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職人が病気・ケガで長く休むとき|中小建設会社の休職規程と復職の決め方

テーマ: 建設業の就業規則作成
30秒で結論

私傷病の休職は法律に期間の定めがなく、会社が就業規則で対象・期間・復職条件を定める制度です。中小建設会社では、勤続年数別の期間、再休職時の通算、給与・保険料、現場作業に応じた復職判断を一緒に整え、期間満了時も就業できる可能性を確認します。傷病手当金の通算1年6か月は会社の休職期間とは別で、業務上の傷病には解雇制限があります(※2026年9月時点)。

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従業員9人の設備会社。月曜の朝、社長が工程表の前で手を止めています。腰を痛めた職人から「しばらく休ませてほしい」と言われて、もう2か月。今週も応援を頼みましたが、来月の現場はまだ人が決まっていません。いつまで待てばいいのか。戻る席は空けておくべきか。社会保険料はどうするのか。就業規則を開いても、休職の定めは見当たりません。

「戻ってきてほしい。でも、いつまでも予定が立たない」。こうした場面に備えるのが休職規程です。この記事では、業務外の病気・ケガによる休職について、期間、お金、復職、期間満了までの決め方を整理します。

休職規程がない中小企業では、いつまで待てばよいのですか?

法律がすべての会社に共通の休職期間を決めているわけではありません。 私傷病(仕事以外の原因による病気・ケガ)の休職は、雇用を続けたまま療養のために仕事を休む制度として、会社が就業規則で設けるものです。厚生労働省のモデル就業規則も、休職の定義・期間の制限・復職について労働基準法に定めがないと説明しています。

規程がなければ、「もう2か月だから退職」と区切る根拠も、「あとどれだけ待つ」と伝える共通の基準も見つかりません。本人は「治るまで待ってもらえる」と受け取り、社長は「今の現場が終わるまでのつもりだった」と考えている。言葉にしていない約束が、両者で食い違います。

ここで「規程がないから解雇できる」と考えるのは危険です。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効になります(労働契約法16条)。休職制度の有無だけで結論は出せません。厚生労働省の解雇の説明でも、この点が示されています。

すでに休んでいる人がいるなら、まず雇用契約書・就業規則・これまで伝えた内容を確認し、診断書と療養の見通しを整理します。新しい規程を作って、その人にさかのぼって期限を当てはめる処理は避け、現在の対応と今後の制度づくりを分けて相談してください。

次に状態を確認する日が決まるだけでも、社長は「今日も連絡が来ない」と携帯を気にし続けず、応援を頼む段取りを進められます。

現場で負ったケガも、同じ休職規程で扱ってよいのですか?

「腰を痛めた」と聞いたときは、いつ、どこで、何をしていたかを確認します。休日の作業で痛めたのか、現場で資材を運んでいて痛めたのかで、考える制度が変わります。

業務上のケガや病気は労災の対象として、私傷病の休職と分けて考えます。 労働基準法19条は、業務上の傷病で療養のため休業する期間と、その後30日間の解雇を原則として禁じる趣旨の規定です(※2026年9月時点)。例外は限定されているため、人手不足や休業の長期化だけで適用できるものとは考えないでください。

業務上の傷病で療養のため休んでいる人を、「うちの休職期限が来た」という理由で解雇や退職扱いにすると、この解雇制限に反するおそれがあります。メンタル不調についても、病名だけで業務外と決めつけず、仕事との関係を確認します。判断に迷う場合は労働基準監督署や社労士へ相談してください。

現場の安全管理そのものは、安全配慮義務と就業規則の関係で整理しています。まず原因を切り分けておけば、会社も本人も、保険の手続きと職場に戻る相談を取り違えずに進められます。

私傷病の休職期間・通算・連絡は、どう決めますか?

来月も応援を頼むのか、新しく採用するのか。社長が判断するには、休職の始まりと終わりが分かる必要があります。欠勤が続いている期間と、規程に基づく休職期間を区別し、いつから数えるかを明記するのが出発点です。

期間に全国共通の正解や、厚労省が示す勤続年数別の相場はありません。モデル就業規則の期間欄も空欄です。自社の人員、代替要員の確保、会社負担が続く費用を見ながら設計します。

勤続年数別に設けるなら、次のように区分と期間を対にします。下表は設計用の空欄例で、法定期間や推奨月数を示すものではありません。

勤続年数の区分案決めておく休職期間
勤続A年未満上限を○か月と定める
勤続A年以上B年未満上限を△か月と定める
勤続B年以上上限を□か月と定める

対象となる従業員の範囲と、勤続年数をいつの時点で判定するかも決めます。「長くいてくれた職人だから今回は延ばそう」と、その都度人によって判断を変えると、次の人への説明が難しくなります。

