建設業で社員1人を雇う費用は給料以外にいくら?月給25万〜35万円の会社負担早見表
月給30万円の社員を1人雇うと、給料のほかに社会保険料と雇用保険料の会社負担が月47,220円(39歳まで)〜49,650円(40〜64歳)、年間およそ57万〜60万円かかります(大阪府・2026年度の料率で給料の約16%)。建設業ではさらに道具・車両・講習と育成期間の費用が乗り、車を1台つける試算では年間の実コストが給料の約1.6倍です(※2026年9月時点)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます「月30万出せば来てくれるやろか」。従業員6人の外構工事会社の社長は、事務所のホワイトボードに求人票の下書きを書きながら、頭の中で電卓を叩いていました。月30万なら年間360万。今期の利益からすれば、なんとかいける——。3か月後、実際に1人採ったあとの通帳を見て、社長は首をひねります。想像していた減り方ではありませんでした。
計算が間違っていたわけではありません。足していた項目が足りなかっただけです。給料のほかに、社会保険料の会社負担が毎月5万円近く。道具と作業服、講習、車、そして一人前になるまでの時間。この記事では、社員を1人雇ったときに会社から出ていくお金を、月給25万・30万・35万円の早見表から順に全部並べます。そのうえで、「この人がいくら稼げば会社に残るのか」を逆算する手順まで進みます。

社員1人を雇うと、給料以外に会社は毎月いくら払いますか?
月給30万円の社員なら、社会保険料と雇用保険料の会社負担だけで月47,220円(39歳まで)〜49,650円(40〜64歳)、年間でおよそ57万〜60万円です(大阪府・協会けんぽ・2026年度の料率)。給料のおよそ16%にあたり、40〜64歳の人は介護保険料の分だけ高くなります。
| 月給(毎月の総支給) | 会社負担・月(39歳まで) | 会社負担・月(40〜64歳) | 会社負担・年間(12か月) |
|---|---|---|---|
| 25万円 | 40,819円 | 42,925円 | 約49万〜52万円 |
| 30万円 | 47,220円 | 49,650円 | 約57万〜60万円 |
| 35万円 | 56,559円 | 59,475円 | 約68万〜71万円 |
大阪府の協会けんぽの令和8年度の保険料額表と、令和8年度の雇用保険料率(建設の事業)で計算した、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金保険・子ども・子育て拠出金・雇用保険の会社負担の合計です(※2026年9月時点)。表を使うときは、次の4点を押さえておいてください。
- 月給は総支給で見る:社会保険料は、残業代や通勤手当も含めた支給額を等級表に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて決まります。等級は入社時の見込み額で決め、その後は毎年4〜6月の平均などで決め直します。月給25万円は26万円、35万円は36万円の等級に入るため、給料ちょうどに料率を掛けた額より少し高くなります。雇用保険料だけは等級を使わず、実際の支給額に率を掛けます。
- 都道府県で変わる:健康保険料率は都道府県ごとに違い、令和8年度は最も低い新潟県の9.21%から、最も高い佐賀県の10.55%まで開きがあります。月給30万円なら、会社負担の差は月2,010円です。東京都(9.85%)は大阪府より月420円少なく、北海道(10.28%)は月225円多くなります。
- 賞与にもかかる:賞与や寸志にも、毎月の給料と同じ率で保険料がかかります。健康保険・厚生年金などは1,000円未満を切り捨てた額に、雇用保険は実際の支給額に率を掛けます。賞与30万円なら、会社負担は39歳までの人で47,220円です。届出の手順は冬のボーナス・寸志の社会保険料にまとめました。
- 労災保険は入っていない:建設現場の労災保険は元請がまとめて加入する仕組みのため、表には入れていません(次の見出しで説明します)。
法人の会社は、社長1人だけでも健康保険・厚生年金の適用事業所です。正社員として雇う人は、1人目から加入の対象になります。個人事業の場合は、従業員が常時5人以上いると加入が義務になります。雇用保険は法人・個人や会社の規模を問わず、週20時間以上働き、31日以上続けて雇う見込みの人なら1人目から入ります。
すでに建設国保の組合員である職人を雇い、雇ってから14日以内に申請して健康保険の適用除外の承認を受け、建設国保に残る場合は、協会けんぽの健康保険(介護保険・子ども・子育て支援金を含む)の会社負担はかかりません。それでも厚生年金・子ども・子育て拠出金・雇用保険の会社負担は表のとおりかかり、月給30万円なら月31,680円です。建設国保に残れる条件は「社会保険に入りたくない」と言われたらで整理しています。
会社負担の社会保険料は、なぜ給料の約16%になるのですか?
