建設業専門の社会保険労務士|松原市・堺市・東大阪ほか南大阪 平日 10:00〜17:00/TEL 072-334-4102

2026年10月カスハラ対策義務化|建設業のハラスメント規程の作り方

テーマ: 建設業の就業規則作成
30秒で結論

カスハラ防止措置は2026年10月1日から、規模を問わず事業主の義務になります。建設業でも、方針と対処内容の周知、相談体制、事実確認と被害者への配慮、再発防止、悪質な言動への対応、プライバシー保護等が必要です。就業規則への記載に加え、職人が一人で苦情を抱えない引継ぎ手順まで整えます(※2026年9月時点)。

→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます

従業員8人のリフォーム会社。夜、若い職人の携帯がまた鳴ります。施主から「やり直せ」「値引きしろ」と怒鳴られ、電話を切っても翌晩また同じ話。朝の積み込みで、その職人が社長に「もう、あの現場へ行きたくないです」と言いました。一方、現場では職長の怒鳴り声が日常になっている。外からも中からも責められる職人に、社長は何をしてあげればよいのか——小さな建設会社を想定した場面です。

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止の措置義務は、2026年10月1日から始まります。 従業員8人の会社も対象です(※2026年9月時点)。施行前に整えるのは、会社の方針、相談先、現場から会社へ引き継ぐ手順、悪質な言動への対処です。この記事では、苦情との境界から、現場のパワハラも含めた規定例まで、自社で動かせる形に落とし込みます。

カスハラ対策はいつから義務になり、小さな建設会社は何をすればよいですか?

「うちは人事部なんてない」。社長自身が現場に出る会社でも、今回の義務は関係します。業種や規模を問わず、労働者を雇う事業主が対象です。厚生労働省の法改正の案内で、2026年10月1日の施行が案内されています(※2026年9月時点)。

「措置義務」とは、被害を本人の我慢に任せず、会社が予防・相談・発生後の対応を整える義務です。厚労省の詳細版リーフレットの項目に沿うと、準備すべきことは次のように整理できます。右欄は小規模会社での実装例です。

求められる措置自社で決めることの例
方針と対処内容を明らかにし、従業員へ伝える職人を守る方針と、施主対応を社長へ交代する場面を朝礼で説明する
相談体制を整える相談担当者と連絡方法を決め、担当者にも聞き取り方を教える
事実確認、被害者への配慮、再発防止を行う通話等の経緯を確認し、担当変更や連絡方法の見直しを行う
特に悪質なカスハラを抑止する体制を整える脅しや暴力などの場合に、誰が警察・弁護士へつなぐか決める
プライバシーを守り、相談等を理由に不利益に扱わない情報を見る人を絞り、相談した職人を責めないことを伝える

担当者の名前だけを掲示しても、その人が現場に出ていて連絡がつかなければ相談は止まります。不在時の引継ぎまで決めておくと、社長が帰社して初めて深刻な話を知る状態を減らせます。

施主・近隣住民・元請からの苦情は、どこからカスハラになりますか?

施主が「仕上がりが図面と違う」と指摘する。近隣の方が「ほこりが洗濯物についた」と説明を求める。こうした申入れを、面倒だからとカスハラ扱いすることはできません。

カスハラは、職場での顧客等の言動について、業務の性質などの事情に照らして社会的に許される範囲を超え、働く環境に看過できない支障を生じさせるものです。相手が顧客等であること、言動がその範囲を超えること、就業環境が害されることの3要素を合わせて判断します。電話やSNSでの言動も対象です。

建設業では、次のように「求めている内容」と「求め方」を分けると整理しやすくなります。以下は判断を考えるための例で、個別の行為を一律に認定するものではありません。

相手まず確認すべき申入れ会社が介入すべき言動の例
施主契約・図面と違う施工の補修を求める職人個人に毎晩電話し、人格を否定しながら際限なく責める
近隣住民騒音・粉じん・車両の出入りについて改善を求める工事と無関係な金銭を要求し、職人を脅す
元請や取引先の担当者工程の遅れや施工不良について説明を求める土下座を迫る、工具を投げつける、執拗に侮辱する

