無断欠勤で音信不通の社員と、病気で長く休む社員。退職を内容証明と休職の満了日で整理した事例
「入社半年ほどの社員2人のうち、1人は無断欠勤で連絡が取れず、1人は病気で長く休んだまま、扱いが決まらない」
何日休んだら退職になるかは法律に一律の定めがなく、就業規則と手順で決めます。大阪の会社のご相談では、無断欠勤で連絡が取れない社員に出勤を促して退職の意思を確かめる通知を内容証明郵便で送り、期限が過ぎてから自己都合退職として処理しました。病気の社員は休職の条文どおりに始まりと満了の日付を決め、満了したら自然退職とする流れを整理しました。日付が決まれば、休んでいる本人も、いつまでに戻ればよいかと、満了後の傷病手当金を前もって確かめられます。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます始業の時刻を過ぎても、1人来ない。電話は呼び出し音が鳴るだけで、送ったメッセージにも返事がない。別の社員は病気で休みに入ったまま、戻る日の見通しが立たない。空いた穴をほかの社員で埋めながら、今日も仕事を回す。5人、10人で回している会社なら、業種を問わず、いつ起きてもおかしくない朝です。
口に出すと冷たく聞こえるから、誰にも言っていない本音があるはずです。来ない社員には「辞めるなら、辞めると言ってほしい」。休んでいる社員には「いつまで席を空けて待てばいいのか」。それでも、勝手に辞めたことにして後で揉めないか、病気の人に期限を切るのは酷ではないか。迷っているうちに、何も決まらないまま次の月末が来ます。
このご相談で整理したのは、「どう辞めさせるか」ではありません。「何を確かめ、どの日付で区切るか」です。
ご相談の内容
大阪の会社から、2026年にいただいたご相談です(業種は伏せて掲載します)。入社して半年ほどの社員2名についてでした。
- 1名は、無断欠勤のまま連絡が取れない状態でした。
- もう1名は、病気で長く休んでいました。
同じ「休んでいる社員」でも、1人は本人の考えが分からない欠勤、もう1人は病気による欠勤です。整理の道筋は別になります。
そのままにしていたら、何が起きていたか
まず押さえたいのは、何日休んだら退職になるかは、法律に書いていないということです。決めるのは、その会社の就業規則です。
「無断欠勤が2週間続いたら辞めさせていい」と聞いたことがあるかもしれません。けれど2週間という数字は、労働基準監督署が解雇の予告を省いてよいかを認定するときの基準として示されているものです(※2026年10月時点)。2週間休めば辞めさせてよい、という意味ではありません。
腹立ちまぎれに「もうクビだ」と伝えれば、それは会社からの解雇です。解雇には原則として30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いが要ります(労働基準法20条)。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。後から「解雇は無効だ」と争われる入口を、自分で作ることになります。
しかも、連絡の取れない欠勤の裏に、心身の不調が隠れていることもあります。最高裁は、精神的な不調で欠勤を続けていた社員を、休職などを検討しないまま「無断欠勤」として処分したことを無効と判断しています(平成24年4月27日判決)。
病気で休んでいる社員のほうも、日付を決めずに待てば、会社にも本人にも終わりが見えません。健康保険・厚生年金に入っている社員なら、給料が止まっていても、保険料は会社の分も本人の分もかかり続けます。退職日が決まらなければ、資格喪失の届出(健康保険・厚生年金は5日以内、雇用保険は10日以内)も始められません。
ここで手が止まるのは、社長の判断が遅いからではありません。法律に答えが書かれていない問いだからです。国のひな形(厚生労働省のモデル就業規則)でさえ、無断欠勤は懲戒の側で扱うだけで「◯日で退職」という条文は置いておらず、休職の期間も空欄のままです。辞めさせ方を考えるほど、手は止まります。決めるべきは、確かめる手順と、区切る日付です。
当事務所の対応
2名の事情に合わせて、別々の手順で整理しました。
連絡が取れない方
- 出勤を促し、退職の意思を確かめる通知を、内容証明郵便で送る
- 期限が過ぎてから、自己都合退職として処理する
内容証明は、いつ・どんな文面を・誰から誰あてに送ったかを、日本郵便が証明してくれる郵便です。会社からの通知は、本人に届いた時に効き目が出ます(民法97条)。配達証明を付ければ、本人に届いた日も記録に残ります。電話では残らない「いつ、何を伝え、いつ届いたか」が、書面で残ります。
会社の側から解雇を言い渡す形は取っていません。まず出勤を促し、本人の意思を確かめる。その手順を踏んでから、退職として整理しています。本人の側から見れば、いきなり辞めさせられるのではなく、書面で出勤を求められ、戻るのか辞めるのかを自分で伝える機会と、その期限があるということです。
病気で長く休んでいる方
- 就業規則の休職の条文どおりに、休職の始まりの日付と、満了の日付を決める
- 満了したら自然退職とする流れを整理する
休職は、法律で決まった制度ではありません。いつ休職に入り、何日で満了し、満了したらどうなるかは、就業規則で決めておくものです。国のひな形でも、休職期間が満了しても病気が治らず働くのが難しい場合は「退職」とする形になっています。条文どおりに日付を当てはめれば、「いつまで待つのか」に会社としての答えが出ます。
当事務所は建設業に特化して、現場の労務を毎月扱っていますが、欠勤や休職の区切り方は業種を問わず同じ手順で整理できます。人数の少ない会社ほど、1人の欠員がそのまま翌日の仕事に響きます。だから「様子を見る」で先送りにせず、通知に何を書き、期限を何日にし、休職の始まりと満了を就業規則のどの条文に当てはめるかまで、社長が次の朝に迷わない形に落とします。
気をつけたいポイント
