標準労務費とは?見積書の労務費の出し方と、2026年の労務単価(全職種平均25,834円)が日給ではない理由
標準労務費(中央建設業審議会の「労務費に関する基準」)では、見積書の労務費を「施工場所の都道府県の公共工事設計労務単価×適正な歩掛×数量」で出すのが基本です。2026年3月からの労務単価は全国全職種の加重平均で1日8時間25,834円ですが、賞与や手当を含み、残業の割増と会社負担の法定福利費を含まないため、職人の日給とそのまま比べる数字ではありません(※2026年9月時点)。
→ 自社の場合はどうなる? Zoom30分・無料相談で個別に整理できます従業員7人の内装会社。夜9時の事務所で、社長が元請から届いた見積書の新しい様式を開いています。材料費・労務費・法定福利費の欄が分かれ、労務費の行には「数量・歩掛・単価」を書き込む欄がある。参考にと調べた国の公共工事設計労務単価は、全国平均で14年連続の引き上げ。大阪府の内装工は1日32,600円とある。一方、うちの職人の日給はここ数年18,000円のまま——「この差は、いったい何なのか」。2025年12月に全面施行された改正建設業法で、見積書に書く事項が明記され、労務費などを通常必要と認められる額より著しく低く見積もることも、そこまで下げるよう求めることも禁じられました。その「通常必要な労務費」の物差しとして国が示したのが「労務費に関する基準」、いわゆる標準労務費です。ただし、労務単価はそのまま日給と比べられる数字ではありません。この記事では、見積書の労務費の出し方と記載例、2026年の労務単価と大阪府の職種別の値、日給との読み替え方、「書かないと違反か」「著しく低いとどうなるか」、そして確保した労務費を職人の賃金に届けるための賃金規程の整え方までをまとめます。

標準労務費とは何ですか?いつから、どんな取引に関係しますか?
標準労務費とは、2025年12月2日に中央建設業審議会が作成し、実施を勧告した「労務費に関する基準」の通称で、見積書の労務費を「公共工事設計労務単価×適正な歩掛×数量」で出すことを基本にした物差しです。国の正式な名前は「労務費に関する基準」で、この記事では広く使われている「標準労務費」と同じ意味で扱います。
中央建設業審議会(中建審)は、建設業法にもとづいて国土交通省に置かれている審議会です。この基準は建設業法第34条にもとづくもので、次の2つの役目があります。
- 建設業法第20条がいう「通常必要と認められる労務費」がどのくらいかを判断する物差し(それを著しく下回る額で見積もることも、そこまで下げるよう見積りの変更を求めることも禁止されています)
- 国や都道府県が建設業者を指導・監督するときの参考指標
対象は公共工事だけではありません。基準は、公共工事・民間工事を問わず、施主(発注者)から職人を雇う建設業者までの全ての取引段階で、適正な労務費(賃金の原資)を確保することを目指しています。元請から一次、一次から二次へと流れる下請の見積りも対象です。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2024年6月14日 | 改正建設業法(令和6年法律第49号)が公布 |
| 2025年12月2日 | 中建審が「労務費に関する基準」を作成し、実施を勧告 |
| 2025年12月12日 | 改正建設業法が全面施行(受注者が不当に低い請負代金・著しく短い工期で契約することの禁止、見積書に書く事項の明記、発注者への勧告・公表の新設など) |
| 2026年2月17日 | 国土交通省が、2026年3月から適用する公共工事設計労務単価を発表(全国全職種の加重平均25,834円) |
| 2026年3月31日 | 職種ごとの「労務費の基準値」に11職種分野34工種を追加し、全ての基準値を2026年3月の労務単価に合わせて更新 |
| 2027年2〜3月(見込み) | 次の労務単価の発表と適用(例年2月に発表、3月から適用) |
(※2026年9月時点)
見積書の労務費は、どう計算して書けばいいですか?
