建設業の日雇い・短期の手元さん|雇用保険・社会保険・労働条件の整え方
建設業で日雇いの手元作業員を雇う場合も、労働条件の明示・最低賃金・労災保険の対象です。日雇労働被保険者は、同一事業主の適用事業で前2か月の各月18日以上、または継続31日以上雇用されると原則として一般被保険者等への切替対象になります。健康保険・厚生年金と解雇予告は、日々雇い入れた人を1か月を超えて引き続き使用すると、日雇いを理由とする適用除外がなくなります(※2026年9月時点)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員5人の外壁工事会社。繁忙期の朝、知り合いの紹介で来た手元さんに、社長が「今日はこの材料を運んでもらえる?」と声をかけます。帰りに日当を渡せば、それで終わり。「日雇いやから書類はいらんやろ」とやってきたのに、足場のそばで作業する姿を見て、ふと手が止まります。「この人が現場でケガしたら、どうなるんやろ」。これは、短期の応援を頼む会社で起こり得る場面です。確認したいのは、今日から必要な準備と、来てもらう日が増えたときに変わる手続き。この記事では、その順番で整理します。
日払いの手元さんも、会社の労働者になるのですか?
「正社員ではないし、忙しい日だけ来てもらう」。それでも、会社に雇われ、指示を受けて働き、その対価として賃金を受け取る手元さんは労働者です。日払いは賃金の支払方法であり、労働者ではなくなる仕組みではありません。
日々雇い入れる場合にも、最初の日から次のルールが関わります。
- 労働条件の明示:どこで、何を、何時まで行い、いくら払うのかを伝える。
- 最低賃金:日雇い・アルバイトという呼び名でも、適用される最低賃金を下回らない賃金にする。
- 労災保険:雇用形態を問わず、労働者として対象になる。
「本人もこの日当で納得している」という事情だけで、最低賃金の適用はなくなりません。日当を時間額に直して確かめる方法は、日給の職人は最低賃金を割っていない?をご覧ください。労災についても、「今日だけだから対象外」「知り合いだから本人に任せる」とは扱えません。ケガが起きる前に、現場での報告先と、労災の手続きを確認する相手を決めておきましょう。
また、建設業では、取引の呼び方として「常用で応援を頼む」と言うことがあります。**その「常用」という呼び名だけで、雇用か請負かは決まりません。**日当で精算しているから一人親方、請求書があるから外注、という決め方も避けます。線引きは一人親方と常用従業員が混在する会社の契約実態で詳しく整理しています。
先に雇用としての扱いをそろえれば、社長は現場に送り出す朝に「この人の書類や保険はどうなっていたか」と探し回らずに済みます。
手元のアルバイトを入れる日は、どんな書類が必要ですか?
朝の集合時に「いつもの条件で」と言うだけでは、初めて来た人に伝わりません。まず、条件を伝える書類と、働いた後の記録を用意します。最初に整えたいのは次の3つです。
| 書類・記録 | 現場で分かるようにしておくこと |
|---|---|
| 労働条件通知書 | 契約期間、就業場所、仕事の内容、始業・終業、休憩、賃金、支払方法、退職に関する事項など |
| 賃金台帳 | 賃金を計算した根拠と、実際に支払った額など |
| 出勤・労働時間の記録 | 働いた日、実際の始業・終業、休憩、どの現場で働いたか |
労働条件通知書は、雇うときの約束を本人に明示するものです。厚生労働省には「日雇型」のモデル様式もあります。上の表は準備の入口なので、実際の通知書はモデル様式の項目を確認して作成してください。常用・有期雇用型との選び方や書き方は建設業の労働条件通知書・雇用契約書の書き方で整理しています。
ここで、現場が毎日変わる会社に役立つ扱いがあります。厚生労働省のQ&Aでは、日雇い労働者には、雇入れ日におけるその日の就業場所と業務を明示すればよく、将来の「変更の範囲」の明示は不要としています。変更の範囲とは、契約が続く間に異動し得る場所・仕事の範囲のことです。
ただし、これは日々雇い入れる場合の扱いです。「今月末まで働いてもらい、賃金だけ毎日払う」という短期契約を、一日ごとの契約と同じに扱わないでください。短期契約の通知書では、契約期間に合わせて明示事項を確認します(※2026年9月時点)。
賃金台帳は、労働基準法第108条に基づき、賃金の支払の都度、必要な事項を記入するものです。現金を渡したときの受領メモだけでは、何時間働き、どのように計算したかまでは分かりません。出勤の記録と支払額を結び付けて残します。
実務では、本人ごとのフォルダに「通知書の控え・勤務の記録・賃金台帳」をまとめる方法が取りやすいでしょう。日払いのたびに一から説明せずに済み、後から「約束と違う」と言われても、その日の記録を一緒に確認できます。
日雇いの雇用保険は、日雇手帳と印紙で扱うのですか?