再休職の扱いも必要です。いったん戻ったものの、同じ病気で再び休むことになったとき、毎回期間を最初から数えるのか、前の休職と合計するのか。「通算」とは、この期間を合計することです。対象にする傷病、復職後どの期間内なら通算するか、原因の確認方法をセットにしてください。

規定例①(休職の開始・期間・通算の条文イメージ) 業務外の傷病により欠勤が○か月を超え、なお療養のため勤務できない従業員は休職とする。休職期間は、休職開始日時点の勤続年数に応じて別表に定め、会社は開始日と満了日を書面で通知する。復職後○か月以内に同一傷病により再び休職する場合は、前後の休職期間を通算する。

空欄・別表・対象者を埋め、自社の実情と他の条項に合わせて調整するための例です。そのまま完成した規程として使うものではありません。

休職中の連絡は「何かあれば連絡して」で終わらせず、次の項目を休職時の案内にまとめます。

  • 連絡窓口となる担当者と、電話・メールなどの方法
  • 次の連絡日と、診断書を更新・提出する時期
  • 療養の見通しが変わった場合の伝え方
  • 本人が連絡しづらい状態になった場合の対応

たとえば診断書の提出に合わせて状態を確認する方法があります。メンタル不調の人に何人もの職長が別々に連絡しないよう、窓口もそろえます。連絡の目的が決まれば、本人は療養に集中しやすくなり、社長も毎回「いつ戻れる」と聞かずに済みます。

休職中の給与・傷病手当金・社会保険料は、どう整理しますか?

給与の締め日になり、事務担当者から「今月、この人の給料と保険料はどうしますか」と聞かれる。ここを先に決めておかないと、休職のたびに給与計算が止まります。

まず会社が支払う給与は、就業規則・賃金規程・雇用契約を確認します。制度を作る際は、休職中を無給にするのか、一部を支給するのか、手当をどう扱うのかを明記します。「休職だから自動的に無給」と処理せず、会社の給与の定めを確認することが先です。

一方、傷病手当金は、加入する健康保険から受ける給付です。協会けんぽでは、業務外の病気・ケガで働けず、連続する3日間を含めて4日以上休み、給与が支払われないなどの要件を満たす場合に対象となります。給与が出ても傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。

支給期間は、支給を開始した日から通算1年6か月です(※2026年9月時点)。この期間は、会社が休職を認める期間とは別です。「給付が続く間は必ず在籍できる」「休職の辞令を出せば必ず給付される」という関係ではありません。申請の条件は加入先の健康保険に確認してください。

社長自身が働けなくなる備えは、社長が現場に出られなくなったときの対策で扱っています。ここでは従業員への案内として、給与の有無と給付の申請を整理しておきましょう。

社会保険料も、給与がゼロなら負担がなくなるとは限りません。健康保険の被保険者資格が続く病気休職では、給与の支給が一時的に止まっても、会社と本人が保険料を負担する取扱いが示されています。休職と被保険者資格について(厚生労働省)

厚生年金保険料も、被保険者の標準報酬月額(保険料計算に使う給与の区分)などを基に会社と本人が負担する仕組みです。厚生年金保険の保険料(日本年金機構)を参照し、休職中の健康保険・厚生年金の具体的な金額や資格の扱いは、年金事務所・加入先の健康保険・顧問社労士に確認してください。

給与から本人負担分を引けない場合に備え、運用としては次を決めます。

  • 本人に伝える金額の内訳と通知日
  • 会社へ振り込んでもらう場合の振込先・期限
  • 支払いが難しい場合の相談先と、立替分の精算方法

会社がいったん立て替えるなら、いつ精算するかを本人と確認し、記録を残します。復職時にまとめて請求する前提で放置しないことです。休職の初めに説明しておけば、本人の生活費の見通しも、会社の毎月の入金確認も立てやすくなります。

「復職可」の診断書があれば、元の現場に戻してよいのですか?

職人が診断書を持ってきて、「先生は働いていいと言っています」と話す。うれしい知らせですが、その日のうちに資材運搬や高所作業を任せる前に、仕事内容との確認が必要です。

厚労省の職場復帰支援の手引きでは、主治医の判断が、その職場で必要な作業能力の回復まで示しているとは限らないと説明しています。まず主治医の診断書を受け取り、本人の意向と、仕事上どのような配慮が必要かを確かめます。職場復帰支援の手引き

建設会社であれば、医師に伝える仕事内容を具体化すると相談しやすくなります。次は確認項目の例です。

担当する仕事確認したいこと
資材運搬・配管作業持つ物の重さや、中腰を続ける作業への配慮
脚立・足場上の作業高所での作業に制限があるか
運転・重機操作安全に担当できるか、避ける作業があるか
早朝集合・複数現場の移動勤務時間や移動について調整が必要か