会社が負担する保険料が6つあり、大阪府・協会けんぽの2026年度の料率では、その合計が給料の約15.7%(39歳まで)〜16.6%(40〜64歳)になるからです。月給30万円の内訳は次のとおりです(※2026年9月時点)。
| 保険 | 料率(全体) | 会社負担の率 | 月給30万円の会社負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(大阪府) | 10.13% | 5.065% | 15,195円 |
| 介護保険(40〜64歳の人だけ) | 1.62% | 0.81% | 2,430円 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分から) | 0.23% | 0.115% | 345円 |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 9.15% | 27,450円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 0.36%(全額が会社) | 1,080円 |
| 雇用保険(建設の事業) | 16.5/1,000 | 10.5/1,000 | 3,150円 |
| 合計(39歳まで) | 15.74% | 47,220円 | |
| 合計(40〜64歳) | 16.55% | 49,650円 |
健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金保険は、会社と本人が半分ずつ負担します。子ども・子育て拠出金は全額が会社負担で、本人の負担はありません。雇用保険は、建設の事業に一般の事業(会社負担1,000分の8.5)より高い率が定められています。健康保険と雇用保険の料率は年度ごとに見直され、建設の事業の雇用保険の会社負担は、2025年度の1,000分の11から2026年度は1,000分の10.5に下がりました。
見積書に載せる法定福利費は、社員一人ひとりの年齢までは追えないため、介護保険の対象者を仮に5割と置いて16.145%で計算します(法定福利費の内訳明示見積書の作り方と同じ率)。月給30万円に掛けると48,435円で、上の2つの合計のちょうど中間です。見積に載せていない法定福利費は、そのまま自社の利益から出ていきます。
労災保険料は、全額が会社負担です。ただし建設業では、現場の労災保険は原則として元請がその工事全体でまとめて加入し、下請の職人の分も含めて保険料を払う仕組みになっています(請負事業の一括・労働保険徴収法8条)。自社が元請として受けた工事で賃金総額を正確に出すのが難しいときは、税抜の請負金額に労務費率を掛けた額を賃金総額として保険料を計算します。たとえば建築事業(既設建築物設備工事業を除く)は労務費率23%・労災保険率1,000分の9.5なので、税抜の請負金額1,000万円の工事なら、労災保険料は21,850円です(令和8年度の率は令和7年度と同じ。※2026年9月時点)。
社員1人にかかる費用は、道具や車まで入れると年間いくらですか?
月給30万円・賞与1か月分で、車を1人1台つける職人なら、年間の実コストは約577万円、給料の約1.6倍です。以下は考え方を示すための仮の試算で、実際の金額は賞与の有無・車両の持たせ方・地域・事業の種類で大きく変わります。
| 項目 | 年間(例) | 内容 |
|---|---|---|
| 給与 | 360万円 | 月30万円 × 12か月 |
| 賞与 | 30万円 | 年1か月分を出す場合 |
| 法定福利費 | 約63万円 | 給与+賞与の16.145%(39歳までの人なら約61万円、40〜64歳なら約65万円) |
| 通勤・現場移動 | 約12万円 | 通勤手当・高速代・駐車場代など |
| 道具・作業服・保護具 | 約20万円 | 初年度は一式そろえる分が乗る |
| 資格取得・講習 | 約10万円 | 玉掛け・車両系・職長教育など |
| 車両 | 約80万円 | 1人1台の場合。リース・保険・燃料・整備 |
| 健康診断・その他 | 約2万円 | 雇い入れ時と年1回の定期健康診断ほか |
| 合計 | 約577万円 | 月あたり約48万円 |
月30万円のつもりが、実際には月48万円規模。車両をつけない会社でも約497万円で、給料の1.4倍近くになります。「なんとかいけると思ったのに、思ったより減る」の正体はここにあります。内訳を分けると、給料・賞与・法定福利費を合わせた社員1人あたりの人件費が約453万円、残りの約124万円が車・道具・講習などの費用です。
表の下のほうの費用にも、法律で会社がやると決まっているものが混ざっています。
- 健康診断:雇い入れ時の健康診断と、1年以内ごとに1回の定期健康診断は会社の義務です(労働安全衛生法66条、労働安全衛生規則43条・44条)。
- 安全衛生の教育:雇い入れたときの安全衛生教育、危険・有害な業務に就かせる前の特別教育、新しく職長になる人への職長教育も会社の義務です(同法59条・60条。職長教育は建設業が対象)。国の通達では、これらの教育は所定労働時間内に行うのが原則で、かかった時間は労働時間とされ、社外の講習で特別教育や職長教育を受けさせるときの講習会費や旅費も会社が負担すべきものとされています。
- 資格の講習:玉掛けや車両系建設機械の技能講習のように、会社が受けるよう命じた講習の時間も労働時間にあたります(厚生労働省のガイドライン)。受講料のほかに、その時間の賃金もかかると見込んでおきます。
- 通勤手当:通勤手当も社会保険の「報酬」に入ります。手当を厚くして標準報酬月額の等級が上がれば、保険料も一緒に増えます。
いちばん大きい「見えないコスト」は何ですか?