「来週もお願いできる?」が続くうちに、手元さんがほぼ毎日来るようになった。雇用保険は、この変化を見落とさないことが大切です。
雇用保険には、日雇労働被保険者という区分があります。日々雇い入れられる人や、30日以内の期間を定めて雇われる人が対象になり得ますが、それだけで全員が該当するわけではありません。制度上の対象地域である「適用区域」と、本人の居住地・就労場所などの条件も確認します。
対象者には日雇労働被保険者手帳、いわゆる日雇手帳が交付されます。印紙で納付する場合、会社は賃金を払う都度、手帳の該当日欄に雇用保険印紙を貼り、消印します。これは単なる出勤の証明ではなく、保険料を納付する手続きです。印紙の貼付方法は厚生労働省掲載の徴収法施行規則第40条に定められています。
初めて扱う会社は、「手帳を持っているか」を本人に聞くところから始め、該当するか、会社側の準備は何かをハローワークで確認してください。手帳を持っていないという返事だけで、保険なしと決めないことが重要です。
すでに日雇労働被保険者である人を、同一事業主の適用事業で続けて雇うときは、次の基準を確認します。
| 雇用の状況 | 原則となる切替時点 |
|---|---|
| 前2か月の各月に18日以上雇用された | その翌月の初日から一般被保険者等への切替対象 |
| 継続して31日以上雇用された | 雇用が31日以上続くに至った日から切替対象 |
日数は合計だけで見ません。前者は「各月」の条件、後者は「雇用が続いている期間」の条件です。就労しない日があっても雇用関係が続いていれば、後者の期間は途切れません。
切替先の加入条件も確認が必要です。また、ハローワーク所長の認可を受けて日雇労働被保険者の資格を継続する制度や、季節的な雇用に関する別の扱いもあります。「繁忙期だけ」と社内で呼んでいることだけで、これらの例外に該当すると判断しないでください(※2026年9月時点)。
出勤簿に加えて、雇い始めた日と契約の続き方を記録すれば、月末に印紙の処理をするとき、切替が必要かも確認できます。社長の記憶を頼りに日数を数え直す手間が減ります。
日雇いでも、健康保険・厚生年金に加入するのですか?
「もうひと月たつけれど、まだ日雇いのつもりだった」。健康保険・厚生年金でも、呼び名と実態を分けて確認します。
健康保険では、日々雇い入れられる人は一般の被保険者から原則として除外されますが、**同一の事業所で1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合は、その除外から外れます。**厚生年金についても、日本年金機構は、日々雇い入れられる人が1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合、その日から被保険者になると案内しています。
ただし、加入は会社が適用事業所であることなどを前提に、本人の年齢・労働時間等の条件も含めて確認します。「日雇いという理由の適用除外がなくなる」という意味であり、どんな働き方でも期間だけで一律に決められるわけではありません。
また、一般の健康保険の適用から除外される日々雇用の人には、日雇特例被保険者という別の制度があります。「1か月までは健康保険の確認をしなくてよい」という意味ではありません。雇用保険の日雇労働被保険者とは別制度なので、健康保険法第3条に基づく扱いもあわせて確認します。
ここまでの節目を並べると、確認の順番が見えます。
| 制度 | 日々雇用が続いたときの主な確認点 |
|---|---|
| 雇用保険 | 前2か月の各月18日以上、または継続31日以上か |
| 健康保険・厚生年金 | 同一事業所で1か月を超えて引き続き使用しているか |
| 解雇予告 | 日々雇用でも1か月を超えて引き続き使用しているか |
※2026年9月時点。各制度の加入条件・例外は別々に確認します。
「31日以上」と「1か月超」を、すべて同じ日だとまとめないことがポイントです。さらに、日払いの継続雇用や、期間をまとめて定めた短期雇用には、日々雇用とは異なる扱いがあります。「日払いだから最初の1か月は加入不要」とは考えず、契約時点で整理してください。
来月も来てもらう予定が立ったときに勤務の記録を社労士や年金事務所へ示せば、必要な手続きと時期を具体的に確認できます。繁忙期が終わってから、まとめて書類を探す事態を防げます。
日雇いなら「明日から来なくていい」で終わらせられますか?