労務費は「職種ごとの労務単価(1人1日8時間あたりの円)×歩掛(1㎡や1tあたり何人日かかるか)×数量」で出し、工種ごとに行を分けて書くのが基本です。
労務費 = 労務単価(円/人日) × 歩掛(人日/㎡など) × 数量(㎡など)
- 労務単価:施工場所の都道府県の、その職種の公共工事設計労務単価を下回らない額にします。基準は「公共工事設計労務単価を下回る水準を設定しないこと」としています。高い技能を持つ職人が必要な工事や、夜間工事などで人の確保にお金がかかる場合は、受注者が労務単価を割り増して見積もり、双方で誠実に交渉することが求められています。
- 歩掛(ぶがかり):その作業を1単位(1㎡・1tなど)こなすのに何人日かかるかという数字です。国土交通省の書き方ガイドは、基準を参考に、作業内容・現場条件を踏まえ、自社の施工能力を勘案した歩掛を書くとしています。
- 数量:施工する量(㎡・t・mなど)です。歩掛×数量が、現場でいう人工(にんく:延べ何人日か)になります。
大阪府の内装工事で書くと、次のようになります。歩掛は説明のための架空の数字で、国の基準値や特定の会社の数字ではありません。
| 工種 | 数量 | 歩掛(架空) | 人工 | 労務単価(大阪府・内装工) | 労務費 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石こうボード張り | 400㎡ | 0.04人日/㎡ | 16人日 | 32,600円 | 521,600円 |
| 壁紙(クロス)張り | 400㎡ | 0.02人日/㎡ | 8人日 | 32,600円 | 260,800円 |
| ビニル床シート張り | 150㎡ | 0.02人日/㎡ | 3人日 | 32,600円 | 97,800円 |
| 合計 | 27人日 | 880,200円 |
書くときの要点は3つです。
- 「一式」にせず、数量・歩掛・単価を並べる。どの数字から労務費が出たのかを、元請が追えるようにします。
- 会社負担の社会保険料は労務費に入れない。法定福利費(事業主負担分)は別の行に書きます。上の例なら、大阪府・協会けんぽの料率で、法定福利費の記事と同じく介護保険の対象者を5割とした場合は880,200円×16.145%=約14万2千円です。国交省の書き方ガイドは、見積りの段階では40〜64歳の人の割合を工事ごとにつかむのは難しいとして、全員が介護保険に加入している前提で計上するよう求めています。その前提なら料率は16.55%で、880,200円×16.55%=約14万6千円です(※2026年9月時点)。料率の内訳と見積書全体の記載例は法定福利費の内訳明示見積書の作り方にまとめています。この記事は「労務費の行」、そちらは「法定福利費の行」の話です。
- 標準と違う歩掛を使うなら、理由を書く。現場の状況が特殊で、標準的な条件の歩掛が使えない場合は、その理由や根拠を書く「労務費に関する備考欄」が国の様式例にあります。
安全衛生経費と建退共(建設業退職金共済)の掛金も、法定福利費と同じく、労務費とは別の行で示すものとされています。
国は職種分野ごとに、㎡やtあたりの「労務費の基準値」も公表しています。2026年3月31日には、とび・土工、塗装、内装、防水、板金・屋根ふき、解体など11職種分野34工種が加わり、全ての基準値が2026年3月の労務単価に合わせて更新されました(※2026年9月時点)。自社の工種があれば、自社の単位あたりの労務費を見比べる物差しになります。基準値の無い職種でも、適正な労務費を確保する必要は変わりません。
見積書がこの形になっていると、元請との交渉の中身が変わります。「総額をあと何万円下げられるか」ではなく、「この歩掛は現場の条件に合っているか」という話になり、下げられる所と下げられない所を行ごとに示せます。夜の事務所で根拠を探して電卓をたたき直す時間が減り、交渉の席では数字を指さして話せるようになります。
2026年の公共工事設計労務単価はいくらですか?大阪府の職種別の値は?
