その監理費、何に使われているか説明できますか|送り出し機関の手数料と失踪リスク
送り出し機関が実習生から100万円規模の手数料や保証金を徴収すると、借金を背負った人が来日し、失踪の動機になります。背景には監理団体が送り出し機関への手数料を値切る構造があります。保証金の徴収や違約金契約は技能実習法・施行規則で認められておらず、受入企業は監理費の内訳、送り出し機関名、本人の支払額を確認すべきです。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます朝6時、寮の鍵が開いたままになっている。布団はきちんとたたまれ、作業着はハンガーに掛かったまま。電話は昨日の夜から通じない。入って半年、現場でいちばん飲み込みが早かった実習生が、いなくなっている——。
この日から社長の仕事は変わります。報告、届出、現場の穴埋め、元請けへの説明。何より重いのは、「なぜ逃げたのか」を自分の言葉で説明できないことです。
結論から言います。失踪の引き金は、その人が来日する前に母国で引かれています。 送り出し機関に払った手数料と保証金です。100万円、200万円を請求するブローカーを最右翼として、多くの送り出し機関が似たことをしています。借金を背負って来た人にとって、毎月の手取りが返済で消える現実は、こちらが思うより早く限界を迎える。そして、その送り出し機関を選んだのは、あなたが監理費を払っている監理団体です。
筆者(当事務所の代表・中峯)は、監理団体を自ら立ち上げて運営し、今も大阪・東京の監理団体や登録支援機関を支援しています。監理費を受け取る側の内側を見てきた立場から、業界の構造をそのまま書きます。
100万円の借金を背負った人が、現場に立っている
来日3か月目の実習生に、同じ国の先輩から連絡が入ります。「あっちの現場は残業が多い。手取りが2万違う」。彼の頭にあるのは、母国の家族が借金の担保に入れた土地です。
法外な手数料や保証金を請求する送り出し機関は、現実に存在します。彼らは違法性を一切認めませんが、弱い立場につけ込んで金を巻き上げる行為であることは明白です。
借金は、来日した瞬間から**「今の会社にとどまらない理由」**として働き続けます。どれだけ丁寧に技術を教えても、返済のスピードには勝てない。送り出し機関の質は他人事ではなく、自社の失踪リスクそのものです。
その監理費、内訳を説明されたことがありますか?
届く請求書には「監理費 一人あたり月額◯◯円」とだけ書かれている。それが何年も続いている——という会社は珍しくありません。
なぜ送り出し機関は取り立てるのか。背景には、業界の内側の構造があります。監理団体が送り出し機関への手数料を値切ったり、キックバックを求めたりする慣行です。日本側に渡すぶんは、どこかで埋め合わせるしかない。その先が、日本で働きたい本人になります。
本来、監理団体は受入れ先の事業者から正当な監理費を受け取り、それを収益源とすべきです。「安い監理費」の裏側は、誰かがどこかで払わされている。だから内訳を確認する実益があります。訪問指導や母国語相談にいくら充てられているのか——この一枚が出てくるかどうかで、相手の姿勢はほぼ分かります(監理団体の役員が見た、建設業の外国人雇用でつまずきやすいポイント)。
保証金は、法律が「取ってはいけない」と決めています
「向こうの国の商習慣ですから」と説明されて、なんとなく納得してしまう。ここが分かれ目です。制度は、金銭で人を縛ることを明確に否定しています。
- 技能実習法第47条第1項:実習実施者や監理団体等は、技能実習生等やその親族等との間で、技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない
- 同第47条第2項:技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、貯蓄金を管理する契約をしてはならない
- 同第48条第1項:技能実習生の旅券・在留カードを保管してはならない
- 技能実習法施行規則第10条第2項第7号:技能実習計画の認定基準として、実習生等やその親族等が**「保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されず」**、かつ違約金を定める契約等をしていないこと
つまり、保証金を取られた状態の人については、そもそも技能実習計画が認定基準を満たしません。認定を受けているのは監理団体ではなく、受入企業自身です。「知らなかった」は、書類の上では通りません。
失踪より怖いのは、失踪をきっかけに開かれる帳簿です
失踪の連絡から数週間後、社長の机に並ぶのは実習生の書類ではありません。過去2年分の賃金台帳と出勤簿です。