外壁の工程が予定より早く終わり、翌日の手元が要らなくなった。こんなときも、「日雇いだから一言で終わり」と処理する前に、契約期間と、これまで雇用が続いていたかを確認します。
労働基準法第21条では、日々雇い入れられる人は解雇予告の適用除外とされています。ただし、**1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合には、この除外は使えません。**解雇予告とは、会社が解雇する前に本人へ知らせる手続きのことです。
通常の解雇予告のルールが適用される場合は、原則として30日前の予告、または不足する予告日数分の平均賃金の支払いが必要です(※2026年9月時点)。
ここでの適用除外は、あくまで「解雇予告」の話です。解雇そのものが認められるかとは分けて考えます。契約期間の途中で打ち切るのか、期間が終わるのか、繰り返し更新してきたのかによっても、確認すべきことが変わります。
社長が職長へ伝える前に、通知書と勤務の記録を確認する手順にしておきましょう。終了日と伝え方を先に整理できれば、現場の都合で出た言葉が、そのまま雇用をめぐる争いになることを防ぎやすくなります。すでに紛争になっている場合の交渉・訴訟は、弁護士へ相談してください。
就業規則は、正社員用と日雇い・パート用を分けますか?
手元さんが「休む連絡は社長ですか、職長ですか」と尋ねたのに、会社の就業規則を見ても対象者が分からない。規則がある会社でも、最初に確認したいのはこの部分です。
就業規則を必ず作成・届け出なければならないのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です(※2026年9月時点)。ただし、この人数のルールと、雇う人の労働条件を明示する義務は別です。従業員5人の会社でも、日雇いの条件を曖昧にしてよいわけではありません。
適用範囲の整え方としては、共通の就業規則の中に日雇い・短期雇用者の扱いを書く方法と、別規程を作って本則から参照する方法があります。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、就業規則はすべての労働者について作成する必要があるとしたうえで、パートタイム労働者等を一部または全部の規定から適用除外にする場合は、本体にその旨を明記し、その人たちに適用する規定を設けるか別の就業規則を作るよう示しています。
分ける場合は、「正社員用から除外する」と書くだけで終えず、代わりに何が適用されるかを示します。
規定例(適用範囲の条文イメージ)
日々雇用する従業員及び短期雇用の従業員の就業については、別に定める日雇・短期雇用従業員規程による。同規程に定めのない事項には、本就業規則を適用する。
これは別規程を実際に整備する場合の例です。対象者の定義、共通して適用する条項、賃金や契約終了の扱いは、自社に合わせて調整してください。規程を分けることだけで、法律上の義務や必要な待遇まで外せるわけではありません。
現場では、始業・終業の記録方法、欠勤の連絡先、危険を感じたときの報告先、日当の支払方法からそろえると運用しやすくなります。規則は、本人が確認できる状態にするところまで必要です。手続きは就業規則の周知・意見書・届出で整理しています。
誰にどのルールが適用されるかが決まれば、職長も毎回社長へ聞き直さず、同じ説明で手元さんを迎えられます。
次に手元さんを頼む前に、何から手を付ければいいですか?
次の現場の段取りを組むとき、まず「誰に・いつからいつまで・どんな条件で来てもらうか」を書き出してください。そこから、次の順番で準備できます。
- 契約の形を確認する:日々の雇用か、一定期間の雇用か。請負としている人は、実態との違いを確認する。
- 初日の書類をそろえる:労働条件通知書を作り、本人に明示し、会社の控えを残す。
- 保険と現場の連絡先を確認する:日雇手帳の有無、雇用保険・健康保険等の扱い、ケガが起きたときの報告先を整理する。
- 続けて来てもらうときの確認を予定に入れる:勤務の記録と賃金台帳をそろえ、雇用期間・各月の日数から切替の要否を確認する。
中峯社労士事務所では、建設業の就業規則作成を通じて、日雇い・短期雇用の人にどのルールを適用するかも整理します。就業規則の作成・改定は顧問の基本料金内で行っています。
「手元さんには現金で払っているだけ」という段階でも、現在の呼び方と働き方が分かれば、整理を始められます。Zoom30分の無料相談では、今ある通知書や勤務の記録をもとに、自社の場合に何をそろえるかを一緒に確認できます。次の繁忙期は、書類と連絡先を用意した状態で、朝の段取りに集中できるようにしておきましょう。
最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 労働条件明示等に関するQ&A(日雇いの変更の範囲・日雇型様式/厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156119.pdf
- 雇用保険業務取扱要領・日雇労働被保険者関係(対象・一般被保険者等への切替・資格継続/厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001684308.pdf
- 適用事業所と被保険者(厚生年金の日々雇用・1か月超の扱い/日本年金機構): https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
- 労働基準法(第20・21条、第108条等/厚生労働省法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73022000&dataType=0&pageNo=1
- 最低賃金についてのQ&A(雇用形態を問わない適用/厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei24.html
- モデル就業規則・令和7年12月版(適用範囲・別規程・周知/厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf
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