の変更なので、さきほどの合意の話がかかります。差を埋める手当にする時は、その手当も残業代の計算のもとに入れて考え、終わる時期と終わった後の額を、合意をもらう前に紙で示します(規則で変える時は規則に書きます)。積込みの担当を外して直行直帰に切り替えた事例でも、残業代が減った従業員から不満が上がり、移動手当・出張手当で補う形を導入まで進めました。
遠さの分の手当が、これまで無かった会社。割る数字がありません。この時は順番が逆になります。次の1年の遠い現場の延べ日数を見込み、年にいくらまで出せるかを会社が決めて、日数で割ります。同じ仮の数字なら、延べ100日に年100,000円で、1日1,000円です。額の理由は「今の見積で年に10万円までなら続けられる」で足ります。
遠方手当は、就業規則や賃金規程にどう書けばいいですか?
だれに・どんな条件で・いくら・いつ払うかを、賃金の決め方として賃金規程に書き、実費の精算や出張日当とは分けて書きます。
常時10人以上の労働者を使う事業場(会社全体ではなく、本社・営業所などの単位で数え、パートも含みます)では、賃金の決定・計算・支払の方法を就業規則に書いて届け出る義務があります(労働基準法89条)。賃金規程や旅費規程のように別に作る規程も就業規則の一部です。こうした事業場で作る・変える時は、過半数労働組合があればその組合、なければ過半数代表者(従業員の過半数を代表する人)の意見を聞き、意見書を付けて届け出ます。作った規程を従業員に周知することは、人数に関係なく要ります。10人未満で就業規則を作る義務がなくても、雇う時に渡す労働条件の書面には、賃金の決め方として、手当の額か支給条件を書きます。
規定例(賃金規程・遠方手当)
第○条 会社は、別表に定める現場へ通う従業員に対し、遠い現場へ通う負担に応えるため、遠方手当を支給する。
2 遠方手当の額と対象の現場は別表のとおりとし、その月に対象の現場へ通った日数に応じて、賃金支払日に支払う。
3 会社の指示で運転その他の業務を行い、移動が労働時間に当たる者に遠方手当を支給するかどうかは、別表に定める。
4 遠方手当は、割増賃金の算定の基礎に含める。
5 労働時間に当たる移動は、遠方手当の有無にかかわらず労働時間として扱い、賃金を支払う。
6 高速道路の料金、宿泊費その他の実費は、遠方手当に含めず、旅費規程により精算する。同じ日について出張日当を支給する場合は、遠方手当を支給しない。
規定例です。距離で決めるか片道の時間で決めるか、日額か月額か、運転した人にも付けるかは、自社の現場に合わせた調整が要ります。別表は、さきほどの紙から作ります。
同じ遠い現場へ行く人の中にパートや有期雇用の人がいる時は、雇用形態だけで分けない設計が安全です。通勤手当や出張旅費は正社員と同じ内容で払うよう、国の指針が求めています。特定技能の方を雇っているなら、手当の付け方で日本人の職人より低くならないようにします。特定技能の方の手当を減らす・なくす時は、受け入れている会社から出入国在留管理庁への届出が必要になることがあります。1号の方の手当の額や支給の条件を変える時は、国土交通省の建設特定技能受入計画の手続きも要ります。手当を増やす変更も変更の届出が要り、その方に不利な変更は、変える前の申請が要り、原則として認定されません。出入国在留管理庁への届出が必要な時は、変更の日から14日以内です。
規程に書いてあると、新しい現場の話が来ても別表に当てるだけで、1日いくら付くかは見積を出す前に分かります。「片道2時間はいくらですか」と聞かれたら、別表の額をその場で答えられます。給料日の話も早く済みます。
職人の毎月も変わります。どの現場にいくら付くかが、行く前に分かります。「あの人はもっともらっていた」という話も、どの現場の、どの分かで確かめられます。
遠方手当は、残業代・最低賃金・社会保険の計算に入りますか?
残業代と最低賃金では、払い漏れを防ぐ向きが逆です。残業代は、実費の精算でなく決まった額で払う遠方手当を、計算のもとに入れて考えるのが安全です。最低賃金は、遠方手当を入れないで足りているかを先に確かめるのが安全です。残業代に入る手当でも、毎月の皆勤手当のように最低賃金には入らないものがあるからです。給与規程などに基づいて決まって払う手当は、社会保険の報酬に入ります。遠方手当を名指しで答えた国の資料は、確認できる範囲では見当たりません(※2026年11月時点)。当事務所では、移動手当や遠方手当は中身で見て、移動の時間への対価として払うなら、残業代の計算のもとに入れる前提で設計します。
| 何に払うお金か | 残業代の計算のもと | 最低賃金の計算 | 社会保険の報酬 |
|---|---|---|---|
| 高速代・宿泊代など、実際にかかった費用の精算 | 入らない | 入らない | 入らない |
| 旅費規程に基づく、実費の弁償としての出張日当 | 入れない(当事務所の整理)。毎月決まった額の上乗せなら入ることがある | 実費の弁償なら入らない | 実費の弁償なら入らない |
| 決まった額で払う遠方手当・移動手当 | 入れて考えるのが安全 | 入れずに比べるのが安全。入るのは、所定の労働に対して毎月払う賃金で、通勤手当などに当たらない分だけ | 給与規程などに基づいて決まって払うなら入る |
※2026年11月時点。実費の精算の扱いは、大阪府の労働相談資料、訪問介護についての国の通達、日本年金機構の資料の整理です。どの行も名前ではなく中身で判断されます。実費と関係なく決まった額を払っていて、中身が賃金の上乗せなら、精算のつもりでも賃金と見られることがあります。
残業代の計算。計算のもとから外せる手当は、法律で、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類です。遠方手当や移動手当は入っていません。「通勤手当」という名前にしても、距離や実費に関係なく一律の額なら外せません。手当を計算のもとに入れると残業1時間の単価も上がるので、作る前に増え方を見ておきます。
最低賃金。対象になるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。日給や月給を所定労働時間(会社が決めた働く時間)で割った時間額で見ます。移動の残業代や休日出勤の割増賃金は、この計算には入れません。通勤手当・精皆勤手当・家族手当も入れません。遠い現場へ通う負担に払う手当は、中身が通勤手当と見られれば入りません。地域別最低賃金は2026年10月から県ごとに順次上がっていて、自社の県の額と発効日は厚生労働省の一覧に載っています。
社会保険。保険料のもとになる報酬は、手当などの名前に関係なく、労働の見返りとして受けるものすべてです(臨時のものと、3か月を超える期間ごとのものは除きます)。ただ、除かれた分も、賞与などとして別に保険料がかかることがあります。