日数は、就業規則に数字で書いておく。 参考までに、当事務所が作る規程では、無断欠勤は欠勤を始めた日の翌日から30暦日(休日を含む)が過ぎたら退職、休職の期間は勤続年数に関係なく180暦日以内(延長あり)としています(※2026年10月時点)。数字で書いてあれば、そのたびに社長が日数を考えずに済みます。
期限は、郵便が戻ってくる日数も見込んで決める。 不在で受け取られない郵便は、1回目の配達日から7日以内に受け取られなければ差出人に戻ります(日本郵便)。期限が短すぎると、本人が通知を目にする前に期限が来てしまいます。
「返事が無い」だけで済ませない。 期限までに返事が無ければ当然に退職になる、という定めは法律にありません。だからこそ、出勤を促して意思を確かめた通知の記録と、就業規則の退職の定めをそろえておくことが、処理の支えになります。連絡が取れなくても、働いた分の最後の給料は払います。対応の順番と規定例は無断欠勤・音信不通の対応と就業規則の定め方にまとめています。
満了の日付だけで、退職を決めきらない。 満了が近づいた時、「元の現場仕事ができない」だけで退職と決めると争いになり得ます。仕事を限定して雇っていない社員が、ほかの仕事ならできると申し出ているなら、会社の中で実際に就かせられる仕事があるかも確かめる。これが最高裁の考え方で(建設会社の現場監督の事件・平成10年4月9日判決)、休職の満了を判断する時も、この考え方で見られることがあります。仕事が原因の病気やケガなら、療養のために休む間とその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法19条)。満了前の確かめ方は休職規程と復職の決め方で整理しています。
この形にすると、社長と社員の毎日がどう変わるか
この会社では、連絡が取れなかった方を自己都合退職として処理し、病気の方は休職の始まりと満了の日付を決め、満了後の流れまで整理しました。同じ形が御社で整うと、毎日はこう変わります。
朝、始業の時刻を過ぎても誰かが来ない。次にそんな日が来ても、やることの順番は決まっています。まず無事かどうかを確かめ、それでも連絡がつかなければ、出勤を促して本人の意思を確かめる通知を、期限をつけて送る。夜、携帯を握ったまま「もう一度電話するべきか」と考え込む時間も、「もうクビだ」と言いかけて飲み込む場面も、もう要りません。
病気で休む社員には、始まりと満了の日付があります。その日までに応援を頼むのか、新しく人を採るのかを、先回りして決められる。穴を埋めてくれている社員にも、この先の段取りを示せる。保険料がいつまで続き、届出をいつ出すのかも、月末に慌てず読めます。
休んでいる社員の側でも、毎日が変わります。通院の帰り道に「戻る場所はあるのか」と考え込まずに済む。満了の日までは籍を残したまま療養できると、分かっているからです。給料が出ない間も、入っている健康保険と厚生年金はそのまま続き、仕事と関係のない病気なら、健康保険の傷病手当金を受けられる場合があります。満了の日を目安に復帰の時期を主治医と相談でき、満了で退職になった場合に傷病手当金を受け続けられるかも、前もって加入先へ確かめておけます。
そして、残っている社員にも、休んでいる本人にも、同じことを言えます。「病気になったら、この日まで席を空けて待つ。連絡がつかない時は、こう確かめてから区切る」。決まりがあるから、誰か1人を特別扱いせず、誰にも後ろめたくない。その一言が言える会社だから、次の採用の面接でも胸を張って説明できます。
御社も同じ状態か、3つで確かめてください
- 今、連絡が取れない社員か、休んだまま戻る日も辞める日も決まっていない社員がいる
- 就業規則を開いても、「無断欠勤が何日続いたらどうなるか」「休職は何日で満了し、満了したらどうなるか」が数字で書かれていない
- その就業規則を、社員がいつでも見られる場所に置いていない(規則どおりに進められるのは、社員が見られる状態にしてあることが前提です)
1つでも当てはまれば、迷っている今のうちに、手順と日付を決めておきましょう。建設業の就業規則作成・改定は顧問契約なら基本料金内、顧問契約なしでの就業規則の作成もスポット(1時間15,000円・15分単位・税別)でお受けしています(※2026年10月時点)。今いる社員の状況と今の就業規則を手元に置いて、Zoom30分の無料相談へどうぞ。御社の場合の手順と日付を、その場で一緒に整理します。確かめる手順と区切る日付さえ決まっていれば、来ない社員のことも、長く休む社員のことも、社長がひとりで抱え込む夜は終わります。
社員の方がこのページを読まれたら、社長に見せていただくのが、決まりを整えるいちばんの近道です。ご相談は会社からお受けしています。
参考(一次情報)
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- モデル就業規則 令和7年12月版(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf
- 内容証明(日本郵便): https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/
- 最高裁判所 平成24年4月27日判決(裁判所): https://www.courts.go.jp/hanrei/82225/detail2/index.html
よくあるご質問
※ 実際にお受けしたご相談をもとに、事業所が特定されないよう内容を一般化して掲載しています。対応の内容は、会社の規模・契約形態・現場の実態によって変わります。
「うちも、これと同じ状態です」
同じご相談でも、会社の規模と現場の回し方で打ち手は変わります。まずは御社の今の形をお聞かせください。図面を見ずに見積もれないのと同じで、そこからでないと正確なことは申し上げられません。
ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
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