会社が指定する医師への相談・受診を求める手順を設ける場合も、規程に一行書けばどんな受診も強制できるとは考えないでください。必要性や確認したい作業内容を本人に説明し、同意を得て医学的な意見を確認する運用を検討します。受診の根拠となる規程、費用負担、診断書の提出方法も整えます。主治医と会社側の医師の意見が違う場合は、何の作業を前提にしているかを確認します。

元の現場作業が難しいときは、すぐ退職の話に進まず、実際に任せられる別の仕事も検討します。たとえば材料の発注、施工写真の整理、現場書類の作成などです。これは配置の検討例で、どの会社にも必ず仕事があるという意味ではありません。雇用契約の職務範囲、本人の能力、会社の体制を踏まえて判断します。

厚労省のモデル就業規則にも、原則は元の職務への復帰とし、難しい場合には他の職務に就かせることがある、という設計が示されています。決めた配慮は職長にも必要な範囲で伝え、復職後の確認日を設けましょう。社長が「戻ってきたのだから、もう大丈夫」と一人で背負わず、任せる仕事を具体的に共有できます。

休職期間が満了したら、その日で退職にできますか?

工程表には次の現場が入り、休職の満了日が近づいてきます。ここで初めて「来週で期限です」と伝えると、本人は働けるつもりだったのに、会社だけが退職を予定していた、という食い違いが起こります。

厚労省のモデル就業規則は、業務外の傷病で休職し、期間が満了しても傷病が治らず就業が困難な場合に、満了をもって退職とする例を示しています。期限が来たという日付だけでなく、なお就業が困難かどうかが条件です。

規定例②(復職・期間満了の条文イメージ) 休職の理由がなくなったときは、原則として元の職務に復帰させる。元の職務への復帰が困難又は不適当な場合は、他の職務への配置を検討する。業務外の傷病による休職期間が満了し、医学的な意見及び配置の可能性を確認してもなお就業が困難な場合は、期間満了をもって退職とする。

この例も、復職の申出・診断書提出の手順などと合わせ、自社に応じた調整が必要です。「満了時は自然退職」と書くだけで、個別の退職扱いの有効性が保証されるわけではありません。

満了前には、少なくとも次の確認を行います。

  1. 休職の開始日・通算の有無・満了日が正しく、本人にも伝わっているか
  2. 本人の復職の意向と、現在の診断書・医学的な意見を確認したか
  3. 元の職務や他の配置で、働ける可能性を検討したか
  4. 判断の根拠と本人への説明を記録したか

病気で働けないことと、規律違反に対する懲戒処分は分けて考えます。懲戒規定の記事の処分手順を、そのまま病気休職に当てはめないでください。退職扱いに争いがある場合の交渉や訴訟は、弁護士へ相談する領域です。

満了前から確認を重ねれば、社長も本人も最後の日に結論を突きつけ合わずに済みます。現場の人員計画と、本人の働ける可能性の検討を、同じ予定表で進められます。

休職規程を整えるには、何から始めればよいですか?

まず、今ある就業規則の休職・給与・退職の箇所を開いてください。休職の章がなければ、紙に「休み始める日」「休んでいる間」「戻るとき」「期限が来るとき」と書き、それぞれで誰が何を決めるかを埋めていきます。

期間だけを決めても、給与計算や復職判断の迷いは残ります。現在の職人数、応援を頼める範囲、職人ごとの担当作業、事務担当者が確認できることまで並べると、自社で運用できる規程になります。すでに長く休んでいる人がいる場合は、その人への対応も別途整理しましょう。

中峯社労士事務所では、建設業の就業規則作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。Zoom30分の無料相談で、自社の規則と現場の体制を見ながら、どこから整えるかを一緒に整理できます。

職人から「しばらく休ませてほしい」と言われた日に、社長が確認する書類と次の連絡日が分かる。その状態を、今の会社の人数で回せる形にしておきましょう。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

規程がないことだけで、解雇が認められるわけではありません。解雇の理由や妥当性が問われるため、現在の契約・規則、働けない状態と回復の見込みを確認して判断します。
傷病手当金の支給期間と、会社の休職期間は別です。傷病手当金は支給開始日から通算1年6か月ですが、会社の休職期間は就業規則で定めます(※2026年9月時点)。
賃金の扱いだけでは終わりません。給与が出ない間の社会保険料の本人負担分、傷病手当金の申請、会社への連絡方法、復職の確認手順も整理します。
毎日の連絡を一律に決めるのではなく、本人の状態を踏まえて窓口・方法・頻度を決めます。診断書などの提出に合わせる方法もあり、療養を妨げず必要な連絡が取れる運用を考えます。
再休職時の通算の定めを確認します。制度を作る際は、どの傷病を対象とし、復職後どの期間内の再休職を通算するかを明記し、毎回その場で決めないようにします。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号採用定着士

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用定着士として採用と定着の設計まで踏み込みます。

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