自社に施工上の不備があっても、暴言まで受け続けてよいことにはなりません。逆に、強い口調だったというだけで工事の確認を打ち切るのも早計です。経緯、内容、頻度、長さ、職人への影響を見ます。障害を理由とする差別をやめてほしいという申入れや、必要な配慮を求める意思表示自体も、カスハラには当たりません。判断の基本は厚労省のカスハラ防止指針に示されています。

社長が「施工の確認はこちらで進める。電話対応も会社で引き取る」と分けて動けば、職人に修繕の判断と苦情対応の両方を背負わせずに済みます。

職人を一人で対応させないために、どんな手順と記録を用意すればよいですか?

翌晩も同じ施主から電話が来たとき、職人が使える言葉を先に用意します。たとえば「ご指摘は会社に引き継ぎます。工事の確認と今後のご連絡は担当者からお伝えします」。その後、本当に会社が引き取るところまでが手順です。

小さな会社なら、まず次の流れを1枚にまとめてみてください。これは現場で使うための運用例です。

  1. 安全を確保する。 暴力や脅しがある場面で、職人に説明を続けさせない。危険が迫る場合は退避し、警察への通報を優先する。
  2. 社長または代わりの担当者へ報告する。 「カスハラと断定できないと報告できない」という入口にしない。
  3. 会社へ対応を引き継ぐ。 訪問は可能な限り複数人にし、説明する人と記録する人を分ける。職人個人の携帯へ連絡が集中しているなら、会社の窓口へ変更を案内する。
  4. 工事と要求の内容を確認する。 見積書、契約内容、施工写真、これまでの回答をそろえ、できる対応とできない対応を整理する。
  5. その後の対応と職人への配慮を決める。 担当変更などを本人と話し合い、相談を理由に不利益に扱わない。後日、同じことが続いていないか確認する。

記録のひな形には「日時・場所/相手/実際に言われた言葉/要求内容/同席者/会社の回答/職人への影響/次の対応」を並べます。「ひどい客だった」という感想だけでは、次の担当者が状況をつかめません。録音等を使う場合も、保管先と閲覧できる人を決め、個人情報を適切に扱います。

十分に説明しても執拗な要求が続く場合の通話終了や、悪質な場合の専門家への相談も、事前に判断役を決めます。ただし、電話を切ることと工事契約を解除することは別です。契約解除や相手との紛争交渉が必要なら弁護士へ相談します。

これなら、翌朝の社長は職人から同じ話を最初から聞き直さず、記録を見て「今日は誰が、何を答えるか」を決められます。

現場の厳しい指導は、どこまでならパワハラになりませんか?

足場の危険な場所へ入ろうとした若手に、職長が「止まれ!」と声を張る。危険が去った後も、皆の前で「お前は使えない」と責め続ける。この二つを同じ「厳しい指導」で片づけないことが大切です。

パワハラ防止措置は、中小企業でも2022年4月1日から義務になっています(※2026年9月時点)。判断は、①相手が抵抗しにくい関係を背景に、②業務上必要で相当な範囲を超える言動があり、③就業環境が害される、という3要素で行います。適正な業務指示や指導はパワハラに該当しません(厚労省のパワハラ防止指針)。

「声を大きくしたら全部だめ」「安全のためと言えば何でもよい」という線引きではありません。次のように、行動を直す伝え方へそろえます。

現場の場面指導の組み立て方の例避けるべき言動の例
危険な作業を止めるまず停止させ、安全な場所で危険箇所と正しい手順を説明する危険が去っても怒鳴り続け、人格を否定する
同じ施工ミスが続く間違った箇所を一緒に確認し、次の作業で確認する点を決める皆の前で長く侮辱し、本人を笑いものにする
見習いに作業を任せる経験に合う作業から始め、確認役をつける教えていない作業を無理に任せ、失敗すると罵倒する