2026年3月から適用の公共工事設計労務単価は、全国全職種の加重平均で1日(8時間)25,834円です(※2026年9月時点)。2013年度の改定から14年連続の引き上げで、初めて25,000円を超えました。主要12職種の平均は24,095円です。前年度からの伸び率は+4.5%ですが、これは全国全職種の単純平均で出した数字で、金額のほうは加重平均で出しています。物差しが違うため、金額の伸びと伸び率はそのまま結びつけずに読みます。
労務単価は本来、国や自治体が公共工事の予定価格を積算するための単価です。ただ国交省は、労務単価の資料の中で、労務費に関する基準によって労務単価が「適正な労務費」の計算の基礎にも位置づけられ、公共工事・民間工事を問わず、下請取引を含めてこの適正な労務費が確保されるべきだと説明しています。単価は47都道府県・51職種ごとに決まっていて、大阪府の主な職種は次のとおりです。
| 職種 | 全国平均 | 大阪府 | 大阪府・雇用に必要な経費込みの参考値 |
|---|---|---|---|
| 普通作業員 | 23,605円 | 23,800円 | 35,200円 |
| 軽作業員 | 18,605円 | 16,500円 | 24,400円 |
| とび工 | 30,780円 | 29,600円 | 43,700円 |
| 鉄筋工 | 31,267円 | 29,000円 | 42,800円 |
| 型わく工 | 31,671円 | 33,400円 | 49,300円 |
| 大工 | 30,331円 | 29,300円 | 43,300円 |
| 左官 | 30,508円 | 30,100円 | 44,500円 |
| 電工 | — | 28,100円 | 41,500円 |
| 配管工 | — | 28,200円 | 41,700円 |
| 塗装工 | — | 32,300円 | 47,700円 |
| 防水工 | — | 28,900円 | 42,700円 |
| 内装工 | — | 32,600円 | 48,200円 |
- 全国平均は、国交省の発表資料に載っている職種だけを書いています(「—」は発表資料に全国平均の記載が無い職種)。
- 参考値は、会社負担の法定福利費、労務管理費、安全管理費、宿舎費などを労務単価に足した国の試算です。工種や工事の規模で変わり、遠方から職人を呼ぶ場合は想定していません。
- 大阪府の表では、石工・ブロック工・板金工・タイル工・屋根ふき工・建具工は空欄で、値が載っていません。
自社の数字は、国交省が発表する「公共工事設計労務単価」の資料にある都道府県別・職種別の表で、施工場所の都道府県の行と自社の職種の列が交わる所を見ます。会社の所在地ではなく、現場がある都道府県の値を使うのが基準の考え方です。PDFの文字をコピーすると、空欄の所で数字が隣の列にずれることがあるので、列の見出しと縦にそろえて読んでください。
労務単価は例年2月に発表され、3月から適用されます。次は2027年2〜3月の見込みで、その時点でこの表の数字も入れ替わります。
自社の県・職種の数字を1つ手元に置いておくと、元請から「その単価は高い」と言われたとき、国の数字を根拠に話を始められます。
労務単価と職人の日給は、なぜそのまま比べられないのですか?