失踪が起きれば、必ず「なぜ起きたか」が確認されます。残業代の計算根拠が説明できない、勤怠記録が現場任せで残っていない、控除の中身が本人に伝わっていない——そんな不備が見つかれば、**「会社の責めに帰すべき事由」**と判断され得ます。
特定技能では、雇用契約を結ぶ日の前1年以内などに、受入企業の責めに帰すべき事由による行方不明者を出していないことが受入れの基準として省令に定められ、1人でも該当すれば適合しません。技能実習でも、会社側の法令違反が失踪の原因と判断されれば、計画の認定取消しの対象になり得ます。
次の人を入れられない。 5〜10人規模の建設会社にとって、これは現場がひとつ止まるのと同じです(特定技能外国人が定着しない理由と失踪を防ぐ労務管理)。
受入企業が今日確認できる、4つのこと
次の面談で、この4つを机の上に出してください。専門知識は要りません。
- 監理費の内訳——月額いくらが何に使われているか、項目と金額で示してもらう
- 送り出し機関の名前と国——外国人技能実習機構が公表する外国政府認定送出機関の一覧に載っているか照合する
- 本人が母国でいくら払って来たか——手数料、渡航費、研修費、そして「預けたお金」。本人に直接聞く
- 保証金・違約金契約の有無——母国で署名した書類に、途中で帰国したら払う、という条項がないか
これで受入れの費用構造が一枚の絵になります(総額は特定技能「建設」の受け入れ費用は総額いくら?JAC・CCUS込みの内訳)。
確かめられると、会社はこう変わります。 借金を背負っていない人が来る。失踪の動機がひとつ消える。3年かけて仕込んだ職人が、3年後も現場にいる。社長が夜、来月の人繰りで眠れなくなる回数が減ります。
2027年4月、育成就労で「選ばれない会社」から人が抜ける
2027年4月1日、技能実習制度に代わって育成就労制度が施行されます。施行期日は政令で定められ、すでに確定しています。
外国人労働者の権利保護を強化した制度ですが、そこでも働く側の立場が弱いことに変わりはありません。ただし、大きく変わる点があります。一定の条件のもとで、本人の意向による転籍が認められることです。
借金と「移れない仕組み」で人を縛る構造は、通用しなくなります。逃げるしかなかった人が、合法的に移れる。残ってもらえる会社かどうかが、そのまま数字に出るということです(育成就労制度とは?2027年4月施行までに建設業がやるべき準備)。
これまでの監理団体の慣行に、疑問を感じたことはありませんか。過去の慣行にとらわれず、正しいと考える取引のあり方を追求する。それが、人を集められる会社と集められない会社を分けます。
まず、どこから手をつければいいですか?
監理費の内訳を1枚出してもらうところからです。そのうえで、自社の賃金台帳と勤怠記録が今すぐ説明できる状態かを点検する。この2つで、自社の現在地がはっきりします。
当事務所は、監理団体でも送り出し機関でもありません。供給側の内情を知る立場にいながら、受け入れる会社の側に立って、社長が自分の言葉で話すための材料を整理する——それが役割です。聞くべき点はどこか、返ってきた答えが妥当かどうか、判断の物差しを一緒に持ちます。
建設業の外国人雇用サポートでは、賃金・労働時間・就業規則という「雇った後」の土台づくりを扱っています。入口で払っている費用が妥当か気になった時点で、一度整理してみてください。Zoom30分の無料相談で、今の状態を言葉にするところから始められます。
参考(一次情報)
- e-Gov法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0000000089
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」 https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf
- 出入国在留管理庁「二国間取決め・認定送出機関」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/titp/nyuukokukanri07_00139.html
- 外国人技能実習機構「外国政府認定送出機関一覧(技能実習)」 https://www.otit.go.jp/system/sender/list_sender/
- 外国人技能実習機構「外国政府認定送出機関一覧(育成就労制度)」 https://www.otit.go.jp/employment_for_skill_development/05/
- 出入国在留管理庁「育成就労制度」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
よくあるご質問
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