この表も一律の適法・違法判定ではありません。社長は「何を直す必要があったか」「どんな言葉を、どのくらい続けたか」「次にできる手順を伝えたか」を本人と職長の双方から確認します。怒鳴り声だけでなく、仲間外しや仕事を与えない扱いにも目を向けてください。

安全な作業手順と就業規則をそろえる考え方は、安全配慮義務と就業規則で詳しく扱っています。指導の形が決まれば、職長も叱り方に迷いにくくなり、社長は毎回の仲裁に追われる状態を減らせます。

セクハラも含め、就業規則のハラスメント規程にはどう書けばよいですか?

古い就業規則を開いたら、「職場の秩序を乱してはならない」としか書いていない。その場合は、禁止行為、相談後の対応、懲戒事由(処分の対象となる行為)のつながりを確認します。

次は**規定例(条文イメージ)**です。法令の引用や完成版ではありません。実際にはハラスメントの定義・具体例を定め、既存の懲戒規定、担当者、社内の手続きに合わせて調整してください。

規定例1:禁止行為と懲戒事由 従業員は、職場において、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントを行ってはならない。また、取引先の労働者に対するカスタマーハラスメント、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない。これらに違反した場合は、事実確認の上、行為の内容・程度等に応じ、就業規則の懲戒規定に基づき対処する。

セクハラは、現場の性的な冗談や望まない身体への接触なども点検対象です。休憩中だから、悪気がないからという理由で放置せず、社長と職長にも禁止行為を共有します。求職者等へのセクハラ防止措置も2026年10月1日から義務になるため、採用面接や見学を受け付ける会社は、採用担当者への周知と応募者が使える相談先も準備します(※2026年9月時点)。

取引先の労働者へのカスハラ禁止方針は、厚労省のリーフレットで望ましい取組として示されています。自社が元請側に立つ現場でも、協力会社の職人を同じ姿勢で扱うための規定です。

規定例2:相談と被害への対応 会社は、顧客等からのカスタマーハラスメントに対し、従業員を保護する方針のもとで対応する。ハラスメントの相談先と連絡方法は別途周知し、該当性が明らかでない段階も相談を受ける。会社は関係者のプライバシーに配慮して事実を確認し、必要な保護措置と再発防止措置を講じる。相談や事実確認への協力を理由に不利益な取扱いをしない。

施主や元請担当者を、自社の就業規則で懲戒処分することはできません。社内の禁止・処分の規定と、社外の相手から職人を守る対応手順を両方用意します。懲戒の種類や重さ、進め方の一般論は、建設業の懲戒規定の整え方をご覧ください。

規定と相談先をセットで渡すことで、社長が不在の日も「これは会社に話してよい」と職人が判断できるようになります。

社内に相談窓口を置けない会社は、どうすればよいですか?

相談担当が社長だけなのに、相談したい相手も社長。あるいは担当の事務員が職長の家族で、話がすぐ現場へ伝わりそう。この状態では、「何でも言って」と声をかけるだけでは相談しにくいままです。

カスハラの相談対応は、外部機関への委託も指針に示されています。社内に適任者がいなければ、ハラスメント相談に対応する外部窓口へ委託する方法があります。ほかのハラスメントも受けられるか、会社の調査・対応へどう引き継ぐかまで、契約前に確かめます。

小規模会社で用意したいのは、次の区別です。

  • 現場で今すぐ助けが必要な連絡先:社長と、不在時に動ける代わりの担当者。
  • 社長や職長に直接言いにくい相談先:本人が直接連絡できる外部窓口など。
  • 解決に向けて判断する人:相談対象者だけに判断を任せず、関係のない担当者や専門家の関与を決めておく。

外部へ委託しても、職人の配置や相手への回答を会社が決める役割は残ります。受付時間、緊急時の連絡、誰にどこまで情報が伝わるかを説明し、「誰にも伝わらない」と安易に約束しないことも大切です。

顧問社労士がいる会社も、従業員からの直接相談の受付まで契約に含むか確認してください。社長も「自分が全部聞く」負担を分けながら、必要な対応を止めずに進められます。

10月1日までに、何から点検すればよいですか?