労務単価は、賞与や手当、給与から天引きする本人負担の社会保険料まで含めて「8時間あたり」に直した金額で、残業などの割増賃金や会社負担の法定福利費は含まないため、職人が受け取る日給とは物差しが違います。国交省自身も、労務単価は「日給制の労働者が受け取る日当よりも広い概念」だと説明しています。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 含まれるもの | 基本給相当額 |
| 含まれるもの | その職種の通常の作業に対する手当(国の書き方ガイドの例:家族手当、通勤手当、住宅手当、現場手当、技能手当、精勤手当など) |
| 含まれるもの | 臨時の給与(賞与など) |
| 含まれるもの | 実物給与(食事の支給など) |
| 含まれるもの | 本人負担の社会保険料(額面の賃金の一部として) |
| 含まれないもの | 時間外・休日・深夜の割増賃金 |
| 含まれないもの | 通常を超える作業条件・作業内容に対する手当 |
| 含まれないもの | 会社負担の法定福利費や研修訓練の費用などの現場管理費と、一般管理費などの諸経費 |
自社の日給を同じ物差しに並べるには、次の順で読み替えます。
- 8時間あたりに直す:所定労働時間が8時間でなければ、日給×8÷所定時間にします(例:日給18,000円・所定7.5時間なら19,200円)。
- 賞与を日割りで足す:年間の賞与・寸志を、年間の所定労働日数(年間カレンダーで決めた働く日の数)で割って足します。実際の出勤日数で割ると、休みの多い職人ほど1日あたりが大きく出てしまいます。
- 毎月決まって払う手当を日割りで足す:資格手当・現場手当など、通常の作業に対して払っている手当を、同じく年間の所定労働日数で割って足します。
- 残業代・休日出勤・深夜の割増は足さない:労務単価に入っていないからです。
- 会社負担の社会保険料も足さない:労務単価の外側に、労務費のおよそ16%が別に乗ります。
たとえば大阪府の内装工で、「日給18,000円(所定8時間)、資格手当が月1万円、賞与が年30万円、年間の所定労働日が240日」という会社(架空)なら、18,000円+賞与1,250円(30万円÷240日)+資格手当500円(1万円×12か月÷240日)=19,750円です。国の32,600円とはまだ12,850円の開きがありますが、日給の18,000円だけで比べたときより、差の中身がはっきりします。
ここで2つの読み違いに気をつけます。
- 「労務単価と同じ額を日給で払えば正しい」わけではありません。労務単価は賞与や手当込みの数字なので、日給だけで合わせる必要はありません。逆に、日給だけを見ても職人に届いているかは分かりません。
- 「労務単価より低い日給は違法」でもありません。労務単価は、見積りや契約で確保する労務費の物差しです。会社が払う賃金の下限を法律で決めているのは最低賃金です。ただし国は、まず公共・民間の工事全体で、労務単価並みの労務費・賃金の支払いを確保することを目指すとしています。
また、会社が職人1人を雇うのにかかる費用は、労務単価よりずっと大きくなります。国交省は、労務単価が25,834円の場合、会社負担の法定福利費や労務管理費、安全管理費・宿舎費・送迎費などを加えると、1人の雇用に必要な経費は38,234円(およそ1.48倍)になると示しています。見積りで労務費を削られると、それに料率を掛けて出す法定福利費も一緒に細ります。
日給の下限は、最低賃金で決まります
日給の下限は労務単価ではなく最低賃金で決まります。令和8年度の最低賃金の改定で、大阪府は10月1日から時給1,231円(所定8時間の日給なら9,848円)になりました(9月30日までは1,177円・8時間で9,416円。改定の日付は都道府県ごとに違います)。
| 地域 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日から | 所定8時間の日給に直すと(10月から) |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 1,177円 | 1,231円 | 9,848円 |
| 北海道 | 1,075円 | 1,131円 | 9,048円 |
(※2026年9月時点。大阪府は大阪労働局、北海道は北海道労働局の公表による)
最低賃金と比べるときは、労務単価の読み替えとは逆に、賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、残業代などを除いた日給を、1日の所定労働時間で割ります。足すものと除くものが正反対なので、同じ表の中で混ぜないようにします。所定7.5時間・9時間の早見表や都道府県ごとの発効日は、日給の職人の最低賃金チェックにまとめています。
なお、会社によっては日給そのものを「現場日当」と呼ぶことがあり、出張の日当や遠方手当と言葉が混ざりがちです。呼び分け方は建設業の出張手当・日当の決め方をご覧ください。
日給・賞与・手当を1日あたりに並べ直すと、「国の数字と比べて、うちはどこが薄いのか」が見えてきます。職人に賃上げの話をするときも、元請に単価の話をするときも、同じ1枚の表で説明できるようになります。
見積書に労務費を書かないと、建設業法違反になりますか?
