建設業で社会保険が未加入だとどうなる?許可・元請への影響と経審の改正点
建設業では2020年10月から、会社として社会保険の届出(適用事業所の届出)をしていることが許可の要件で、届出をしていなければ許可を更新できません。職人一人ひとりの加入は、元請の確認で効きます。加入を確認できない作業員は、原則として現場に入れない取扱いです。経審のW点の社会保険項目(未加入で各40点の減点)は2026年7月1日以降の申請から削除されましたが、是正の必要は変わりません。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員8人の土工会社。夜、事務所で見積もりを打っていると、元請から「社会保険の加入状況を一覧で出してください」とメールが届く——ここで手が止まる社長は、少なくありません。実際、この場面でいただくご相談はほとんど同じ言葉です。「今の状態で調査が入ったら、人件費や法定福利費が膨らみすぎて会社が持たない」。
未加入を放置しているのは、いい加減だからではありません。全員をいっぺんに加入させたら資金が回らないと、社長自身がいちばん分かっているからです。ただ、是正の道筋は一つではありません。すでに雇っている職人の加入は後回しにできませんが、外注として扱っている一人親方を従業員に切り替える時期や、賃金の組み立て直しは、現場の予定から逆算して順番をつけられます。

社会保険が未加入だと、何が困るのですか?
困るのは許可と元請対応(現場入場)の2つで、どちらも保険の話である前に受注の話です。会社として社会保険の届出をしていなければ許可を更新できず、職人一人ひとりが未加入なら元請の確認で現場に入れません。経審(経営事項審査。公共工事の入札に参加するために受ける会社の点数審査)については2026年7月に扱いが変わったので、あとで整理します。
未加入のままで、建設業許可は更新できますか?
会社として社会保険の届出(適用事業所の届出)をしていなければ、更新できません。2020年10月から、健康保険・厚生年金保険の適用事業所、雇用保険の適用事業に当たる全ての営業所について、その旨を届け出ていることが許可の要件になりました。一方で国土交通省は、許可の要件として「労働者ごとの加入までは要件としない」としています。職人一人ひとりの加入が効いてくるのは、次の元請の確認と現場入場の場面です。
元請はなぜ加入状況を確かめるのですか?
国のガイドラインが、加入を確認できない作業員を原則として現場に入れないよう、元請に求めているからです。下請の未加入は、元請の現場管理責任に関わります。この「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」は、元請に対し、未加入の建設企業を下請に選ばないこと、適切な社会保険への加入を確認できない作業員を特段の理由がない限り現場に入れないことを求めています(2025年12月10日改訂版・※2026年9月時点)。
経審の点数は、社会保険でもう上がらないのですか?
上がりません。もともと加点の項目ではなく、2026年7月1日以降の申請からは審査項目そのものがなくなりました。国土交通省の改正で、経審のW点(社会性等)から、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況(改正前のW1-1〜W1-3。未加入なら各40点の減点)が削除されています。理由は、2020年10月から社会保険の加入が許可の要件になり、許可の更新期間が5年なので、2025年10月以降に許可を持っている会社は加入を満たしているはずだからです。W点に残るのは、建退共(建設業退職金共済。現場で働いた日数に応じて退職金を積み立てる制度)、退職一時金制度・企業年金制度(会社独自の退職金・年金の仕組み)、法定外労災(国の労災保険に上乗せする会社独自の補償)などです。
| W点の項目 | 2026年6月30日までの申請 | 2026年7月1日以降の申請 |
|---|---|---|
| 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入 | 未加入なら各40点の減点 | 審査項目から削除 |
| 建退共の加入 | 最大15点 | 最大15点(残る) |
| 退職一時金制度・企業年金制度の導入 | 最大15点 | 最大15点(残る) |
| 法定外労災制度の加入 | 最大15点 | 最大15点(残る) |
| 建設技能者を大切にする企業の自主宣言 | なし | 5点(新設) |
(※2026年9月時点。国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」より)
では、社会保険はもう経審と関係ないのかというと、話が「許可」の側に移っただけです。会社として社会保険の届出をしていなければ許可の更新ができず、許可の維持が危うくなれば、経審や入札の前の段階でつまずきます。W点を上げたいなら、目を向けるのは社会保険ではなく、建退共・退職金制度・法定外労災・自主宣言の整備です。項目ごとの考え方は経審のW点と社会保険にまとめています。経審の申請そのものは行政書士の領域です。必要な場合は建設業に詳しい行政書士をご紹介します。
是正は何から手を付ければいいですか?
最初に確かめるのは、会社として社会保険の届出が済んでいるかどうかです。ここは許可の要件なので、後回しにできません。そのうえで、すでに雇っている職人の加入漏れを先に片付け、外注として扱っている一人親方の切り替えを、現場の予定に合わせて順番に整えます。
- 会社としての届出の有無を確認(許可の要件)
- 全従業員・一人親方の加入状況を棚卸し
- 元請への提出期限・大きな現場の入場の時期から逆算して、一人親方の切り替えに優先順位づけ
- 賃金設計・助成金も含めた無理のない移行
雇っている職人の加入が遅れていた分は、さかのぼって(最大2年分)保険料を納めることになる場合があるので、ここは先に片付けます。そのうえでこの順番を踏むと、「全部でいくら増えるのか分からない」という不安が、「今いる従業員の分が月いくら、一人親方をこの現場が終わる頃に何人、次の大きな現場に入る前までに何人切り替える」という予定表に変わります。金額の総額は最終的に同じでも、いつ・いくら出ていくかが読めれば、資金繰りは組み立てられます。一人親方から従業員への移行対応は、当事務所が毎月のように扱っている実務です。使える助成金がないかも専門の対応部署で並行して確認するため、加入と資金の手当てを同時に進められます。
社会保険の整備は、許可の更新や元請への対応と一体で考えると最短で進みます。詳しくは建設業の社会保険をご覧ください。外注として扱っている一人親方がいる会社は、一人親方の社会保険はどうなる?もあわせてご確認ください。Zoom30分の無料相談で、自社の届出・加入状況と、次の現場入場や許可更新の時期を並べて、是正の順番を一緒に整理できます。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001982604.pdf
- 建設業における社会保険加入対策について(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000080.html
- 建設業法施行規則等の一部を改正する省令について(許可基準の見直し・適正な社会保険への加入を許可要件とする)(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/common/001365752.pdf
よくあるご質問
「今の状態で調査が入ったら、うちは持つのか?」
未加入・一部加入のまま人を増やしてきた会社ほど、指摘されてからでは負担が一度に来ます。保険料と人件費の見通しを立てて、無理のない順番で整えます。Zoom30分・無料です。
ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。
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