朝礼で「今日から苦情は会社へ引き継いでいい」と伝えるなら、その場で職人が連絡先を確認できる状態まで用意します。施行前の点検には、次のチェックリストを使ってください。

  • 方針、カスハラの具体例、現場での対処を全員へ説明した
  • 相談先と不在時の連絡先が決まり、担当者も対応方法を理解している
  • 一人で対応を続けさせず、会社へ引き継ぐ手順がある
  • 記録の様式、保管先、閲覧できる人を決めた
  • 悪質な言動への対処と、警察・弁護士へつなぐ判断役を決めた
  • 相談後の保護、プライバシー、不利益取扱いの禁止を周知した
  • 社内の指導、セクハラ等の禁止、懲戒規定も確認した

作ったら、「社長が別の現場にいるとき、施主から職人へ怒鳴る電話が来た」という想定で、連絡がつながるか試してみます。紙の上では埋まっていても、代わりの担当者が知らなければ、そこで止まるからです。

職人が安心して相談できる土台と、休日や手当が分かる仕組みを一緒に整えたい場合は、職人の定着につながる就業規則も参考になります。

中峯社労士事務所では、建設業の就業規則作成・改定を顧問の基本料金内で行っています。Zoom30分の無料相談で、今ある規則と自社の現場を照らし合わせ、どこから整えるかを一緒に整理できます。若い職人が「行きたくない」と言ってから慌てる前に、会社が引き取る仕事を決めておきましょう。最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。

参考(一次情報)

よくあるご質問

はい。カスハラ防止措置義務は企業規模を問わず、2026年10月1日から適用されます。人数が少なくても、相談を受けて会社として対応できる体制を整える必要があります(※2026年9月時点)。
やり直しの要求だけでは決まりません。契約や施工状況を確認し、要求の妥当性と、暴言や執拗な電話など伝え方の問題を分けて判断します。
できます。カスハラの相手には取引先の担当者も含まれます。職人が取引への影響を心配して抱え込まないよう、自社の相談先へ報告できる手順を決めておきます。
証明できるまで待つ必要はありません。該当するか判断が難しい段階でも相談を受け、会社が状況を確認する仕組みにします。
一文だけで完了とはいえません。相談担当者、現場での引継ぎ、記録方法、悪質な言動への対処などを決め、実際に使えるよう従業員へ伝える必要があります。
社会保険労務士 中峯崇文

この記事の執筆・監修:中峯 崇文(社会保険労務士)

中峯社労士事務所 代表|社会保険労務士 登録番号 第27110112号採用定着士

建設業に特化した社会保険労務士として、残業対応や一人親方の移行など、現場の労務を毎月扱っています。外国人雇用では自ら監理団体を立ち上げて運営し、採用定着士として採用と定着の設計まで踏み込みます。

「うちの就業規則は、今のままで大丈夫?」

作成・改定は顧問の基本料金内(他社相場:作成単体で20〜30万円)。Zoom30分・無料で、御社の現状から「直すべき順番」を整理します。

ご相談で最も多いのは、社長が現場に出ている従業員5〜10人の建設会社さまです。

▼ まずは現状をお聞かせください(相談は無料です)

\ 予約ツールの入力は不要。「まず話だけ」「5分だけ電話」でOKです /

📞 電話で相談 無料相談する

建設業の就業規則・外国人雇用の労務、Zoom30分・無料でご相談ください。