建設業法の見積書としては、書かないだけで直ちに違反になるわけではありません。労務費などの内訳を書いた見積書(材料費等記載見積書)を作ることは、建設業法第20条第1項の努力義務です。ただし、注文者から求められたら契約が成立するまでに交付しなければならず、書いた労務費が通常必要と認められる額を著しく下回ることは禁止されています。なお公共工事の入札では別の決まりがあり、入札の段階で出す入札金額内訳書に労務費などの内訳を書くことが、入契適正化法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)第12条で義務になっています。市町村の小さな工事でも、入札に参加するなら内訳は省けません。
| 条文 | 誰の決まりか | 中身 |
|---|---|---|
| 第20条第1項 | 見積りを出す建設業者 | 工事の種別ごとの材料費・労務費・法定福利費などの内訳と、工程ごとの作業・準備に要る日数を書いた見積書を作るよう努める |
| 第20条第2項 | 見積りを出す建設業者 | 見積書の労務費などを、通常必要と認められる額より著しく低く書いてはならない |
| 第20条第4項 | 注文者・建設業者 | 注文者は見積書の内容を考慮するよう努める。建設業者は、注文者から求められたら契約成立までに見積書を交付する |
| 第20条第6項 | 注文者(元請・施主など) | 受け取った見積書の労務費などが、通常必要と認められる額を著しく下回ることになるような変更を求めてはならない |
第1項の「法定福利費など」は、建設業法施行規則で、法定福利費(会社負担の健康保険料など)、安全衛生経費、建退共の掛金の3つと定められています。
見落としやすいのは第6項です。変更を求めてはならない相手は、内訳を書いた見積書を交付した建設業者と定められています。つまり、内訳を書いた見積書を出しておくことが、この歯止めを働かせる前提になります。「努力義務だから書かなくてもいい」ではなく、書いておくほど自社を守れる仕組みです。
国交省は、専門工事業者向けの見積書の様式例(簡易版・詳細版)と書き方ガイドを、労務費に関する基準のポータルサイトで公開しています。見積書は各社が自社の責任で作る書類です。社労士が関わるのは、その労務費の根拠になる賃金の決め方(賃金規程)と、法定福利費のもとになる社会保険の側です。
労務費が「著しく低い」見積り・契約は、どうなりますか?
労務費を著しく低く見積もった建設業者や、著しく下回る変更を求めた元請などの建設業者は指導・監督(建設業法第28条)の対象になります。施主(発注者)がそうした変更を求めて契約した場合は、その工事に通常必要な費用が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)なら勧告を受けることがあり、従わなければ公表されることがあります。
| 誰が | 何をしたら | どうなるか |
|---|---|---|
| 見積りを出す建設業者 | 労務費などを通常必要と認められる額より著しく低く書いた(第20条第2項) | 指導・監督(第28条) |
| 注文する建設業者(元請・上位の下請) | 著しく下回る額への見積りの変更を求めた(第20条第6項) | 指導・監督(第28条) |
| 施主(発注者) | 著しく下回る額への変更を求め、変更後の見積りで契約した(第20条第6項・第7項) | 受注した建設業者の許可をした国土交通大臣か都道府県知事が、特に必要と認めるときに勧告。従わなければ公表(第20条第8項)。工事に通常必要な費用が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の契約が対象 |
| 注文者 | 取引上の地位を不当に利用して、通常必要な原価に満たない額で契約した(第19条の3第1項) | 禁止 |
| 受注する建設業者 | 正当な理由なく、通常必要な原価に満たない額で契約した(第19条の3第2項) | 禁止 |
「著しく低い」かどうかの目安になるのが、ここまで見てきた労務費に関する基準です。基準は、建設Gメン(国土交通省で建設工事の取引を調べる担当)が見積書の当初版と最終版の差額などを比べ、その原因を確かめたうえで違法の疑いを確認するという調べ方を示しています。そのうえで、ダンピング(不当な安値)による値下げか、生産性の向上による値下げかを見分けて指導・監督するとしています。施行後しばらくは、内訳を書いた見積書を広めることに重点を置くとされています(※2026年9月時点)。
締結した契約が著しく低い労務費だと考えられる場合は、発注者・受注者・元請・下請の立場を問わず、国交省の「駆け込みホットライン」に相談できます。元請との間で争いになり、交渉や訴訟が必要になった場合は弁護士の領域です。
社長の側でできる備えは、最初に出した見積書と、交渉後の最終版の両方を保存しておくことです。値引きの話になったとき、「どの行の、どの数字を下げたのか」を後から示せます。内訳のある見積書は、「ここから下は下げられない」と言うための根拠になります。
確保した労務費を、職人の賃金に届けるには何から手を付ければいいですか?