月額の移動手当のような固定的な手当を新しく付けたり変えたりすると、標準報酬月額(保険料を決める区切りの金額)の見直し(随時改定)が要ることがあります。対象になるのは、変わった後の給与を初めて払った月から3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額が、これまでの額と原則2等級以上違い、3か月とも支払基礎日数(給与の計算の対象になる日数)が17日以上(短時間の方は別の日数のことがあります)ある時です。手当を付けても、残業代が減って平均が下がった時のように、増減の向きが逆なら対象になりません。
手当を入れないと最低賃金に届かない時は、入れて計算する前に労働局か社労士に、日額で払う手当の社会保険の扱いは年金事務所に、それぞれ確かめます。
この3つを先に見ておけば、手当を作った翌月に「思ったより増えた」と驚かずに済みます。
何から手を付ければいいですか?
過去1年の現場の紙を1枚作るところから始めます。いちばん遠かった現場を1つ選び、そこへ行った人ごとに、渡したお金を移動の残業代、高速代・宿泊代、出張日当、手当の4つに分けて並べます。乗り合わせの移動の記事の明日の朝の車の紙があれば、その裏を使えば、紙は1枚で済みます。読んでいなければ、ここからで構いません。この紙が、どの現場にいくら付けるかを測る、御社の物差しの出発点になります。
上げる分をどこから出すかは、見積の話になります。この紙に見積に載せた額を足す話は、次に読む遠方費の見積書への載せ方に書いています。
顧問の契約なしでの就業規則の作成は、スポット(1時間15,000円・15分単位・税別・2026年10月時点)でお受けしています。今の賃金規程に遠方手当の決まりを1つ足すだけの時の扱いは、無料相談でご確認ください。就業規則の作成・改定は顧問の基本料金の中です。基本料金は月22,000〜28,000円(契約の年数が長いほど下がります・税別・2026年10月時点)。賃金規程や旅費規程も、この基本料金の中で作成・改定しています。規程への落とし込み方は建設業の就業規則作成のページで紹介しています。金額の一覧は料金表です。
現場への移動時間の扱いと出張手当の設計を、私は毎月のように扱っています。額の理由は、朝何時に出て、だれがハンドルを握り、どこで泊まるかまで聞いて、初めて言えるものです。私が建設業に絞っているのは、そのためです。
規程ができたあとの夕方。机の地図の山あいに、また赤い印がひとつ付いています。片道2時間。別表を開けば額は出ています。「なんでこの額なんですか」と聞かれたら、現場ごとの合計の表を出して言えます。「片道2時間を超えると、出発が暗いうちになる。だから2時間までと、その先で段を分けた。額は、去年の遠い現場で遠さの分として渡した額を、段ごとに延べ日数で割って出した。端数は切り上げた」。「去年のが安かったんと違いますか」と返す職人もいるでしょう。それでも、答えはあります。「総額は去年とほぼ同じまま、遠い現場ほど上になるように並べ直した。上げるかどうかは、年にいくら増えるかを見て決める」。職人の目に映るのは、去年の現場を1日ずつ数えて額を決めた社長です。額の理由は、よその相場からではなく、御社の1年の現場から出せます。
地図の赤い印、片道2時間の現場の話を、Zoom30分の無料相談で聞かせてください。30分で見るのは、その現場の移動が最初の表のどの行に当たるかと、どこから遠方の扱いにするかの線引きです。聞くだけで、額を決めるのは社内で、という形でも構いません。遠方の会社でも、オンラインでやり取りしながら進められます。
社員の方でこのページを読まれた方は、社長に見せていただくのがいちばんの近道です。ご相談は会社からお受けしています。
最新の制度は、厚生労働省などの公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A(追補分)(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001505976.pdf
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 三菱重工業長崎造船所事件 最高裁第一小法廷 平成12年3月9日判決(裁判所): https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52572.pdf
- 大星ビル管理事件 最高裁第一小法廷 平成14年2月28日判決(裁判所): https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52614.pdf
- 訪問介護の通達と周知の文書(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/000762748.pdf
- モデル就業規則 令和7年12月版(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf
- 18 賃金の考え方(最低賃金含む)(大阪府): https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/6136/018.pdf
- 最低賃金の対象となる賃金(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43898.html
- 社会保険事務のポイント Vol.5(日本年金機構): https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/info/jimupoint.files/Vol.5.pdf
- 所得税基本通達9-3・9-4(国税庁): https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm
- 特定技能の運用要領 令和8年10月版(出入国在留管理庁): https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf
- 建設特定技能受入計画のオンライン申請について【変更申請・届出】(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001603432.pdf
よくあるご質問
「うちの就業規則は、今のままで大丈夫?」
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ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
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