いちばん効くのは、一人前になるまでの育成期間の立て替えです。たとえば月48万円かかる職人の粗利が、最初の半年は月24万円(実コストの半分)にとどまるとすると、足りない分は月24万円×6か月で約144万円。これを会社が先に立て替えることになります。
入社したその日から一人前の粗利を生む職人は、まずいません。段取りを覚え、自社のやり方に慣れ、任せられる工程が増えるまでに、経験者でも数か月、未経験者なら1年単位でかかります。その間も給与と法定福利費は満額出ていきます。つまり会社は、将来の戦力に対して先にお金を出しているわけです。
ここが読めていないと、こうなります。採用した月から現金の出は増えるのに、粗利が増えるのは半年後。その半年のあいだに、材料の支払いと納税が重なる——採用直後に資金繰りが苦しくなる会社の多くは、この時間差にやられています。
そして最悪なのが、その職人が1年以内に辞めた場合です。求人費も、道具も、講習費も、教育に使った先輩の時間も、すべて回収前に消えます。定着は情の話ではなく、投資回収の話です。
その社員は、年間いくら粗利を稼げば会社に残りますか?
上の月給30万円の例なら、年間およそ750万円、1日あたり約3万1,000円の粗利が目安です。出し方は2段階です。
- 最低ライン=実コストそのもの:年約577万円。これを下回ると、採用する前より会社の利益が減ります。年間240日稼働なら、1日あたり約2万4,000円です。
- 目安=人件費を自社の労働分配率で割り戻す:給与・賞与・法定福利費を合わせた人件費は約453万円です。自社の労働分配率(人件費÷粗利)を仮に60%とすると、453万円÷60%=約755万円、年間240日稼働なら1日あたり約3万1,000円。この粗利から人件費を引いた残り(約302万円)で、車や道具などの約124万円をまかない、なお会社の固定費と利益に回す分が残ります。労働分配率を75%のように高く置くと、割り戻した粗利が小さく出て、利益の残らない目安になりやすい点に注意してください。
ここまで落とすと、社長の感覚と数字がつながります。「この単価の現場に、1日この人数で入って、間に合うのか」——判断がその場でできるようになります。自社の労働分配率の出し方は建設業の人件費率・労働分配率の目安で解説しています。
給料以外のコストは、どうすれば回収できますか?
削るより先に、見積で取り返す・辞めさせない・助成金を取り逃さない・賃金の配分を決める、の4つで回収を早めます。
- 法定福利費を見積に載せる:社会保険料の会社負担は、見積書に法定福利費として別枠で書いておけば、値引きのたびに削られる対象から外せます。書き方は、上で紹介した見積書の記事にまとめています。
- 定着させる:辞められると全部やり直しです。日当だけでなく、休みの取り方・評価の伝え方・キャリアの見せ方が効きます。
- 助成金を先に組み込む:有期で雇った人を正社員にするキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、正社員にする日の前日までに「キャリアアップ計画」を労働局へ出しておくことが条件です。職人に技能向上の講習(技能実習)を受けさせ、その間の賃金を払ったときに使える人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースも、講習の種類によっては始める1週間前までに計画届が要ります。採用してから調べても間に合わないものがあるため、採用の前に年間の予定へ入れておきます(助成金の年間活用計画)。
- 賃金の配分を設計する:同じ年収でも、基本給・手当・賞与のどこに乗せるかで残業代の単価が変わります。賞与や、距離や実費に応じて払う通勤手当は残業代を計算する基礎に入らない一方で、社会保険料はかかります(距離にかかわらず一律に払う交通費は基礎から外せません)。求人票に出す前に決めて、就業規則の賃金規程に書いておく話です。当事務所では、就業規則・賃金規程の作成と改定を顧問の基本料金内で行っています(建設業の就業規則作成)。
採用の前に、何から手を付ければいいですか?
求人を出す前に、「年間の実コスト」「必要な粗利」「回収が始まる時期」の3つを1枚に書き出すところからです。
月給と年齢から会社負担の社会保険料を出し、車・道具・講習と育成期間の立て替えを足して、必要な粗利と回収の時期を試算します。この試算があれば、採用を「払えるかどうか」ではなく「いつ回収できるか」で決められます。育成期間の立て替え分を先に見込んでおけば、採用直後の資金繰りが崩れません。
求人票の月給欄で手が止まることもなくなります。「うちは月30万まで」ではなく、「この単価の仕事が取れているうちに、この時期に1人」と、時期まで込みで言えるようになります。
人件費という箱の中身は、社会保険料・残業代・日当の設計・助成金——そのまま労務の実務です。当事務所は建設業に特化し、代表が日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ®として、採用の前にこの試算を社長と一緒に置いています(キャッシュフローコンサルティング。キャッシュフローコンサルは50,000円/月〜(税別・2026年7月時点)で、ほかの料金も料金ページに公開しています)。税務申告そのものは税理士の業務のため、当事務所では行いません。
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参考(一次情報)
- 都道府県毎の保険料率 令和8年度(全国健康保険協会): https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r08
- 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(大阪支部)(全国健康保険協会): https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8_27osaka.pdf
- 令和8年度 雇用保険料率のご案内(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/001692566.pdf
- 令和8年度の労災保険率等について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/roumuhiritu_r05.pdf
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000084
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
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