最初の一歩は、職人1人ずつの日給・賞与・手当を「8時間あたり」に並べ直し、自社の県・職種の労務単価と見比べる表を1枚作ることです。見積書で労務費を確保できても、それが自動的に職人の給料に反映されるわけではありません。一次・二次と重層的に工事が流れる建設業では、上流で確保された労務費が途中で薄まらずに、実際に働く職人まで届くかどうかが問われます。
建設業法第25条の27第2項は、建設業者に、技能などの公正な評価にもとづく適正な賃金の支払いに努めるよう求めています。国交省は、労務単価が賃金として払われた場合に考えられる年収を「CCUSレベル別年収」として職種ごとに示し、基準はこれを技能者に払うことを目指すべき賃金と位置づけています(CCUS=建設キャリアアップシステム。技能者の資格や現場での就業履歴を登録し、技能を段階的に評価する国の仕組み)。「目標値」以上の支払いを勧め、「標準値」を下回る支払いの場合は、請負契約で労務費のダンピングが起きていないかを重点的に確かめるとしています(※2026年9月時点・2026年4月改定版)。
手を付ける順番は次のとおりです。
- 並べ直す:職人ごとの日給・賞与・手当を8時間あたりに直し、県・職種の労務単価と見比べます(前の章の手順)。
- 賃金の決め方を書く:日給の段階(技能・資格・経験)、手当の名前と支給条件、賞与の考え方を賃金規程に書きます。日給から時間単価への換算や、欠勤控除と割増賃金の計算基礎のそろえ方は日給月給の賃金規定が参考になります。
- 昇給の時期と基準を決める:労務単価は例年3月に改定されます。見積りで確保できる労務費の変化を、いつ・どう賃金に反映するかを決めておきます。
- 原資を確かめる:日給を上げると、会社負担の社会保険料も一緒に増えます。利益を残しながら上げる考え方は建設業の賃上げ原資の作り方にまとめています。
| 賃金規程で決めること | 決めていないと起きること |
|---|---|
| 日給の段階(技能・資格・経験) | 職人ごとの差や、上げる理由を説明できない |
| 手当の名前と支給条件 | 労務費のどこに当たるのか、割増賃金の計算に入るのかがあいまいになる |
| 賞与の有無と考え方 | 労務単価と比べるときに、賞与の分が抜け落ちる |
| 昇給の時期と基準 | 単価が上がっても、賃金へ反映する段取りが無い |
日給を上げたときは、社会保険の月額変更届が要るかどうかも確かめます(日給を上げたら社会保険の届出は要る?)。
こうした賃金規程を含む就業規則の作成・改定は、建設業の就業規則作成として、当事務所では顧問の基本料金内で行っています。賃上げの原資づくりは、代表が日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ®としてキャッシュフローコンサルティングで扱っています(料金は料金ページに公開しています)。自社の県・職種の数字でどこから手を付けるかは、Zoom30分の無料相談で一緒に整理できます。整えた後は、元請に見積書の労務費を説明するときも、職人に給料の話をするときも、同じ表と規程を見せて話せるようになります。
最新の制度や金額は、必ず公式サイトでご確認ください。
参考(一次情報)
- 令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001981942.pdf
- 労務費に関する基準(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk1_000001_00044.html
- 労務費に関する基準 本文(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001971712.pdf
- 労務費に関する基準ポータルサイト(労務費の基準値・見積書の様式例・CCUSレベル別年収)(国土交通省): https://roumuhi.mlit.go.jp/
- 専門工事業者向け 建設工事の見積書様式例 書き方ガイド(国土交通省): https://roumuhi.mlit.go.jp/mlit-files/20260316_06.pdf
- 建設業法・第19条の3、第19条の6、第20条、第25条の27、第34条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- 令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001745621.pdf
よくあるご質問
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